ISO9001 概要 | 品質マネジメントシステム

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 ISO9000シリーズ認証取得と問題点 |  徹底した文書化の弊害

1.lS09000シリーズ認証取得によるメリット 現代は,大競争(メガ・コンペテイション)時代といわれます。この大競争時代を生き抜くためにも,品質による優位性は重要になってきます。このため企業は,信頼できかつ進歩した品質マネジメント,品質保証,品質管理システムが必要となります。そのようなシステム構築に,IS09000シリーズは有効であるといえます。

IS09000シリーズ認証取得は,世界的な認知度においても有効に働きます。EU市場統合が現実のものとなった現在で は,更に有効です。それは,今まで説明してきたように,IS09000シリーズの主導権は常に欧州が握ってきました。そ の関係もあって欧州各国は,lS09000シリーズ導入が進んでいます。そんな欧州各国が市場統合を目指し,1つの大きな マーケットが出現しようとしています。そこでは,IS09000シリーズの認証取得していない企業の参入が難しくなるので はないかといわれており,これらのことも各国の企業のIS09000シリーズ導入に拍車をかけている一因といえます。

IS09000シリーズ認証取得による宣伝効果も見逃せません。 最近は,企業自ら宣伝し差別化するため,商業誌や専門誌はもちろん,新聞,さらにはテレビコマーシャルにまで認証取 得の広告を大々的に行っています。このことは,IS09000シリーズが企業の品質レベルの高さを示す一種のステイタス ということがいえるのではないでしょうか。また,IS09000シリーズが一般ユーザーレベルまで、認識されてきたことの裏付けともいえます。

製造業を中心に,多くの企業では,納入業者から部品や原材料の提供を受けています。これらの関連業者がlS09000 シリーズの認証取得を行うことで,納人品の品質が保証されます。これにより,最終完成品の高い品質が保証されること になります。

IS09000シリーズは,今まで説明してきたように徹底した文書化が特徴の一つといえます。このことは,企業に対して要求事項の観点から顧客にとって何が重要であるかの認識と,その要求事項を満足させるための手順の構築,更に顧客 満足に直接影響を与える品質システムを管理,改善するための内部品質管理システムの構築が強制されているのです。 たとえば,IS09000シリーズを導入していれば,企業内の従業員全員が入れ替わったとしても,構築された品質システム のおかげで,製品とサービスが特定の要求事項を満たしていることを証明してくれます。

 ISO9000シリーズ認証取得によるデメリット  | ぺ一パー ワークの増大

lS09000シリーズの特徴の1つに,徹底した文書化があります。このことは,ぺ一パー ワークの増大を意味します。また,その文書化の管理も多くのコストと労力がかかります。

最も要求事項が多いIS09001では6ヵ月から9ヵ月かかるといわれ,IS09002でも4ヵ月から6ヵ月といわれます。そ の間,専任スタッフを置いたりコンサルタントを雇ったりと人的なコストもかかります。このようなコストに対して,企 業規模が大きく体力のある大企業では,それほど負担にはなりませんが,体力のない中小企業ではIS09000シリーズ の認証取得が大きな負担となり得ます。

認証取得までの動き

ここで,実際のIS09000シリーズ認証取得までの流れについて述べましょう。

まず,経営トップによるlS09000シリーズ認証取得を目指すという明確な意思決定が行われることが必要です。これにより,トップから末端の従業員までIS09000シリーズ認証取得のための意思統一へとつながり,全社体制で臨むため にも有効と考えられます。

次に,社内の現状の現状把握を行わなければなりません。それは,現在自社の品質管理体制はどのようになっている のか,またどの規格を取得することが自社にとって最も有益なのかといったようなことを理解することで,無駄なく認証取 得への計画を立てることができます。 そして,具体的なスケジュールの作成へと進みます。スケジュールは,その企業が審査を受けるまでにどのくらいの準備期間が必要とするかによって決定します、そのため,自社の現状を考慮した上で,審査までのスケジュールを立てていきます。

スケジュールの目途が立つと,それによりのくらいの予算を確保するか考えなければなりません、しかし,初めてIS09000シリーズの認証取得を目指す企業では,外部コンサルタントの力を借りる場合が多いので,予算についても差 がみられるようです。

認証取得へのスケジュールができあがると.円滑に進めるためにも従業貝の協力が重要となります。そのためにはまず従業員教育によりIS09000シリーズの理解を行き渡らせることが大切です。従業員教育を行う上でポイントになる のが,対象によって教育方法が異なることを考慮して行うことです。また,どのような方法で行うのかについても詳細に 決めておきます。

