防毒マスクとは?
防毒マスクは,ろ過式呼吸用保護具の一種で,着用者の肺吸引力によって吸引する空気中の有毒ガスなどを除去する方式のものです。
防毒マスクには,いろいろな種類があり,その選択や使用方法を間違えると,大きな事故につながるおそれがありますので,十分に注意する必要があります。
防毒マスクの構造別種類
隔離式
隔離式は,面体,連結管および大型吸収缶で構成されています。面体と吸収缶とが離れていて,連結管で接続されているため,隔離式と呼ばれています。
隔離式防毒マスクの例
直結式
直結式は,面体および吸収缶から成っています。中型の吸収缶が使用され,吸収缶が面体に直接つながうているため,直結式と呼ばれています。
直結式防毒マスクの例
直結式小型
直結式小型は,面体および吸収缶から成っています。構成は直結式と同じですが,小型の吸収缶を用いるため,直結式小型と呼ばれています。
直結式小型防毒マスクの例
画像出典先:保護具ハンドブック 社団法人 日本保安用品協会編
吸収缶の種類
吸収缶には,対象ガスとマスクの構成とによって,表1の種類があります。
表1 吸収缶の種類
対象ガスによる吸収缶の種類 | 適合するマスクの構成 | 規格 | ||||
吸収缶の色(6) | 隔離式 | 直結式 | 直結小型 | 国家検定 | JIS | |
ハロゲンガス用 | 灰色及び黒 | ◎ | ◎ | ○ | ☆ | ☆ |
酸性ガス用 | 灰色 | ○ | ○ | ○ | – | ☆ |
有機ガス用 | 黒 | ◎ | ◎ | ◎ | ☆ | ☆ |
一酸化炭素用 | 赤 | ◎ | ○ | – | ☆ | ☆ |
一酸化炭素・有機ガス用 | 赤及び黒 | ○ | – | – | – | ☆ |
アンモニア用 | 緑 | ◎ | ◎ | ◎ | ☆ | ☆ |
二酸化イオウ(亜硫酸ガス)用 | 黄赤 | ◎ | ◎ | ◎ | ☆ | ☆ |
青酸用 | 青 | ○ | ○ | – | – | ☆ |
硫化水素用 | 黄 | ○ | ○ | ○ | – | ☆ |
臭化メチル用 | 茶色 | ○ | – | ○ | – | – |
リン化水素用 | * | ○ | – | – | – | – |
水銀用 | * | – | – | ○ | – | – |
ホルムアルデヒド用 | * | – | – | ○ | – | – |
二酸化炭素用 | * | – | – | ○ | – | – |
半導体ドーピング用 | * | – | – | ○ | – | – |
*:吸収缶の色について規定がなし
◎:国家検定品
○:現在製造されているもの
☆:該当する規格がある
それぞれの種類ごとに,防じん機能を有するもの(フィルタ付き)とそうで ないもの(フィルタ無し)とがあります。
また,フィルタ付きについては,吸収缶に組み込まれている場合と外付けの 場合とがあります。
粒子捕集効率によるフィルタの等級は,防じんマスクの場合と同様に表2の等級別記号が用いられます。
表2 フィルタの等級別記号
粒子捕集効率 (%) | 等級別記号 | |
DOP粒子による試験 | NaC1粒子による試験 | |
99.9以上 | L3 | S3 |
95.0以上 | L2 | S2 |
80.0以上 | L1 | S1 |
吸収缶の破過
吸収缶の除毒能力は有限であり,吸収缶の薬剤の能力が失われると,透過する有毒ガスの濃度が増加してきます。除毒能力試験において,透過する有毒ガス濃度が最高許容透過濃度を越えた状態を破過といいます。
破過時間と環境濃度との関係は,一般に下図のとおり,使用できる時間は高濃度では短くなり,低濃度では長くなります。
一酸化炭素用に限って,低濃度では触媒作用が緩慢なため,かえって破過時間が短くなるので注意が必要です。
直結式小型吸収缶 破過曲線図の例
吸収缶の有効時間
防毒マスクを使用する際に最も大切なことは,吸収缶が破過するまでの時間(残存有効
時間)を確認して使用することです。現在のところ,残存有効時間を正確に推定する方法
