イノベーションとは何か?
イノベーションは富を創造する能力を資源に与える。
人間が利用方法を見つけ経済的価値を与えない限り何ものも資源となりえない。
植物は雑草にすぎず、鉱物は岩に過ぎない。
起業家として成功する者はその目的がなんであれ、価値を創造し、社会に貢献する。
しかも、その目指すものは大きい。すでに存在しているものの修正、改善だけでは満足しない。
彼らは新しい価値や満足を創造し、単なる素材を資源に変える。
あるいは新しいビジョンのもとに既存の資源を組み合わせる。
イノベーションとは意識的にかつ組織的に変化を探すことである。
それらの変化が提供する経済的、社会的イノベーションの機会を体系的に分析することである。
<ふたつのイノベーション>
イノベーションは技術に限ったものではない、ものである必要さえない。
それどころか社会に与える影響力において新聞や保険をはじめとする社会的なイノベーションに
匹敵するほどのイノベーションはない。
<明治維新のイノベーション>
日本は明治維新にその資源を社会的イノベーションに集中し、東洋の西洋化に成功し、結果として西洋の東洋化に寄与した。
まず、はじめに福沢諭吉、中江兆民等が和製漢語、言葉を創造し、西洋社会のシステムの日本化、東洋化に取り組み、近代化というイノベーションを行った。
和製漢語の事例:
文化、文明、民族、思想、法律、経済、資本、階級、分配、宗教、哲学、理性、感性、意識、主観、
科学、物理、化学、原子、質量、固体、時間、空間、理論、文学、美術、喜劇、社会主義、共産主義
「中華人民共和国」の「人民」や「共和国」なども和製漢語であり、国名だけでなく中国の体制に必要不可欠な概念までも和製漢語が使用されており、毛沢東も和製漢語を使用して毛沢東思想を思考していた。ここで重要なのは言葉を造った事ではない、その言葉を活かし新たな思考、システムを創造した事である。
イノベーションを生み出す七つの機会
天才のひらめきから生まれるイノベーションもある。だが成功したほとんどのイノベーションはイノベーションの機会に対する体系的な探究から生まれている。
イノベーションの機会は産業の内部に四つある。
第一が予期せぬこと、第二がギャップ、第三がニーズ、第四が産業構造の変化である。
イノベーションの機会は産業の外部にも三つある、すなわち、第五が人口の変化、第六が認識の変化である、第七が新知識である、これらの七つの機会は互いに重複する。
それぞれがそれぞれのリスク、むずかしさ、複雑さを伴う。
だがイノベーションのほとんどがこれらの七つの機会から生まれる。
予期せぬ成功
最も単純かつ容易なイノベーションの機会として予期せぬ成功がある。
これほど、リスクが小さく苦労の少ないイノベーションはない。
しかるに予期せぬ成功はほとんど、無視される、困ったことにはその存在さえ拒否される。
人間は誰しも長く続いてきたものこそ、正常であり永久に続くべきものであると考える。
<予期せぬ成功の体系化>
・予期せぬ成功がかならず、目にとまる仕組みをつくる→『イノベーションの機会の見える化』
・予期せぬ成功の要因を探る。
・その利用方法を検討する為の人と時間を割く。
予期せぬ失敗
予期せぬ失敗の多くは単に計画、実施段階における過失、不備の結果にすぎない。
だが慎重に計画し、設計し、実施したものが失敗したときは機会の存在を教えることが多い。
製品やサービス、マーケットの前提が現実と乖離するにいたっているかもしれない、顧客の価値観や認識が変わっているかもしれない。
それらの変化はすべて、イノベーションの機会である。
<事例:フォード エドセルの失敗 そしてサンダーバードの成功>
1957年 「中流の上」の顧客に的を絞って開発したエドセルが惨敗
原因:ライフスタイルの変化→対応:サンダーバードの開発
あるべき姿と現実のギャップ
ここでいうギャップとは現実にあるものとあるべきものとの乖離、不一致である。
いわば理想と現実のギャップである。
ギャップはその産業、市場にいるものにはっきりと認識することができる。
まさに彼らの前にある。
しかし、同時にギャップはそれを当然のごととして受けとめしまいがちな内部のものが見逃しやすいものである。
彼らは「ずっとそうだった」と言う。
しかし、多くの場合、その「ずっと」が実はごく最近のことに過ぎない。
イノベーションの機会としてのいくつかに分類できる。
ニーズの存在
イノベーションの母としてのニーズは限定されたニーズである。
