ヒューマンエラーの対策として有効なポカヨケについて仕組み、種類、事例を、掲載しました、工場、研究所でのヒューマンエラー 防止対策にお役に立ててください。
更に『お金のかからない安全衛生~ヒューマンエラーの改善』については下記の記事を参考願います、工場等での安全衛生事故に役に立ちます。
ポカヨケとは
「人間は間違いをおかす動物で、ポカミスを起こしやすい動物であるといわれ、ポカミス対策(ポカヨケ)が必要である。
ポカヨケは、英語ではフールプルーフ(fool proof=「バカ」 「防ぐ」 )といい、ヒューマンエラー(人間のミス)が起こったとき、それが事故につながらないように、設備的または運用上の防護対策である。
ポカヨケはトヨタ生産方式の基本概念の一つであり、ポカヨケの基本コンセプトは新郷重夫氏が創案しており、新郷氏の著書により日本国外でもポカヨケは広まり、結果Poka-yokeとして製造業の分野では国外でも通じる言葉となった。
“Poka-Yoke(ポカヨケ)”とは、日本語で「うっかりミスの防止」を意味する言葉で、1960年代に自動車製造業界で使われはじめました。ポカヨケというコンセプトは、品質工学の技術者である新郷重夫氏によって構築されたものです。
新郷氏は当時、コンサルをしており、名古屋の山田電機でプッシュボタン作業の組み立てる際にバネを入れ忘れるといったミスの問題を検討していました。解決策は、スイッチ組み立ての作業工程を改善し、2つのステップで成り立つようにするというものでした。
1. 2つのバネをバネホルダーに置くことでそれらのバネを入れる準備を行う。
2. その2つのバネをバネホルダーから取り出し、スイッチに入れる。
改善後、スイッチを組み立てる工程は長くなるが製造中のミスをなくすことが可能となり、結果としてより質の高い製品を生産することができるようになった。
ポカヨケは、現在でもソフトウェアインターフェースにおいて使われています。
例えば無料のホームページ作成ソフト「WordPress(ワードプレス)」には、間違って記事を削除してしまうことを防ぐ機能が用意されています。
ポカヨケの目的は、エラーをすぐに検出して修正できるようにプロセスを設計し、ヒュマンエラーを排除することです。
英語版 poka yoke動画
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スペイン語 poka yoke動画
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検査の分類 ~ポカヨケシステムの歩み
新郷重夫氏は不良率を下げて品質を向上させる品質管理の検査方法として昔からある選別するだけの「分別検査」、“不良情報をフィードバックして再発防止する” 「情報検査」、そして“ミスが発生した時点で対策し不良を造らない“ポカヨケを用いた「源流検査」があるとした。
【検査の分類】
①分別検査:不良を見つける検査(Judgment Inspection System)
②情報検査:不良を減らす検査(Informative Inspection System)
③源流検査:不良を造らぬ検査(Source Inspection System)
分別検査:不良を見つける検査
英語:Informative Inspection System
過去そして現在でも多くの向上で用いられている検査、目的は「加工の終わった製品を“良品と不良品”に区別する検査」全数検査、抜き取り検査もこの方式。
この検査は「次工程、お客様に不良を送らない」という意味では有効な方法であるが如何に正確に検査しても「工場自体の不良率を下げる」ことには寄与しません。
抜き取り検査方式の欠点:
抜き取り検査方式の場合も「検査工数を低減する」には有効であるが同じく「工場自体の不良率を下げる」には寄与しません。
最終検査の欠点:
工場では製品の全数検査を最終工程で行っていますが時間軸で考えるとアクションが遅れます、その工程で検査した方が素早いアクションが出来ます。
AI検査の欠点:
最近は画像認識技術が飛躍的に進歩しAIを活用すれば精度の高い検査は可能であり漏れ不良ゼロを容易に達成することはコストを無視すれば可能ですが同じく「工場自体の不良率を下げる」には寄与しません。
情報検査:不良を減らす検査
英語:Judgment Inspection System
情報検査とは「不良が発生したら、その情報を発生した工程にフィード・バックし、アクションを行い改善することにより、再発防止をする検査」のことである。
この検査を用いれば徐々に不良率が低減できる。
この検査には三つの方式がある。
①管理図方式(SQC方式) Static Quality Control System
