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官能検査の基礎【イラスト図解】

官能検査の要点 品質管理

官能検査は検査の基本です。

つい最近まで人間は五感を使って製品の品質特性をチェックし、善し悪しを判定していました、しかし、人間の感覚による判定であるため、判定にバラツキが生じることがあります。そのバラツキをなくすためにハード面、ソフト面からの色々な改善がされてきました。

動画 「日本酒の官能検査 きき酒について」

きき酒ききざけ 利酒、唎酒とも書き、「ききしゅ」ともいう。 酒類の品質の良否を感覚により判定すること。 嗜好(しこう)品である酒類の品質の鑑定は、人間の感覚による官能検査、すなわち「きき酒」によって行われている。

 

官能検査とは

官能とは「感覚器官の働き」を意味する、すなわち,見たり,聞いたり, 味わったり,匂いをかいだり,モノに触れたりした時に感じる感覚(視覚,聴覚,味覚,嗅覚、触覚)の事であり広辞苑によれば,
① 感覚器官の機能.また一般に生物諸器官のはたらき
② 俗に「感覚」「感官」と同意に用い、特に性的感覚をいう。
となっているが官能検査での官能という意味は,もちろん①であって②ではない。

官能検査

そして、官能を使って,モノを検査したり,評価したりすることを官能検査(評価)という、歩きやすい靴,加工食品の味付け,ステレオの音響,座り心地の良い椅子,切れ味の良い刃物,鮮明なテレビの画像など,いずれも官能検査を行って開発された商品です。

このように官能検査の対象となるモノは日常生活の中に数多く存在している。

また,検査という言葉はJISによって定義されていて,その定義によれば

「品物を何らかの方法で測定した結果を,判定基準と比較して,個々の品物の良品、不良またはロットの合格・不合格の判定を下すこと」となっている.しかしながら,官能検査で言う検査という言葉は,もっと広い意味をもっていて,測定あるいは評価と言いかえても良く、官能検査法を官能試験法、官能評価法,感覚測定法あるいは感覚工学,官能品質工学などとも呼べる。

『ウィキペディア(Wikipedia)』では下記のように説明している。

官能検査(かんのうけんさ)または官能試験(-しけん)、官能評価(-ひょうか)とは、人間の感覚(視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚など)を用いて製品の品質を判定する検査をいい、食品、香料、工業製品などについて用いられる。また、人間の計器としての感覚特性を研究するために行われる場合もある。

又、検査評価違いは

検査は質を調べること、測定により出た体重、筋力等の測定値を基準値の範囲なのか,正常と比べてどうなのかという質を判断するのが検査。

そして評価とは測定,検査などを行い得た情報をもとに課題を分析、対策し比較検討する最終プロセスの事である。

検査と評価の違いは

 

 桃屋 搾菜の官能検査の事例

1)色、形状の検査

官能検査の事例

製品の状態をよく観察します。
写真では、ザーサイの色調、切片の大きさや厚みを確認しています。

2)香り、味、食感の検査

官能検査の事例

香り、味、食感を確認します。
榨菜では、異臭の有無、特有の風味と歯応えを重点的に確認します。

 

官能検査の問題点

官能検査は,ヒトの感覚を用いてデータをとるので,機器測定とは違っていくつかの問題点がある。

1) 人によって判定(評価)に差がある(個人差)

例えばリンゴジュースのpH(水素イオン濃度)を測る場合,その値はほぼ等しく,データのバラツキはほとんどない。しかしヒトの場合,AさんとBさんとでは,同じリンゴジュースを昧わっても,酸味の感じ方は各人まちまちで,多くの場合同じではない。

2) 個人でも常に一貫した判定をするとは限らず,バラツキが大きい(個人の精度)

前記のジュースをpHメーターAで測定した場合,今日測っても,明日測ってもほぼ同じ値を示すがしかし、ヒトの感覚はあいまいで,同ジュースを味わってもその判定はその時の気分で変化する。

3)ヒトは知覚した内容を定量的に表現する事は難しい。

測定機器を用いれば,モノの重さはグラムで,長さはセンチでそれぞれ定量的に数値で表してくれる。しかし,ヒトが感知した内容を表現するは言葉にはモノサシ(尺度)がない。

