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送気マスクの正しい選び方、使い方【イラスト図解】

安全衛生保護具

送気マスクとは?

送気マスクは,着用者が作業している場所とは別の場所の呼吸に適する空気を,ホースを通して着用者に供給する方式の呼吸用保護具です。したがって,酸素欠乏環境およびそのおそれがある場所でも使用することができます。

ただし,有毒物質の濃度が高く,短時間ばく露で生命・健康に危険がある場合には,面体の内部が陽圧となるものを使用する必要があります。

面体の内部が陰圧となるものでも,着用者の顔面と密着する面体を用いたもので,かつ,フィットネス(顔面との密着性)が良好な場合に限って使用することができます。(ただし,肺力吸引形は使用できません。)

送気マスクは,ホースによって空気を供給する構造ですので,行動範囲に限度がありますが,使用時間には制約がないという長所があります。

送気マスク種類別の概略

送気マスクを大別すると,ホースマスクエアラインマスクおよび複合式工アラインマスクの3種類になります。(表1参照)

ホースマスクは大気圧の空気を用い,エアラインマスクは圧縮空気を用います。
複合式エアラインマスクは,エアラインマスクに小型の高圧空気容器(以下「空気ボンベ」といいます。)を組み合わせたものです。

通常は,エアラインマスクとして使用しますが,空気源または中圧ホースの故障などによって,その給気が途絶えるかまたはそのおそれがある場合に,空気源を携帯している小型の空気ボンベに切り替えて,危険区城から脱出できるように設計されたものです。

 

表1 送気マスクの種類

種 類 型 式 使用する面体等の種類
ホースマスク 肺力吸引形 面体
送風機形 手動 面体
電動 面体,フェイスシールド,フード
エアラインマスク プレッシヤデマンド形 面体
デマンド形 面体
一定流量形 面体,フェイスシールド,フード
複合式エアラインマスク プレッシヤデマンド形 面体
デマンド形 面体

 ホースマスク

肺力吸引形ホースマスク

着用者の肺吸引力によって,空気を吸引する方式のものです。
したがって,ホース先端に付いている空気取人口は,酸素濃度が18%以上の空気があり,汚染された空気が流入しない場所に設置しなければなりません。

そして,空気取入口であることが分かる表示板を取り付けておく必要があります。

肺力吸引形ホースマスク

肺力吸引形ホースマスク

画像出典先:保護具ハンドブック 社団法人 日本保安用品協会編

 

肺力吸引形ホースマスク使用時の注意事項

JIS T 8153 では,着用者の肺力を考慮して,ホースの内径を19mm以上,長さを最長10mとしています。このため,10m以内で呼吸に適する空気が得られない場合は使えません。

このマスクは,着用者が吸気した時に,ホースや面体内が陰圧となりますので,面体のフィツトネスが悪い場合や部品の接続部などにすき間がある場合は,環境空気が吸気中に漏れ込むおそれがあります。このため,有毒物質の濃度が高く,短時間ばく露で生命・健康に危険がある場合には使用が禁じられています。

また,通常の着用状態の場合には,酸素欠乏環境で使用することができますが,万一、面体が大きくずれるような場合には,多量の酸素欠乏空気が流入する危険がありますので,酸素濃度が特に低い場合には使用を避けて下さい。

空気取り入れ口には,粗い粉じんを除去するための金網などが取り付けられています。これが目詰まりしていないかを,時々,チェックして下さい。

手動送風機形ホースマスク

手動送風機で吸引した空気を着用者に送る方式のものです。手動送風機は,酸素濃度が18%以上の空気があり,汚染された空気が流入しない場所に設置しなければなりません。

手動送風機形ホースマスク

手動送風機形ホースマスク

電動送風機形ホースマスク

電動送風機で吸引した空気を着用者に送る方式のものです。電動送風機は酸素濃度が18%以上の空気があり,汚染された空気が流入しない場所に設置しなければなりません。

 

電動送風機形ホースマスク

電動送風機形ホースマスク

 

電動送風機形ホースマスクの使用上の注意点

使用中に電源が切られますと,送気が途絶え,ホースマスクの着用者は,危険な状態となります。使用中に電源の接続を切られないためにコードのプラグに「送気マスク使用中」などと大きく表示して下さい。

