原価 cost
「製品の生産,販売及びサービスの提供のために,消費される財貨・用役の貨幣価
値.」(Z 8141)
原価という言葉の本来の意味は,「犠牲」である.つまり,経営目的を達成す
るために犠牲となった,若しくは消費された経営資源をさすが,より厳密にいえ
ば,これを貨幣価値的に測定したものが,通常,我々がいうところの原価ということになる.
もちろん,上記の経営目的は決して一様ではないが,民間企業であれば,すべ
ての目的は利益に関連付けられなければならないし,それは企業にとっていわば
社会的な使命であるといって過言ではない.そうであれば,原価はいわば「利益
を生み出すための犠牲」にほかならない.
損益計算書に示されるコストは過去における数値であるが,もちろん過去にお
ける経済資源の消費だけが原価として認識されるわけではない.一一般に,過去の時点で実際の消費に基づいて把握された原価は過去原価又は実際原価と呼ばれる.
これに対し,将来の時点を対象とするものは未来原価と呼ばれ,その代表的なも
のとしては,標準原価や予算原価がある.
また,原価が貨幣価値的に測定されたものであるとしても,実際の現金支出を
伴うもの(支出原価)だけに限定されるわけではない.すなわち,経営資源をほか
の用途に振り向けた場合に得られる利益をもって原価と認識する場合もある.こ
れは,機会原価と呼ばれる.
上述のように,原価は単なる支出とは異なり,利益の獲得に貢献するものでな
ければならない.もし,ある支出があって,それが利益に結び付かない場合には,
原価とはいわずに損失(loss)と呼ばれる.
もっとも,原価と損失を明確に区別するのは困難である.というのも,損失の多
くはさまざまな費目の中に埋もれており,その発見白体が困難なことが多いからである.
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