防音保護具(耳栓、イヤーマフ)とは
防音保護具としては防音耳栓とイヤーマフ(防音耳覆)いの2種類があります。
ひとつは外耳道に挿入することによって外耳道を塞ぎ音の侵入を遮るものである防音耳栓と
耳介すなわち外耳全体をすっぽりと覆って音の侵入を遮るものイヤーマフ(防音耳覆)がある。
着用時は聴覚を制限されてしまうため、聞こえず、稼働機械、接近してくるものに気付かず重大事故に繋がる危険性がある。それ故に周辺確認を怠らない事、着用者同士での安全確認を必要である。
日本工業規格JIS T8161ではジェットエンジンの製造(整備を含む。),航空機発着場,製材(チェーンソーを用いて行うものを含む。),造船,製鉄,鉱山坑内,製缶,ずい道工事その他強烈な騒音を発する事業場において,作業員の聴覚障害を防止するために使用する防音保護具(以下,保護具という。)のことを防音保護具としている。
英語ではEarplugという。
防音耳栓、イヤーマフの歴史
西暦 | 出来事 |
一九五五年 | JlSB九九〇四「防音用耳せん」が制定された。 |
一九六六年 | グラスフアイバー(繊維の太さは木綿わたの10分の1)製の耳栓イヤーテックスが市販される。 遮音効果は15から20デシベル程度であった。 |
一九六九年 | 塩化ビニール製の労研(労働科学研究所)式耳栓が各種作られた。この当時に大きさの異なる同一耳栓が作られていたことは驚きである。 |
一九七〇年 | 保安帽に取り付けたイヤーマフが開発された。 |
一九七四年 | JIS T 8161「防音保護具」が制定され耳覆いが含まれた。 |
一九八七年 | 折りたたみ式のイヤーマフ(ベルターイヤーマフ)が市販された。 |
一九九四年 | ウレタン製のスポンジタイプの耳栓が市販された。 |
防音保護具の規格・ガイドライン|騒音管理区分
騒音障害防止のためのガイドライン
平成4年10月1日に「騒音障害防止のためのガイドライン」(基発第546号)が出されています。この中では,管理区分ごとに防音保護具の使用が義務付けられています。騒音を85 dB 以下に抑えられるよう,環境の改善,または保護具などで騒音からのばく露を防ぐよう指導しています。
画像出典先:シゲマツ製作所
騒音性難聴 |職場の防音対策
騒音レベル〔単位デシベル(脂)。騒音レベルが10デシベル増すと約二倍の大きさに聞こ
える〕が85デシベル(すぐ近くにいる仲間にさえ大声で話しかけなければ伝わらない状況)
を超える職場で長年働いていると、回復が難しい騒音性難聴に罹ることがあります。
騒音性難聴は、最初耳鳴りがおこり、周波数〔単位ヘルツ(Hz)、一秒あたりの振動数〕の比較的高い音4000ヘルツあたりから聴力が低下し、進行するにつれて2000~6000ヘルツの高音域が次第に障害を受けます。さらに進むと中音域、低音域に広がり、会話(50から2000ヘルツ程度)が聞き取りにくくなります。音楽は変調されて、かつ聞こえにくくなります。
最初の段階では、人の話している声(500ヘルツから2000ヘルツ)は聞き取れるため、
難聴が進行していることに気づかないことが多くあります。
難聴を予防するためには、以下のことが大切です。
① 音源の密閉化など労働衛生工学による騒音対策を実施。
② 改善までの応急措置として日本工業規格(JIS規格)に適合する防音保護具(表6)を手当てする。
③ 防音保護具を適正に装着する。
④ 健康診断で聴力検査を受ける。
表1 防音保護具(JIS T 8161)
種類 | 記号 | 周波数(HZ) | |||||||
125 | 250 | 500 | 1000 | 2000 | 4000 | 8000 | |||
耳栓 | 1種 | EP-1 | 10dB以上 | 15dB以上 | 15dB以上 | 20dB以上 | 25dB以上 | 25dB以上 | 20dB以上 |
耳栓 | 2種 | EP-2 | 10dB未満 | 10dB未満 | 10dB未満 | 20dB未満 | 20dB以上 | 25dB以上 | 20dB以上 |
耳覆い | EM | 5dB以上 | 10dB以上 | 10dB以上 | 25dB以上 | 35dB以上 | 35dB以上 | 20dB以上 |
防音耳栓、イヤーマフ 遮音性能 |耳栓の効果
防音保護具 種類
表1 防音保護具の種類(JIS規格による区分)
種類 | 分類 | 備考 | |
耳栓 | 1種 | EP-1 | 低音から高音までを遮音するもの |
2種 | EP-2 | 主に高音を遮音し,会話域程度の低音を比較的通すもの | |
耳覆い | – | EM | – |
EP-2は高音だけを遮音するので人の声は聞こえるタイプです、日常の作業に適した防音保護具を装着しましょう。
NRR(Noise Reduction Rating : 騒音減衰計数)
NRRは,EPA(米国環境保護庁:Environrnental Protection Agency)が発表している遮音性能のことで,単位はデシベル(dB)です。 NRRは防音保護具 を着用したとき,統計的に約98%の人がこの値以上の遮音効果を得られるというものです。