がありませんので,次の方法を参考にして吸収缶を交換して下さい。
破過曲線図を使用する方法
対象物質の破過曲線図(ガス濃度と破過時間の関係を表したグラフ)を用い,作業者のばく露濃度から破過時間を求める方法です。
吸収缶の使用時間を記録し,その破過時間の範囲内で余裕を見て交換します。ただし,破過時間は,対象物質の種類によって異なりますので注意が必要です。
有機溶剤蒸気については,その物質の破過曲線図がない場合でも,シクロヘキサン に対する破過曲線図を利用して,おおよその破過時間を推定する方法も提案されています。
以下に,その方法を示します。
(Ⅰ)対象とする有機溶剤のシクロヘキサンに対する相対破過比を表3またはメーカーから出されているデータを利用して求めます。混合溶剤の場合は,破過時間が最も短い物質を対象として相対破過比を求めて下さい。対象とする有機溶剤の相対破過比は,次のように示されます。
各有機溶剤の相対破過比(RBT)は、次式により求められます。
各有機溶剤のRBT = | ある有機溶剤の破過時間 |
|
|
シクロヘキサンの破過時間 |
(Ⅱ) シクロヘキサンの破過曲線図を用いて,ガス濃度から破過時間を読み取ります。
混合溶剤の場合は,各物質の濃度を加算した数値を用いて破過時間を読み取ります。
(Ⅲ)上記(Ⅱ)の破過時間に,上記(Ⅰ)の相対破過比を掛けたものを,推定破過時
問とします。
[例]アセトン濃度0.01%(100 ppm)の場合の推定破過時問を求める場合
アセトンの相対破過比は,表3を利用すると,0.51であることが分かります。
シクロヘキサン濃度が0,01%(100 ppm)のとき,破過時間が300分であるとす
ると,
アセトンに対する推定破過時間
=シクロヘキサンに対する破過時間×相対破過比
=300(分)×0.51
=153(分)
となります。
表3 シクロヘキサンに対する相対破過比
有機溶剤名 | RBT | 有機溶剤名 | RBT | 有機溶剤名 | RBT |
キシレン | 1.42 | イソプロピルアルコール | 1.15 | セロソルブアセテート | 1.77 |
スチレン | 1.68 | イソベンチルアル―ル | 1.63 | ブチルセロソルブ | 2.03 |
トルエン | 1.42 | シクロヘキサノール | 1.27 | メチルセロソルブ | 1.54 |
N-ヘキサン | j0.88 | 1-ブタノ―ル | 1.81 | 酢酸イソブチル | 1.14 |
O-ジクロルベンゼン | 1.70 | 2-ブタノール | 1.60 | 酢酸イソプロビル | 1.18 |
クロルベンゼン | 1.64 | メタノール | 0.02 | 酢酸イソペンチル | 1.17 |
クロロホルム | 0.78 | メチルシクロヘキサノール | 1.36 | 酢酸エチル | 1.02 |
四塩化炭素 | 1.06 | アセトン | 0.51 | 酢酸ブチル | 1.37 |
1,2-ジクロルエタン | 1.24 | シクロヘキサノン | 1.80 | 酢酸プロピル | 1.28 |
1,2-ジクロルェチレン | 0.89 | メチルイソブレツケトン | 1.40 | 酢酸ペンチル | 1.08 |
ジクロルメタン | 0.23 | メチルェチルケトン | 1.17 | 酢酸メチル | 0.63 |
1、1、2,2-テトラクロルエタン | 1.54 | メチルシクロヘキサノン | 1.40 | N,N,-ジメチルホルムアミド | 2.11 |
テトラクロルェチレン | 1.43 | メチルブチルケトン | 1.24 | テトラヒドロフラン | 1.33 |
1,1,1-トリクロルェタン | 1.11 | エチルエーテル | 0.65 | 二硫化炭素 | 0.41 |
トリクロルェチレン | 1.11 | 1,4-ジオキサン | 1.42 | ||
イソブチルアルコール | セロソルブ | 1.71 |