「このジュースは酸っぱい」といっても,どの程度すっぱいのか定量的に表現をすることは難しい、 このように,機器測定に比べて官能検査にはあいまいさがつきまとう、従って官能検査を実施するに当たってはこのような問題点を加味した上で,より精度の高いデータを得るための工夫が必要である。

官能検査の問題点

官能検査のメリット

では,このような「曖昧さ」を持つ官能検査がなぜ必要なのか、近年,理科学機器の発達はめざましく,非常に精度の高いものが開発されている。

しかし,機器測定値とヒトの感覚による測定値とが矛盾しても,それぞれが正しい結果となることもある。

例えばA, B 2種類のハンバーグに含有する食塩の分析を行い>Bであっても,ヒトが味わうと統計的に有意差を持ってB>という結果になる場合もある。

ここでヒトの判断が間違っていると決めつけてはいけない、この矛盾が生じる理由は,分析機器による食塩分析では純粋にそのハンバーグに含まれる食塩量のみを測定するが,官能検査の場合は食塩以外の味(原料に由来する味,例えばタマネギの甘味、肉のうま味,食塩以外の調味料の味など)の影響を受けて塩味の強さの感じ方が違ってしまうからである。

すなわち人の舌は,複合味の中での塩味として感知するので,食品の味を研究する上において官能検査は機器では測定し得ないデータをとる1つの測定法といえる。

その他,機器測定の代替として官能検査は感度が良い,迅速である,コストが安いなどの理由で活用できるケースも多々ある。

また食品の開発においては,第1に「美味しいモノ造り」が期待される。

そのためには官能検査は不可欠である。

官能検査は前述のようにヒトの感覚が測定器となるので,その測定器がどの程度の精度(感度)なのか,どのような特性を持っているのかを併せて研究しておくことが大切である。

信頼性の高い官能検査の条件

官能検査を行う上で最も大切なことは,信憑性の高いデータを得るため

の工夫である。

その要点は

①官能検査の目的を明確にする。

② 目的に適した評価対象者(パネル)を決める

③ 精度の高いデータを得るための官能検査手法を選択する

④ より多くの情報を抽出するための統計的解析手法を適用する

⑤ パネルに与える心理的,生理的影響を少なくする環境づくり

(例えば検査室の温度,湿度,照明,騒音,検査の時間帯など)

⑥ 試料提示条件のコントロール(識別しやすいサンプルの温度設定,料理の適温設定など

⑦ わかりやすい評価シートの作成 

などで,これらの要件を十分配慮した実験計画が必要である。

いずれか1つでもおろそかにするとおそらく信頼できるデータは得られないであろう。

 

日本における官能検査の歴史

日本における官能検査は明治40年(1907年),清酒の第1回全国品評会が開催され,採点法(scoring method)で用いられたのが最初といわれている。

第2次世界大戦後,海外からの雑誌類の入手が容易になってから,官能検査は関連情報

に関心を持つ人達の注目を引くようになった。

昭和30年(1955年),(財)日本科学技術連盟が多分野の専門家を集め官能検査部会(後の官能検査研究会)を発足させたのが本格的な官能検査研究の始まりである。そして同連盟主催による第1回官能検査セミナーが昭和32年(1957年)に開催され,その3年後の昭和35年(1960年)には,ここで学んだことを職場で実際に応用し,研究した成果を発表する官能検査大会(後の官能検査シンポジウム)も開催され,それぞれ現在も引き続き行われている。

なお,日本で初めて食品分野の官能検査室を設置したのは味の素㈱である(昭和31年)、当時としては最先端の設備を持った検査室として注目を浴びた。

現在では多くの企業が官能検査室を持ち,それを活用した商品開発が行われている。

 

官能検査の種類 試験、パネル、分析

官能検査は試験方法、調査する人、評価方法、解析方法別に下記のように分類される。

官能検査の試験方法

官能検査を行う際には、調査する製品の性質などを考慮したうえで、検査方法の種類を選択しなければなりません。代表的な試験方法は、二点識別法、三点識別法、一対比較試験法です。

  

それぞれの方法について解説します。

二点識別法

二点識別法は、客観的に差のある2種の試料を用意し、「甘さ」「硬さ」など、指定する特性について該当する試料を判断させる検査方法です。試料間の差異の確認、パネリストが試料間の差異を識別できるか判断するために用いられています。