SNR(Single Number Rating : 単一数評価値)
IS0 4869 - 2 による遮音性能を表す数値で,単位はデシベル(dB)です。 SNRは防音保護具を着用したとき,統計的に84%の人がこの値以上の遮音効果を得られるというものです。
防音耳栓、イヤーマフの種類別の概略
耳栓 |防音、騒音、睡眠対策 |目覚まし|防音グッツ
使用者の外耳道に挿入することにより遮音する構造の保護具で大別すると2種類あります。
あらかじめ成形されたもの(形が決まっている耳栓)|シリコン耳栓
軟質プラスチック,ゴム等の弾性のある素材を材料とし一定の形に成形したもの。一般に大きさの異なったいくつかのものがあるので,自分の耳に合ったものを選ぶことが大切。
使用者の耳道に合わせるもの(形が変わる耳栓)
グラスウール,ウレタンフォーム等でできており,耳に入れる前に小さくしたり形を整えてから入れると耳に合うように膨らみます。この種の耳栓は使い捨てです。使いすぎて固化したものは遮音効果が著しく低いため,新しいものに交換して下さい。
防音耳覆い(イヤマフ)|防音ヘッドホン|防音対策|睡眠
耳全体を覆うことにより遮音する保護具で,硬質プラスチックのカップで耳殼の外から覆う構造になっています。柔らかいクッションが付いており,ヘッドバンドで固定します。ヘルメット併用タイプなどもあります。
①耳全体を覆うので遮音値は大きいですが,高温多湿の環境では暑いという不満が出る場合もあります。
②ヘッドバンド,サスペンションは簡単に長さ調節ができるものを,スプリング式のものは弾性があり圧迫感,不快感のないものを選んで下さい。
防音耳栓、イヤーマフの選び方
防音耳栓、イヤーマフ 周波数と遮音性能
騒音を85 dB 以下に落とすことで難聴を防ぐことができます。環境で発生している音圧(dB)を調べ,どのくらいの遮音性能が必要かを確認し,防音保護具の遮音値を参考に必要遮音値を上回る遮音性能を持った防音保護具を選択します。
必要以上に遮音性能の高いものを選ぶと,緊急時の注意音を聞き漏らすことがあるの
で注意が必要です。
*下記のサイトに耳栓の遮音性能比較を記載しています。参考にしてください。
『耳栓 とイヤーマフでおすすめの防音対策を紹介』
防音耳せん、イヤーマフの選び方のポイント
作業場の周波数毎の騒音レベルに対して、使用する防音保護具の遮音効果が適合しているかをチェックするための参考例(表2)があります。
このチェックの手順は以下のとおりです。
① 作業場所の周波数分析による騒音測定を行う。
② 防音保護具の取扱い説明書等に記載されている平均遮音値と標準偏差を確認する。
③ 周波数帯域の騒音測定値を以下の式より計算する。
計算値(周波数帯域毎)=騒音測定値ー平均遮音値+標準偏差
④ 防音保護具使用時の騒音レベルを下記の式より求める。
防音保護具使用時の騒音レベル(⑧)=10log (10(①/10)+10(②/10)+10(③/10)+10(④/10)+10(⑤/10)+10(⑥/10)+10(⑦/10)
⑤ 防音保護具使用時の騒音レベルが85デシベル未満であれば、この防音保護具が使用できることとなる。
表2は作業現場の騒音レベルと防音保護具の遮音値の例を示して、上記④の計算を行った結果を示しています。この条件では防音保護具使用時の騒音レベルは66・7デシベルになり85デシベル未満であるため、使用が可能となります。
表2 防音保護具使用時の騒音レベルの計算(例)
周波数 (HZ) | 125 | 250 | 500 | 1000 | 2000 | 4000 | 8000 | 合計 |
測定値 (dB) | 82.8 | 91.6 | 93.5 | 95.1 | 92.8 | 86.5 | 73.9 | 99.8 |
平均遮音値 (dB) | 33.2 | 33.8 | 36.8 | 36.6 | 39.5 | 43.8 | 47.6 | |
標準偏差 | 3.3 | 3.4 | 3.2 | 3.6 | 3.6 | 4.1 | 4.1 | |
計算値 (測定値一平均遮音値十標 準偏差) | 52,9-① | 61.2-② | 59.9-③ | 62.1-④ | 56.9-⑥ | 46.8-⑥ | 30.3-⑦ | 66.7-⑧ |
防音耳せん、イヤーマフ形状等について|耳 小さい |子供用
耳に良くなじみ,口を開閉したときに圧迫感のないもの,使用中にはずれないもの,皮膚に障害のないものを選びます。
耳の形状には個人差がありますので,同じ耳栓を使用していても,人によってはフィットしづらく遮音効果が異なる場合や,示されている遮音性能が担保できない場合もあります。正しく装着できていないと効果は発揮されません。
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