具体的でなければならない、それは予期せぬ成功、失敗、ギャップと同じように企業、産業に
内部に存在する。
その主なものはプロセス上のニーズ、労働上のニーズ、知識上のニーズである。
産業構造の変化を知る
産業構造は不変のように思われるがそれは一夜で変わるものであって事実、一夜で変わってきた。
この産業構造の変化がイノベーションの機会になる。
産業が急速に成長するとき、すでに基盤を確立している企業はみずからが手にしているものを守ることに汲々として新規参入者の挑戦に応じようとしない。
長い間成功をおさめ支配的な地位の生産者、供給者は傲慢になりがちである。新規参入者が現れても取るに足らぬ存在、素人にすぎないと見る。
7.人口構造に変化
産業市場の変化のうち、人口の増減や年齢構成、雇用や教育水準、所得などの人口構造の変化ほど明確なものはない、いずれも見誤るようがない。
それらの変化がもたらすものは予測がもっとも容易である、しかもリードタイムまであきらかにわかる。
人口の変化の分析は統計から始まる、ただし人口の総数そのものにはあまり意味がない。
年齢構成のほうが重要である。
しかし、統計を読むだけでは十分ではない、統計は出発点にすぎない。
現場に行き、見て、聞くものにとって人口構造の変化は生産性と信頼性の高いイノベーションになる。
認識の変化
コップに半分入っているのと半分空であるのは量的に同じである。
だが意味が違う。世の中の認識が前者から後者にかわる時大きなイノベーションに機会が生まれる。
認識の変化は事実を変えない、事実の意味を変える。
しかも急速に変える。
かってコンピュータは一般の人にとって恐ろしいものであって大企業が使用するものであった。
ところが突然、それは彼ら一般人が税を申告するものとなった。
<だまし絵>
貴方には若い女性が見えるか、老婆が見えるか。
知識によるイノベーション
歴史を変えるイノベーションには科学技術や社会にかかわる新知識にもとづくイノベーションが多い。それらは起業家精神の華である。
通常、イノベーションと言われるものがこれである。
歴史を変えるようなイノベーションの中で知識によるイノベーションはかなりの上位に位置づけられる。
知識によるイノベーションはリードタイムの長さ、失敗の確率、不確実性等他のイノベーションとは異なる。マネジネントが難しい、しかし不可能ではない。
はじめに必要な知識を分析し、欠けているものを明確にする。
知識によるイノベーション事例:
・ライト兄弟の飛行機 ・エジソンの電球 ・フォン ノイマンのコンピューター
知識によるイノベーションと時間
まず、最初に長期にわたって胎内期、つまりイノベーションが起こりそうで何も起こらない期間が続く。
そして突然、インベーションが発生し、導入期が始まる、そして5年後には成熟期に入り、最後に
ごくわずかな企業だけが生き残る。
製品開発のリードタイムは長いが新規参入者が模倣して参入するまでに時間は短い。
チャンスは2度とない、最初から失敗してはならない。
また、今日ではきわめて多くの国が科学、技術によるイノベーションのために直ちに働きはじめる人材を
持っており、更にIT、通信の発達によりグローバル化した新規参入者の数は大幅に増加しつつある。
体系としてのイノベーション
目的意識、分析、体系によるイノベーションだけがイノベーションの方法として掲示され論ずるに
値する。しかも、イノベーションとして成功したものの内で少なくても90%はそのようなイノベーションである。
なすべきこと:
1)機会の分析:右脳と左脳を使う、数字を見るとともに人を見る。
2)現場での認識、確認そして顧客の声を聞く。
3)単純、具体的である。
4)ひとつだけ小さくおこなう
5)TOPの位置を狙う
6)なすべきでないこと:
利口であろうとはしない。
多角化してはならない。
7)明日のためのイノベーションをしてはならない、今日のためにイノベーションをおこなう
8)イノベーションの条件:
イノベーションはあくまでも意識的かつ集中的な仕事である。勤勉さと持続性、それに献身性を必要とする。これがなければいかなる知識も創造性も才能もムダとなる。
イノベーションは強みを基盤としなければならない。
イノベーションを行うとするものの価値観と合っていなければならない。
イノベーションは経済、社会を変えるものでなければならない
参考文献:
イノベーターの条件―社会の絆をいかに創造するか
P.F. ドラッカー (著)
ドラッカー テクノロイジストの条件、イノベーションと企業家精神より
コメント