1台の送風機で複数の人が使えますが,使用するホースの数が多くなったり,長さが増加した場合は,一人当たりの送風量が低下することがありますので状況に応じて,送風機の回転数を調節する必要があります。

可燃性ガスの濃度が爆発下限界以上はもちろん,下限界に近い場合は,防爆型のものを使用し,かつ,静電気の帯電を防止する処置を講じて下さい。

エアラインマスク

圧縮空気を中圧ホースを通して着用者に送る方式のものです。空気源としては,コンプレッサ,圧縮空気管(工場内の配管設備など)および高圧空気容器があります。

エアラインマスクの使用上の注意点

コンプレッサ(高圧空気容器充てん用も含む。)の運転に際しては,コンプレッサが有害なガスや粒子状物質を吸引しないようにする必要があります。特に,エンジン付きのコンプレッサを用いる場合は,その排気ガスを吸引しないように,細心の注意を払わなければなりません。
また,事故などによって,通常の空気源からの給気が停止したり,極端に少なくなったときに備え,緊急時給気警報装置(下図参照)を設置しておくと,事故発生の際も着用者に送気を継続することができるほか,周辺作業者にもトラブルの発生を警報することができます。

緊急時給気警報装置

エアラインマスク

 

プレッシャデマンド形エアラインマスク

常に面体内を陽圧に保ちながら,着用者が吸気したときだけ空気が供給されるように設計されたプレッシャデマンド弁を備えたものです。

面体内が常に陽圧ですので,環境空気が漏れ込む可能性が非常に低くなります。
このため,酸素欠乏環境はもちろん,有毒物質の濃度が高く,短時問ばく露で生命・健康に危険がある場合でも使用することができます。

プレッシャデマンド形エアラインマスク

プレッシャデマンド形エアラインマスク

 

デマンド形エアラインマスク

着用者が吸気したときだけ空気が供給されるように設計されたデマンド弁を備えたもので,酸素欠乏環境およびそのおそれがある場所でも使用することができます。
ただし,吸気時に面体内が陰圧となるため,面体のフィットネスが悪いと環境空気が漏れ込むおそれがありますので,有毒物質の濃度が高く,短時間ばく露で生命・健康に危険がある場合には,フィットネスが良好であることを確認しなければなりません。

一定流量形エアラインマスク

一定量の空気を連続して,面体等に送気する方式のものです。送風量が 十分であれば,面体等の内部が常に陽圧となりますので,環境空気が漏れ込む可能性が低くなります。

-定流量形エアラインマスク

一定流量形エアラインマスク

 

送気マスク使用上の留意点

① ホースは,所定の長さ以上にしないで下さい。また,屈曲,切断,押しつぶれなどが生じないように設置して下さい。

② マスク全体を着用したら,面体と顔面とのフィットネスを調べて下さい(以下「フィットテスト」といいます)。

③ 徐々に有害環境に入るようにして下さい。

④ 作業中の合図をあらかじめ定めておいて下さい。作業者と監視者は,その内容を熟知しておく必要があります。

⑤ 送風機形ホースマスクおよび一定流量形エアラインマスクを危険度の高い場所で使用する場合には,面体等が陽圧となるように送風する必要があります。空気袋がある場合,それが常に膨らんでいることを目安にして下さい。

⑥ 作業中に,次のことに気付いたら,直ちに退避して下さい。
i)送風量の減少
ii)ガス臭または油臭
iii)呼吸する空気への水の混人
iV)呼吸する空気の温度上昇
V)その他異常と感じること

送気マスクの保守管理

次の点に注意して,いつでも使えるようにしておいて下さい。
① 作業開始時の点検のほか,1ヵ月に1回の定期点検を行って下さい。
② 面体,連結管などが劣化した場合は,新しいものと交換して下さい。
③ ホースに変形,破れ,よじれなどがある場合は,新しいものと交換して下
認さい。
④ 送風機およびコンプレッサは,正常に作動するように整備しておいて下さい。
⑤ 空気源として空気ボンベを使用する場合は,空気を十分に充てんしておいて下さい。

 

 

参考文献:
・保護具ハンドブック 社団法人 日本保安用品協会編

・知っておきたい保護具のはなし 田中 茂 著

 

 

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