事例:試料Aと試料Bの2種類の甘み成分の異なる砂糖水を用意します

(試料Bの方が甘い)。20人のパネルがそれぞれ1回ずつ両者を比較し、どちらが試料B(どちらが甘い)かを選択してもらいます。

二点識別法

三点識別法

三点識別法も2種の試料を比較する検査方法です。ただし、三点識別法の場合は、比較させる試料が3種となり、2種は同じ試料、1つは性質の異なる試料を用意し、どの試料が他の2種と異なる試料であるかを選択します。試料間の差異の確認、パネリストの識別能力を測るために使用されるのは二点識別法と同様です。

二点識別法よりも比較対象となる試料が増えることで、より集中して異なる試料を選択させることが可能となり、精度の高い調査を行うことができます。
事例:試料A,B,の2種類の甘み成分の異なる砂糖水を用意します、試料Aは二個、試料Bは一個を用意します、20人のパネルがそれぞれ1回ずつ両者を比較し、どちらが試料B(どちらが甘い)かを選択してもらいます。

三点識別法

1対2点試験法

パネリストにまず標準試料を与え、次に、標準試料と同じものと異なるものの1組を試科としてパネリストに示します。パネリストは、示された1組の試料対の中から、標準試料と同じ試科を選び出します

 

事例:新しく開発したスキンクリームBは従来品Aの香りにわずかな変更を加えたもの

です。この新製品は従来品と違いが感じられるかどうかを調べました。まずパネルに従来品Aを提示し、次に従来品Aと新製品Bを提示し、どちら新製品か選んでもらいます。1対2点試験法

一対比較試験法

複数の試料を比較する際に、それらの試料を対にして取り上げ、一対一比較を繰り返すことにより、それぞれの試料の順位付けを行う検査方法です。

 

回答者は試料について、一対一で比較すればよいため、1回ごとの評価の負担がかからず、評価の矛盾が起きにくいという特徴があります。例えば、類似度の高い試料同士でも、その違いを詳細に評価、分析できるため、製品開発時のコンセプト案などの選定にも利用することが可能です。

事例:5つの銘柄のビールを、一対で飲んで分析を行い、一番美味しいビールを調査。一対比較試験法

官能検査 分析型パネルと嗜好型パネル 

官能検査を行うにはまず評価をするヒトの特性を明らかにする必要がある。

ヒトの感覚は人それぞれに異なるのはもちろんのこと,個人でもその時々で判断が異なるのが一般的である。すなわち人間の感覚を測定器の代替とする官能検査は,機器測定とは異なって本質的にバラツキを伴うごとを考慮して実施する必要がある。

そして研究の対象物を評価し客観的なデータを得るためには,その目的にかなった人を選ぶこと,すなわちパネル(panel:官能検査を行うために選ばれた人達の集団)の選定が必須となる。

しかし現実には「選ぶ」のではなく研究者の身近にいる人,例えば研究所具あるいは学生などで代替されているのが現状である。

もちろん彼らで十分に目的を達するごともある。ただし,一般性をもたせるにはある範囲での条件設定が必要となる。

 

官能検査を行う人の種類は大別すると,分析型官能検査と嗜好型官能検査に分類できる。

分析型官能検査

分析型官能検査とは,検査対象物の特性(例えばケーキの甘味の強さとか,肉の硬さなど)を評価したり,品質間の差異を識別したりすることである、従って,このような検査を行うパネルには鋭敏な感度が要求される。

目的に応じ専門的な教育を必要とする場合もある(分析型パネル)、工程管理や品質管理などを評価し、人数は1~10人程度の少人数になるのが特徴です、ワインのソムリエがこれに該当する。

嗜好型官能検査

嗜好型官能検査は,評価する対象物の嗜好(好み)を評価することである。

従ってパネルは,食品の好き,嫌いの判断ができる人であればよい(嗜好型パネル)。

ただし,一般消費者の嗜好を代表するようなパネルを選ぶことが大切である、なお,パネルの属性(年齢,生活環境など)が評価結果に影響を与える恐れがない場合は,学生とか社員など,身近な集団を利用することもできる。