出典:Shigeru Tanaka et a1.,Applied Occupational and Environnlental Hygiene 14 (10) 691-695,1999
《注意》有機ガス用吸収缶は,温度または相対湿度が高い環境で使用すると,破過時間が短くなります。
シクロヘキサンに対する相対破過比が,1より小さい有機溶剤に対して使用した場合は,保管するだけでもその後の有効時間が短くなることがあります。(吸収缶内の活性炭に吸着捕集された有機溶剤蒸気が拡散移動しやすいためです。)
したがつて,温度または相対湿度が高い場合は,1日の使用で廃棄するようにすることが望ましい管理方法です。
吸収缶から透過する空気の交換方法
ばく露限界より低い濃度で臭気を感じる有機溶剤蒸気などに対しては,[吸収缶から透過してくる臭気によつて吸収缶の交換時期を判定することができます。ただし,臭覚には個人差があること,疲労することを考慮する必要があります。
吸収缶の質量増加による方法
有害物質を捕集しますと吸収缶の質量が増加しますので,その増量を測定することによつて,交換時期の目安とする方法です。
防毒マスクの正しい選び方
防毒マスクを選択する場合には,次の事項を考慮する必要があります。
(1)国家検定に合格したものを選んで下さい。国家検定は,厚生労働省の規格に基づいて行われ,国家検定に合格したものには,検定合格標章が付いています。
ただし,国家検定の対象品は,5種類に限定されていますので,対象外のガスに対
しては,JISおよびメーカーから出されているデータなどを基にして,適切な吸収缶
を選んで下さい。
(2)吸収缶は,どんなガスにも有効というわけではありません。吸収缶の種類によって,
除去できるガスとそうでないガスとがあります。この区分はメーカーによって若干の
相違がありますから,メーカーから出されているデータを参考にして,作業環境に適
した吸収缶を選ぶ必要があります。表4に吸収缶の種類と適応ガスー覧表のー例
を示します。
(3)目を刺激するガス(亜硫酸,塩素,アンモニアなど)に対しては,全面形面体を用
いるとよいでしょう。半面形面体と密閉性の良い保護めがねとの併用も可能ですが,
この場合は気密が不十分となる場合がありますので,注意が必要です。
(4)ガスと粉じんなどが混在している場合は,フィルタ付きの吸収缶を使用して下さい。
(5)濃度に応じてマスクの構成を選んで下さい。一般に,高濃度には隔離式,中濃度に
は直結式、低濃度には直結式小型が使われます。
(6)吸収缶の能力として対応できても,ばく露限界濃度(注)より著しく高い環境での使
用は望ましくありません。防毒マスクが使用できる濃度の上限を表4に示します。
(注)ばく露限界濃度とは,ほとんど全ての労働者が連日繰り返しばく露されても,健康に有害な影響を受けないと信じられる環境条件の限界。日本産業衛生学会の許容濃度,ACGIH(米国産業衛生専門家会議)のTLVなどがある。
(7)着用者の顔に適合する形状およびサイズの面体を用いたマスクを選んで下さい。
表3 吸収缶の種類と適応ガスー覧表の一例
○:適合する △:使用できるが長持ちしない ×:使用できない
(注)メーカーによって仕様が異なるので,メーカーの取扱い説明書によること。
表4 防毒マスクが使用できる有毒ガスなどの濃度の上限
種 類 | 全面形面体付きのマスク | 半面形面体付きめマスク |
隔離式 | 2.0%ただし,ばく露限界の45倍 | 2.0%ただし,ばく露限界の9倍 |
直結式 | 1.0%ただし,ばく露限界の45倍 | 1.0%ただし,ばく露限界の9倍 |
直結小型 | 0.1%ただし,ばく露限界の45倍 | 0.1%ただし,ばく露限界の9倍 |
(注)ばく露限界の倍数は,JIS T 8150 (呼吸用保護具の選択,使用および保守管理方法)
(2003年度審議終了)に記載されている防護係数です。
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