②順次点検方式(SuC方式)Successive Check System
③自主点検方式(SeC方式) Self Check System
管理図方式(SQC方式)
SQC方式とは「推定統計学に基づいた管理図を使用して管理限界外に異常が発生したらその情報を発生工程にフィードバックしてアクションを行い改善し、事前に不良の発生を防止する」。
規格限界線:製品の機能を要求許容限界線、規格値±許容値で表現される。
管理限界線:統計量の値がかなり高い確率で存在する範囲を締める限界、通常は2σ管理限界線が用いられる。
【68–95–99.7 ルール】
正規分布において、平均値を中心とした標準偏差の2倍、4倍、6倍の幅に入るデータの割合の簡略表現である、不良率を推定するときに活用される。
正規分布の場合、
1σ 区間におさまる確率→ 約 68.27%
2σ 区間におさまる確率→ 約 95.45%
3σ 区間におさまる確率→ 約 99.73%
であることが知られています。
管理図の欠点:
「不良率を減らすためには,まず,品質の現状を知り,これにアクションを加えなければ,効果は発揮されない」
しかし“管理図法”では「異常のチェックは抜き取りで行われる。よって異常を抽出できる確率は,“全数抽出”に比べて,はるかに低い。
しかも,一般に行われている“管理図方式”では「異常の抽出から,アクションの実施までの“時間的な距離”は,相当間隔があるのであるから,改善されるまでに相当,長い時間が必要となり、その間に,かなりの“不良現象の発生”が起こる。
又、現場に利用される管理図として“不良率の管理図”いわゆる“P管理図”というものがある、これは「従来,発生している不良率から異常値を除去して普通の状態での不良率の数値”を推測統計学に基づいてサンプルを抜き取って管理限界を設定する管理方法である。
このような方策を採用すれば,
・従来以上の不良率の発生を防止することができる。
しかし、逆説的に言うと不良があっての管理図であり、「不良率をゼロにする」という積極的な考え方ではなく消極的な方法である。
順次点検方式(Su CS :Succssive Check System)
新郷氏はSQC方式の欠点をカバーする点検方式として次工程の作業者が検査し、不良が発生時は即時、前工程に連絡し、対策改善できるようなシステム「順次点検方式」を考えポカヨケを用い松下電器のテレビ工場で実施、絶大なる効果を上げることに成功した。
順次点検方式の方法は下記のとおり。
①全数検査 実施
②不良品 判定は第三者が行う。
③不良発生時、ただちに発生工程に連絡、アクションを実施。
ポイントは「検査は客観的でなければならない!」
自主点検方式(Self Check System)
不良のフードバックとアクションを早める為には加工者が全数検査すれば良いが“検査は客観的に判断する”原則に反しており、ポカミスの発生する恐れがある。
しかし、新郷氏は”ポカヨケ”を用いて自主点検すれば自工程で不良が検知でき、即座にフードバックできると考えてコンサル先の向上に導入して効果を上げた。
この検査のポイントは「不良を自工程で発見し、確認できること」
源流検査:不良を造らない検査
英語:Source Inspection System
新郷氏は源流検査というのは「“不良を発生した結果”によって,フィード・バックとアクションを行うのではなく,“不良を発生させる原因の条件のミズを発見して,その“ミスの段階で,フィード・バックとアクションを行い“ミスは発生しても”,それを“不良には転化させない”ようにするという考え方に基づく検査方式」と説明してあり
“源流検査”と全数検査”および“フィード・バックとアクションの即時対応性”とを結合することによって不良ゼロが可能としています。
そして具体的手段としでポカヨケを利用することがきわめて効果的でありと力説しています。
源流検査の優位性~ヒューマンエラー対策
不良の原因は5M+1Eであり、材料(Material)、機械(Machine)、作業者(Man)作業方法(Method)測定(Measurement)そして環境(Environment)と言われています。
しかし、現在のモノづくり技術の進歩のお陰で良い材料が開発され、マシンは高信頼性になり、作業方法も標準化され、測定の精度も向上し、環境の制御も容易になり、どの業種の製品においても以前と比較して製品の品質は向上し、不良率は低下してきていますが不良ゼロには達成できていません。
残る不良の多くの要因は作業者(Man)によるヒューマンエラーです。
ヒューマンエラーには規則性がなく、いつ発生するかわからないので推計統計学の“抜く取り方式”ではなかなか、補足する事は困難です。