分析型パネルは,検査員個人の持つ感情を入れずに,感覚による客観的な判断をしなければならない、これに対し嗜好型パネルは,個人の好みを判断するのであるから当然その判断は感情によるもので,主観的な判断となる。

つまり,分析型官能検査はヒトの感覚器官を使ってモノの特性を測ることであり,嗜好型官能検査は逆にモノを使ってヒトの感性を知ることであるといえる、従って自ずと両官能検査のパネルの使い分けが必要となる。

パネルの条件 

味覚の感度は,刺激の種類によって変わるといわれている。

例えば,甘味に対して鋭敏な感度を持っていても酸味や苦味に対しては必ずしも鋭敏とは限らない。また刺激の与え方(水溶液とか固形物),テストの方法(2点識別試験法とか3点識別試験法)などによってそれぞれ得手不得手があり,検査の方法によって個人の成績が必ずしも一貫しているとはいえない。

また,味覚感度は,個人の特性(性格とか経験など)によって変化する.従って,いろいろな方法を取り入れ,総合的な判断によってパネルを選ぶことが大切である。

さらにパネルを選定するに当たっては,味覚感度以外にもいろいろ配慮すべき条件がある。

① 健康であること

まず第1に心身共に健康であること、病気のとき,悩みのある時などは判断があいまいになる可能性もある。パネルは常に判断の安定性や妥当性 が要求される。

② 興味や意欲があること  

官能検査に対して興味や意欲のない人,すなわちやる気のない人はパネルに選ばない方がよい。官能検査を「やらされている」という意識で参加すれば,おそらく真面目に評価しようとはしないであろう、評価意欲の程度は,判断(結果)に著しく影響を与えるものである。

③ 利用しやすいこと  

社員でパネルを構成する場合,営業マンのように出張の多い従業員は不適である。三直勤務め人,出張の多い人などは感度が良くても選ばない方が良い。

④ 好みに過度の偏りがないこと  

言うまでもなく,食品を評価するのに好き嫌いが激しいようでは正しい評価は出来ない、食品の好みについて事前に調査しておく必要がある。

その他慎重さ,集中力,忍耐力,協調性などは官能検査の成績に関係するが,現実にはこういうことを検査するには時間と労力がかかり,パネルを選定する手段として取り上げることは難しい。

官能検査の評価方法(官能評価シート)

官能検査の評価方法として、評価シートを使用するケースが代表的です。評価シートはパネリストに試料についての情報を与えるものです。そのため、評価シートは官能評価において重要なポイントであり、評価シートの内容次第では、同様の内容の検査を実施しても、結果が大きく異なることもあります。

精度の高い評価シートを作成するためには、シートに記載する説明分や用語に十分な情報が含まれている必要があり、先入観を与えないようにすることも重要です。また、評価項目・評価用語の選定が必要となる他、試料そのものや、検査に適した環境の分析、検討も必要となります。

精度の高い評価シートを作成する過程を経ることで、適切な官能検査の方法の選定、適切なパネリストの選定が可能です。評価シートは、官能検査の評価を左右するものであるため、精度の高いデータを得るためにも作成時は丁寧な作成を心掛けましょう。

具体的官能検査事例~味覚感度テストの方法

実際の官能検査の事例として味の素で行っている味覚感度テストの方法を紹介

5味の識別テスト

5種の基本味(甘味,塩味,酸味,苦味,うま味)を代表する物質-ショ糖,食塩,酒石酸,硫酸キューネ,グルタミン酸ナトリウムーを用いての感度テストの方法を実施。

【方  法】
表2.1に示すような5種の希薄溶液を入れたコップをランダムに与え, それぞれの味を当てさせる(配偶法)、ただし,5個のコップを与え,5種の味を当てるという方法では,真に5種の味が識別できなくても,し4種までわかれば全部正解となってしまう、このようなまぐれ当たりの確率を小さくするために蒸留水(無味)の入ったコップを3個入れ,計8イ固のコップの中から5味を当てさせるよう工夫をしている。

【結  果】

実際にこの方法でデータをとり,蓄積された2,117人の各味別判定率を表2.2に示す、正解率は甘味68%,塩味67 %,酸味67 %,苦味55 %,うま昧62%となっている.また苦味の正解率が他の味に比べて低く出ているが,無味(蒸留水の味)を苦味とする判定率が31%と特に多い。