次に,推進体制の確立を目指します。一般には社内に認証取得のためのプロジェクトチームを作り,これを中心に活 動を推進していきます。 そして,1S09000シリーズの特徴である品質マニュアルの作成を行います。この作業の手順,方法の文書化はどのように作成したらよいかというと,まず押さえておかなければならいこととして,品質マニュアルはlS09000シリーズの 要求事項にすべて答えるものでなければならないということです。これに加え,手順書の作成も行う必要があります。

手順書は,品質マニュアルを補完する文書です。手順書を作成するときは,品質に有害な影響を及ぼす可能性があると考えられるものだけで十分です。

品質マニュアルや手順書ができあがると,いよいよそれに従って業務の実施を行います。業務を行う上で重要と なるのが,品質記録をつけることです。品質記録とは,マネジメント・レビューや品質計画,工程管理,是正処置といったような活動内容を記録することです。品質記録により,規定の要求事項を満たしているかどうかの証明や自社の品質 システムがうまく働いているかの実証となるからです。これによって,顧客や第三者がその企業の品質システムに実施 具合を確認することができるのです。

次に,内部監査を行います。内部監査とは,自社で構築した品質システムが決められたとおりに働いているかどうかを 調べることです。内部監査は,まず品質マニュアルが規格の要求事項を満たしているかどうかをみます。また,各工程で 品質マニュアル通りに行われているかどうかを確認します。そして,品質システムが効果的に機能しているかどうか の確認です。内部監査は,lS09000シリーズの要求事項の中の1つなので審査を受ける際に必要なものであるが, 自社の品質システムの問題点を明確にする効果があります。

文書化が進み,内部監査もクリアして受審の体制が整ってくると,いよいよ審査登録機関に審査登録の申請を行います。

ここで,どの審査登録機関にするかを選定する必要があります。選定のポイントとして,以下の4つをあげておきます。

①認定機関から認定を受けていること

②認定範囲と申請範囲が合致していること

③予算と日程が条件に合うもの

④審査実績が多いもの

いくつかの審査登録機関を絞り込んだら,気軽に足を運んで相談して決定するのがよいでしょう。

審査登録機関を決定したら,細かい打ち合わせを行い,受審の準備を行う必要があります。内容としては受審までの スケジュール,責任の範囲の線引き,そして揃えておくものや事項といったことです。

準備が済んだら,文書審査が始まります。文書審査は本審査の一部とみなされるので重要です、ここでは品質マ ニュアルが要求事項を満たしているかどうか.詳細に審査されます。審査により不適合の事項が見つかれば,審査 報告書により是正が求められます。

次に,予備審査へ進みます。予備審査は義務付けられていませんが,本審査と同じ内容で行われるので本審査の 予行練習に最適です。また,内部審査では気づかない問題点が見つかる場合があるので,十分に利用すベきです。

そして,いよいよ本審査になるが,本審査は品質システムに関わるすべての部門に対して行われます。一般的には 審査チームにより現場責任者や担当者に対しlSO9000シリーズの要求事項の順番で質問していきます、質問を受 けたものは,口頭で答えるだけではなく作業手順書、記録類の提出を求められます。審査が終了し,重大な不適合が なければ審査登録機関の認証判定委員会にかけられその後正式な通知により合格が告げられ,これで認証取得と なります。合格後は,登録認定書と付属書がおくられ,審査登録機関を通じてJABに登録され,公開されます。

lS09000シリーズは,デミング賞とは異なり一度認証を取得しても,その後のサーベイランスが義務づけられています。 このサーベイランスで重大な不適合が見つかれば,最悪の場合,登録の取り消しといったこともあり得ます。 IS09000シリーズ認証取得までの一般的な流れを簡単に示すと次図のようになります。

認証取得までの動き | 内部監査の実施

IS09000シリーズ導人の決定

社内の実態把握 プロジェクト・スケジュールの作成 予算化

社員教育 推進体制の確立

品質マニュアル・手順書の作成、 内部監査の実施

審査機関の選定 受審の準備、 予備審査を受ける 本審査を受ける 認証取得

 

ISO認証取得までのステップ

ISO認証取得までのステップ


 lS09000シリーズの今後と課題

IS09000シリーズは1987年に制定されました。ISO規格は,通常5年ごとに改訂が行われます。そのため,IS09000シリーズは1992年に第1回改訂が行われる予定であったが,EU統合などの影響を受けて1994年に第1回改訂版が 出されました。

中でも最も変更がなされたのが用語に関する規格である第1回改訂版では,小規模の変更にとどまりました。その IS08402です。それは,サービス産業におけるIS09000シリーズの導入が目立つようになったことから,サービス産業 にも取り入れやすい規格にする必要が生じたからです。それに加え,IS09000シリーズが普及するに従って,いろいろ な不都合箇所が指摘されるようになってきました。今後も,継続的な改訂が必要と考えられます。