作業者(Man)によるヒューマンエラーを対策するには源流検査の具体的
手段である“ポカヨケ”による全数検査が有効です。
源流検査の優位性~フードバックとアクションスピード化
源流検査では
ミスが発生⇒不良に転化しない内に原因の段階で“フィードバック”
⇒ただちに“アクション”
が可能になり、スピードが早いという利点があります。
従来の管理方式では
ミスが発生⇒“結果”として不良が発生⇒不良発生情報をフィードバック⇒アクションを開始
といった流れで処理されるのでどうしても時間が遅れてその間に不良が発生するといった事があった。
源流検査の優位性~予防保全への活用
源流検査の考え方と共通するのが予防保全(TPM)です。
設備の故障を発生する前に事前に不具合の予兆を検知してアクションをする保全の方法で”故障ゼロのマシン”にすることが可能です。
例えば軸受部に“サーミスター”を取り付けて温度が規定以上になったら自動的にマシンを停止させる。
又、スマートホンの異常高温時の“起動停止機能”も同じ発想です。
ポカヨケ種類
ポカヨケの種類は分類ごとに下記のような種類に区分される。
(1)検知方法別:
①識別式・・色分け、ICタグ、画像検査機
②アラーム式・・警報機、カウンター
③治具式・・ポカヨケ・ガイドピン
④接触式・・製品の形状の違いにより異常を検知する方式。
⑤定数式・・規定の回数でない時、異常と判断し検知する方式。
⑥動作ステップ式・・動作ミスを異常と判断し検知する方式。
(2)目的別:
①規制式・・異常が発生した場合、機械を停止。
②注意式・・異常が発生時、作業者の“注意を喚起する”方式。
(3)時系列別:
①事前・・ミスを発生する前に対策
②発生時・・ミスが発生時にポカヨケ
③事後・・ ミスが発生後にポカヨケ
検知方法別 ポカヨケ種類
ポカミス対策のポカヨケを仕組み別に分類すると下記のようなモノがある。
識別、選別して検知
識別には、たとえば色分けやICタグ、置き場の設定がある。色分けは、良品と不良品を区別するために、ケースに色がついたものを使用する。たとえば、赤であれば不良品とする。
また最近ではICタグが用いられるようになってきた。ICタグは双方向の通信が可能なので、瞬時に情報を入力、出力できる。製品や部品の加工履歴など簡単にメモリーすることができるため、トレーサービリティの把握には、効果を発揮する。
又、選別検査も画像検査機にて精度の高い選別が現在では可能。
アラームで検知
異常が発生した場合、アラームで作業者に知らせることが大切である、センサによる警報やカウンターによる生産量の把握などがある。
治具で検知
ポカミス防止で簡単なのは、専用治具である。(ポカヨケガイドピン)
たとえば、部品をセットするに治具を使用すれば簡単に取り付けられ、段取りミスを防止できる。
接触で検知
製品の形状の違い、寸法差によって異常を検知する方式。
定数で検知
一定の回数の動作を繰り返す作業の場合、規定の回数行わなかった場合、異常と判断し検知する方式。
動作ステップで検知
一定のステップで作業を行わなければならない時、動作ミスを異常と判断し検知する方式。
ポカヨケの目的別 分類
ポカヨケの目的別の分類として規制式と注意式がある。
規制式
異常が発生した場合、機械を停止するとか、ロックが解除されない等の次の作業に進行をストップさせて連続して不良の発生を防止する方法。
*強い強制力があるので不良をゼロにする為には有効な手段である。
注意式
異常が発生した場合、その情報を
・ブザー警告音
・光の点滅、点灯
で作業者の“注意を喚起する”方式である。
注意式は作業者がその情報に気が付かないと異常の発生が継続してしまう欠点があるので光の点滅、点灯させる場所、位置に配慮し、警告音の場合は周囲の環境音も考慮しなければならない。
ポカヨケの時系列別方式、分類
ポカヨケには時系列的に分類すると下記の3種の方式があります。
①事後対策:
製造した内容を後工程で検査し、不具合があれば、その混入を防止する方式。
②発生時対策:
不良検出センサーに相当する装置、治具を取り付けて不良発生時点でアラームを鳴らしたり、不良混入を防ぐ方式。
③事前対策:
製品製造の源流を逆上り、製造技術上の原理的対策を図って不良発生を防ぐ方式です。フールプルーフ設計がこれに該当します。
事後 ポカヨケ対策
製造した内容を後工程で検査し不具合があれば、その混入を防止する方式。
ポカヨケ事例:空の缶詰はマグネット棒に吸引されて、出荷を防止。
缶詰の充填ミス対策として空の缶は排除できるようにした。
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発生時 ポカヨケ対策