味の濃度差識別テスト         

ここでは苦味を除く4種の基本味につき,各味ごとに濃度の異なる2つの溶液を比較させ,各味の強い方を判断させる。

 【方  法】                

例えば濃度の異なるショ糖溶液(差は僅少)を対(pair)にして与え,両者 を比較して甘味の強い方を選ばせる(2点識別試験法).試料濃度を表2.3に示す、すなわち4種類の物質(ショ糖,食塩,酒石酸,グルタミン 酸ナトリウム)各列につき濃度比を2水準(X,/S, X2/S)とり,甘味,塩味,酸味,うま味の4味各々につきSとXi(i= 1,2)計8対につき比較判定を行う。

味の濃度差識別テスト

各組合せの正解率を表2.4に示す、SとX1との比較では70~80%, SとX2の比較では60~70%範囲の正解率となっている。

 

食品の味の識別テスト

上記に示したのは基本的な物質による味覚感度テストであるのに対し、ここでは実際の食品を用いた感度テストを行っている。

食品の味の識別テスト

画像出典先:おいしさを測る 著者:古川秀子

【方法】

試料内容を表2.5に示す、上記と同様,2種の試料(SとX)を識別する能力があるか否かを判断するテストであるが,ここでは(S, X, X)のように,3イ固1組の試料を与え,この中から異質のものを1イ固選ばせる(3点識別試験法).テストはいずれも2回の繰り返し(合計6組の識別テスト)を行っている。

【結 果】

各食品別正解率を表2.6に示す、3種の食品の中で,コンソメスープの識別テストの正解率が約60%で他の醤油、ジュースに比較して幾分高い。

官能検査から官能評価へ

官能評価は米国で第2次大戦中から戦後に行われた軍隊食の受容性に関する研究が発端で,戦後食品工業を中心に広まった。

わが国では1950年代の後半,品質管理の一環として広く一般の工業に導入された.草創期に集大成された「官能検査ハンドブック」ほか(1~3)はわが国の官能評価のベースをなすもので,今なおバイブル的存在である。

当初は官能検査と称され,上記ハンドブックでは,官能検査は人間の感覚器官を使って行う検査をいうとされ,検査を①品物の品質特性を測定する,②判定基準と比較する,③判断を下す,に分けたとき①と②が感覚器官によって行われるところに特徴があるとされている。

しかし官能検査には上記の検査のみでなく,好みなどを調べる場合も含まれており,分析型と嗜好型に大別されている。前者は人の感覚によって物の特性を知る,後者は物によって引き起こされる人の感覚を知ることを目的としている。これは官能検査としてなされた分類で,判断が客観的判断か主観的判断かによるとされている。

 

新製品開発が盛んになると,新しい価値の創造や多様な価値観に対応する評価が求められ,いつしか官能評価と呼ばれるようになった。

いわゆる評価には①品物の価格を定めること.②善悪・美醜・優劣などの価値を判じ定めることなどの意味がある(広辞苑)。

価値を判じ定めることは個人の価値観によるとしても好き嫌いで判断されるわけではないので,分析型か嗜好型かは微妙であり,別に評価型とすることもある。

いずれにしても,検査から評価への名称転換は官能評価にとって一つの転機であったと思われる.実際,消費者は王様というスローガンも生まれ,一般人による評価が重視されるようになった。

しかし評価は検査に比べて遥かに難しい、検査では判定基準があり,少数の限られた特性に着目すればよいし,パネルの訓練によって精度を高めることもできる。

評価には多くの特性が絡み高次の判断が要求される。評価者の評価能力に対する信用性が重要であるが,評価能力を評価すること自体が難かしい。

一方,名称が変わっても官能評価の内容は官能検査とあまり変わっていないのが現状である。官能評価と称して官能検査によって一般人や学生などによる評価が行われるようになったのである。そうなると,極端にいえば誰でもパネルになれ,誰でもテキストに従ってデータを集めて統計ソフトで解析すれば何らかの結果は得られる。