次回の改訂は,2000年を目途に作業が進められています。 TC176専門委員会では,この2000年の改訂をVISION2000として様々な議論や原案作成を行っています。具体的 には,第1に,1S09001,IS09002,IS09003を,IS09001に一本化します。これは,内容が重なる規格が3つあるのを1つにまとめることで,簡素化をねらったものです。第2に,1S09000シリーズのコア規格を次の4つにします

①IS09001(概念と用語の規格:IS08402が移行)

②1S09001(品質管理システムの要求事項)

③1S09004(品質管理システムの手引き)

④1S010011(品質システム監査と評価の要求事項と指針)

そして,第3は中小企業向けのガイドの発行です。これは,最近の傾向として,IS09000シリーズの導入が大企業から中 小企業へ移行しつつある現状に対応したものと考えられます。今後の1S09000シリーズの動きとしては,IS014000 シリーズの専門委員会であるTC207との連携があります。IS014000シリーズとは,1996年に制定された環境マネジ メントシステム及び環境監査に関する規格のことです。IS014000シリーズの骨格は,IS09000シリーズをべースに作られたこともあり,IS09000シリーズと関連が深い規格です。将来的には,IS09000シリーズとIS014000を統合しようという 動きがみられているが,大きな問題であることから,まだまだ汗余曲折すると思われます。

以上のように,IS09000シリーズは順調に拡大・発展してきたが,いくらかの問題も生じています。代表的なもとして, 品質マネジメントシステム規格の細分化と増加の問題です。ここでは,QS9000とNQASを取りあげます。

QS9000とは,アメリカのビッグ3とトラック協会が部品供給企業に対して要求する規格です。QS9000の特徴は,自動車産業において独自の要求事項をlS09000シリーズに上乗せしたものです。主なものとして,次の4つです。

①クロスファンクショナルチームの結成

②顧客満足の確認

③工程故障モード影響確認

④製造部品承認手続き

①は,新製品開発や改良品を生産する際に設計、製造、エンジニアリング,品質,生産部門といった要因からなる組織 横断的なチームを作り,取り組むことを要求するものです。

②は,顧客満足の指標を決め,可能な限り客観的な情報に基づいて,顧客満足の度合いを確認することです。

③は,欠陥の発見により欠陥防止を達成するために工程改善を要求します。

④は,すべての設計変更に関して,生産実施前に顧客の書面による承認または承認不要の通知を得る必要がある ということです。 NQASは,日本のNTTによる購買先への要求規格です。この規格の特徴は,従来の検査を重視した管理から品質 ステムによる管理を重視することにあります、主なものとしてて,次の3つがあります。

①品質システム調査

②品質機能試験

③フィールド情報処理

①は,lS09000シリーズを用いて,品質システムの調査を行います。IS09001の要求項目(20項目)に,信頼性試験,生産条件変更,初期流動管理,改善意欲の動機付け,作業環境といった5つの項目を追加したものです。

②は,新しく開発した機能が仕様書の要求事項を満たしているかを確認することです。

③は,機器を設置した現場での不都合情報を解析して,NTTのノウハウヘフィードバックすることです。

これら2つの規格もIS09000シリーズをべ一スにして自社で必要な要求事項の付加をしている点で共通します。 IS09000シリーズは,本来産業分野に限定されない汎用性を特徴とした規格として登場しました。しかし,実際の商取引 の中では,産業別にそれぞれ要求する事項の差が生じます。これを満たすために,1S09000シリーズを修正したり,追加 項目を設けていたりしては規格の細分化を進行させ,本来の目的であった,品質における統一規格という意味がなくなる 恐れがあります。

また,規格の増加は,企業の負担増につながることが懸念されます。現在,IS09000シリーズの認証取得費用は,コン サルタント費用を含んで,約1千万円近くに上るといわれます。これに加え,定期審査の費用も加わることから規格の増 加は,企業にとって大きな負担になる恐れがあり,企業側の強い不満につながることになりかねません。

■引用・参考文献■

1)中条武志「IS09000の知識」日本経済新聞社(1998)

2)荻原睦幸監修「ISOが見る見るわかる」サンマーク出版社(1996)

3)荻原睦幸監修「環境ISOが見る見るわかる1」サンマーク出版(1998)

4)荻原睦幸「IS09000困った時のQ&A」『工場管理』に日刊工業新聞社VoL44,No.3(1998)

5)小沼稔「経営のためのIS09000」.工学図書(1944)

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