不良検出センサーに相当する装置、治具を取り付けて不良発生時点でアラームを鳴らしたり、不良混入を防ぐ方式。
ポカヨケ事例:切削加工時の異物による樹脂製品の浮き上がり検知を「エアマイクロセンサ」で検知、加工機を停止。
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ポカヨケ 検知センサーの種類
ポカヨケの異常を検知するセンサーとしは色々なモノがあり、大きく分けると接触式と非接触式があります。
接触式 リミットスイッチ
下記は接触式検知センサーの代表であるリミットスイッチの種類一覧表です。
リミットスイッチとは内蔵マイクロスイッチを外力、水、油、ガス、塵埃などから保護する目的で封入ケースに組み込んだものであり、特に機械的強度や耐環境性を要求されるところに適用できるように作られたスイッチをいいます。形状は横形、縦形、マルチプル形に大別されます。
【リミットスイッチの種類一覧表】
非接触式 ポカヨケ検知センサー
下記は非接触式検知センサーの代表である光電センサーの種類一覧表です。
光電センサとは、可視光線、赤外線などの“光”を、投光部から発射し、検出物体によって反射する光や、遮光される光量の変化を受光部で検出し出力信号を得るものです。
【光電センサーの検出方式の種類一覧表】
その他 ポカヨケ検知センサー
その他のポカヨケ検知センサーとしては変位センサー、金属通過センサー、液面センサ等があります。
【その他 ポカヨケ検知センサー 種類一覧表】
ポカヨケの分析手法
ヒューマンエラーの真の原因を把握しないでポカヨケ対策すると必ず
ヒューマンエラーが再発しますので「根本原因分析」RCA(Root Cause Analysis)する事が重要です。
RCAの手法には下記のような方法はあります。
①FTA(Fault Tree Analysis) 故障の木の解析
製品の故障、およびそれにより発生した事故の原因を分析する手法。
②VTA(Variation Tree Analysis) 変化の木の解析
事故発生におけるヒューマンファクターを解明するために考案された手法。
③なぜなぜ分析
④特性要因図
⑤連関図分析
⑥特性列挙法
ポカヨケ動画事例
工場安全 ポカヨケ
機械回転物の中に手を入れないように、安全カバーでガードし、また安全カバーを開けると自動的に回転物が停止し、手を巻き込まれない仕組み。
セーフティレーザスキャナを使用した事例。
物流ピッキング ポカヨケ
ピッキングシステムでは部品の取り出しを毎回チェックでき、部品の取り間違いを警告できますので、製造不良を低減でき生産性の向上が図れます、又、ピッキングシステムを導入することで、慣れていない作業者でもピッキング表示灯の点灯順に従い段取りよく組み立て作業が行なえます。
ポカヨケ トルクレンチ
ポカヨケトルクレンチは締付け回数管理で締め忘れを防止できる。
ポカヨケ システム 組立作業
ポカヨケシステムを導入することで、慣れていない作業者でも表示灯の点灯順に従い段取りよく組み立て作業が行なえます。
棚から部品を取り出すとき、バーコードを読み取りした電気信号で、ランプを点滅させ、誰でも間違いなくピックアップ。
【日東工器】ねじ締め忘れ・ポカよけ
電動ドライバーを使用してのネジ締め忘れを防止するためのポカヨケ装置。
下図は車載機器や電装機器などのネジ締めの信頼性を要求される製品
の組み立てに最適の「ねじ締めカウンタ」です。
ポカヨケ シャッター oneA
棚や作業台に取付ける事で、ピッキングする場所をランプ指示とシャッターの開閉により作業者に知らせます。
ポカヨケ シャッター 事例:
必要な棚以外はシャッターが開かないため、間違えたところからは取ることもなくポカミスをシャットアウトします。
下記のの記事にポカヨケ改善事例集を掲載してます、参考にしてください。
関連記事:ポカヨケ改善事例集
PDF版サンプル ポカヨケ対策 Poka yoke
参考文献:
1.源流検査とポカヨケ・システム―不良=0への挑戦 新郷 重夫 (著)
2.よくわかる「ポカヨケ」の本 (ナットク現場改善シリーズ)
3.ポケット図解 ポカヨケの基本がわかる本 長谷川 浩一 (著)
4. ポカヨケ大図鑑 工場管理編集部 (編集)
5.ポカヨケ (実践現場の管理と改善講座) 名古屋QS研究会 (編集)
コメント
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[…] 程时,就考虑到人为失误,把过程设计成不容易出错的过程。比如,在设计机器时,为了防止机器切到手,设置成需要用手去按在另外一个地方的按钮。https://takuminotie.com/blog/2019/11/15/post-18830/ […]