どのような結果が得られても同等に扱われることになれば,官能評価は安易なものと誤解され信用性が揺らぐことになる。

一般の人がどう評価するかは官能評価としても重要な課題であるが,その際問題になるのは,ナイーブな評価者がどこまで微妙な差を見分けられ妥当な判断ができるのか,感度も好みも価値観も個人差が大きい評価者から一般性のある真理が導けるのか,十分な選定と訓練を受けたパネルの結果との乖離をどう考えるのか,知識,経験,技術のある専門家が作ったものを素人が評価することは正当なことなのか,現在の官能評価という方法論自体が評価に耐えられるものなのか,などである。

 

官能検査の要点 まとめ

官能検査は、人間の感覚に頼って検査を行うものであるため、留意すべき点があります。特に、個人ごとに評価基準に対する考え方・感覚が異なることから、体調・先入観などが評価結果に影響する場合が少なくありません。

そのため、実際に役立てることのできる信頼性の高いデータを得るためには温度や湿度、照明・騒音などの環境を検査する試料に適した環境に整えることが必要です。

また、工業製品などを製造している場合には、限度見本を用意する必要があります。限度見本は、合格品の限度見本と不合格品の限度見本があり、官能検査などには必須です。実際に製造した製品と見本とを比較しつつ、合否の判断に迷った際の判断基準となるためです。

さらに、官能検査を行ううえで、目的を明確にすることも大切だといえるでしょう。評価する目的が明確でなければ、それに適した官能検査の手法を選択できず、官能検査を実施したとしても満足できる結果は得られません。
こうした留意点を把握していなければ、間違った結論が出されることもあるため、注意が必要です。
官能検査の精度を向上するためポイントを下記に纏めました。

1)検査見本を整備する
官能検査の合否の判定基準となる「限度見本」を整備する必要があります。合否の判定に迷った時は、検査品と限度見本とを比較して判定するために、合格限度見本と不合格限度見本の両方をそろえると、検査精度が向上します。

2)検査環境の整備
官能検査は、人の感覚に頼って検査するため、検査精度が検査環境によって左右されます。何を検査するかによっても環境の整備の仕方が変わってきます。

検査精度を向上するために、どういう環境を整備するかを研究していくことが必要です。たとえば、表面傷を検査する場合は、照明の明るさ、色、方向などを研究しておきます。

3)検査作業の標準化と教育
検査精度を維持するためには、疲労による検査能力の低下を避ける必要があります。そのためには、検査手順、検査方法などの検査作業の標準化を図るとともに、連続して行う場合検査時間の上限を設定することも必要です。

また、監督者は検査担当者とともに合否判定結果を、現物を持って検証し、誤判定があった場合には、なぜ誤判定になったかを検討するなど、検査担当の教育を継続していくことも重要です。

官能検査の要点

コラム: スーパードライの官能検査

スーパードライの場合、各工場で毎日できあがったビールを「パネリスト」と呼ぶ専門家がチェックします。

それ以外に10日に一度、本社・研究所・8工場にサンプル(工場見本)をそれぞれ送り合い、それぞれにいるパネリストが官能検査を行います。

空腹時に感覚が敏感になりますので、お昼前に召集されて検査し、その結果についてディスカッションします。パネリストは100人以上います。

官能検査の項目は色、香り、のどごし、泡持ちなど30近くありますが、一番大切なのは「適合度」です。スーパードライの守るべき官能コンセプト(官能特性)に対して、どれだけ合致しているかを数値化します。官能コンセプトは味や香りなどについて五つの文章に明文化してあり、それは社外秘です。

もう一つ大事なのはサンプルに対するコメント。どのような香りや味を感じるかといったコメントをコンピューターに入力し、定量化して解析し、問題解決に役立てるようにしています。

パネリストが官能検査をしている様子(カンパネラ編集部より写真提供:アサヒビール)

引用:カンパネラ編集部 【人間の五感で「官能検査」、スーパードライの「どこでも同じ味」を守り抜く】

 

官能検査の参考サイト:

官能検査 書籍

官能検査ハンドブック: 日科技連官能検査委員

 

『官能検査』 – 宮島醤油

官能検査員養成試験のサイト

 

官能検査 代行サービス

一般社団法人おいしさの科学研究所

 

官能検査 セミナー

官能評価の基本的な考え方・具体的手順・手法

~Zoomによるオンラインセミナー~

 

関連記事:官能検査  sensory test

 

参考文献:

おいしさを測る 著者:古川秀子

官能検査入門 佐藤 信 (著)

官能検査ハンドブック

 

 

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