洗浄の基本
洗浄とは?
洗浄とは、水や洗剤などの洗浄液を用いて対象物に存在している汚れや微生物を取り除くことです。
洗浄の目的:
食品等に付着しているおそれのある微生物や化学物質を取り除いたり、減らしたりする目的で行います。 また、使用後の食器類に付着している食品残渣を取り除き、洗浄後に行う消毒の効果を高めるためです。
汚れの種類:
汚れの大部分は、食品残渣であり、デンプン、タンパク質、脂肪などの有機物が主体となります。これが、熱や乾燥で変性すると洗浄が非常に難しくなるため、日常的にしつかり洗浄して汚れを残さないことが大切です。
洗浄の効果:
①細菌の発生抑制:
食品残渣を栄養源として細菌が増殖し、食中毒などの健康被害を出してしまうおそれを防止します。
②食品の品質問題対策:
水に溶け込む汚れは、色や臭いが他の食品にうつるおそれがあります。
また、たとえばアレルギー物質が残っていると、人によってはアレルギー症状を起こすこともあり、これらのトラブルを防止します。
③調理機械の性能低下防止:
調理機械に付着した汚れは、異物混入の原因となるだけでなく、機械の性能を低下させるおそれがあり、それを防止します。
④お客様の安心感
目に見える汚れはお客さまに不快感を与え、お店の信頼・信用を失うおそれがあります、これを防止します。
洗浄の注意点:
①野菜、果実、飲食器は洗浄剤を使用して洗浄後、飲用適の水ですすがなければなりません。このとき、流水を用いる場合、野菜・果実は30秒間以上、飲食器は5秒間以上すすぎます。ため水を用いる場合はため水をかえて2回以上すすぎます。
洗浄作業をするときは、洗浄水が付近に飛び散り、まわりを汚染することがあるので、近くに調理済み食品や洗浄済みの器具類などを置かないようにします。
汚れを落とす為のポイント(洗浄作用)
①物理的なカ
スポンジなどを用いて汚れをこすり落とします、力を入れると入れるだけ、よく汚れが落ちます。ただし、表面を傷つけ、汚れがとりづらくなるので注意が必要です。
②化学的な力
洗剤に含まれる界面活性剤等の働きで汚れを落とします。希釈濃度によって、汚れの落ち方が変わります。メーカーの推奨する濃度の範囲内で使うと効果的です。
③温度
油汚れなどの場合は、温水で汚れを溶かし落ちやすくします。
④時間
時間をかけて洗った方が当然よく落ちます。また、洗剤をつけた状態で長くおくことで、汚れがよく浮き上がります。
⑤手順
汚れの種類によっては、浸漬させるといった方法もあります。
汚れが落ちるメカニズム(洗浄作用)
汚れ除去のメカニズムは汚れを引きはがすタイプの分離型洗浄、汚れを溶かして除去する溶解型洗浄、汚れを汚れではないものに分解してしまう分解型洗浄の3種に分けて考えることができる。
3つの洗浄パターンの特徴
汚れの除去効率から見ると分解型が最も好ましく、次いで溶解型、そして分離型がの順となります、分離型は除去した汚れが再付着する可能性があり、汚れを完全に除去したい場合には適しません。溶解型も基本的に汚れを薄めて取り除くという手法なので、洗浄槽でバッチ式で処理する場合には、どうしてもごく少量の汚れが残留してしまいます。分解型洗浄では汚れを汚れではないものにまで分解するので、完全な汚れ除去が期待できる最良の洗浄パターンです。
一方で、被洗物の損傷や取扱い性の面では分離型洗浄が最も好ましく、溶解型、分解型の順に悪くなります。分解型洗浄では汚れを分解する強力な負荷を与えるので被洗物基質自体にも悪影響を及ぼす可能性が高くなります。また、溶解型洗浄に用いる液体も、何らかの形で汚れ分子をバラバラにする力を持っているので、被洗物内部に浸み込んで膨潤させるなどの悪影響を及ぼす可能性があります。
3つの洗浄パターンの特徴
分離型洗浄の特徴
分離型洗浄の効率を左右する要素
水は他の液体に比較して汚れの反発力を大きくする性質が優れています。水洗いだけでも泥やホコリなどを結構うまく除去できますが、これは汚れの反発力を増す水の性質によります。
水流などの機械力は汚れを引きはがす作用に直結します。機械力が大きいほど分離型洗浄は効率が良くなるといえます。ただし、通常の水流では微小汚れには作用しにくいです。微小粒子汚れの引きはがしには超音波洗浄などが有効に働きます。
分離型洗浄は除去された汚れが再び被洗物に付着する現象(再汚染)が問題になります。とくに水に浮いてしまうタイプの汚れは問題になります。洗浄液の表面に浮いた汚れが被洗物を引き上げる際に大量に再付着してしまいます。このような再汚染を防ぐ工夫も分離型洗浄では重要なポイントになります。再汚染防止にも界面活性剤やアルカリ剤が有効に働きます。
溶解型洗浄の特徴
①溶解型洗浄のしくみ: 化学用語では溶かす側の液体を溶媒、溶かされる側を溶質とよびます。(砂糖水の場合、溶媒が水、溶質が砂糖)溶解型洗浄では汚れが溶質で溶かしてしまう溶媒を洗浄液に用いて洗浄方法です。この際、汚れである溶質と溶媒は非常になじみがよい関係で、相互に引き合う性質を持っています。
又、薄い液なら溶解速度が大きいのですが、濃くなると溶解速度が低下するのです。溶解現象の過程で、溶質の近辺が高濃度でも、溶質から離れたところでは低濃度であるという不均一な状態になりやすく、洗浄液にはまだまだスタミナがあるのに汚れ除去が進行しないという状況に陥ります。それを防ぐため、溶媒を撹拌して濃度を均一化して汚れ付近の濃度を下げることが求められます。
また、洗浄液が被洗物基質にも親和性が高い場合、被洗物基質に洗浄液が浸透して被洗物(木綿)を膨潤させてしまう場合があります。洗濯の場合には、この現象が木綿の収縮を引き起こします(図1-8)。
木綿繊維の洗濯による収縮
親水性の繊維には、「水を吸うと膨れる」といった性質があります。水を吸い込んだ綿繊維は、繊維の直径が20%近く大きくなり、太くなった糸は、長さが短くなります。
その状態のままで乾くと、「衣類が縮んだ」ということになるのです。
分離型洗浄の特徴
分解型洗浄では酸化反応等を利用して有機物汚れを分解する場合が大部分です。
分解できる汚れはタンパク質、油脂、糖類です、分離型洗浄には主として界面活性剤とアルカリ剤が関与する。
界面活性剤は疎水基と親水基からなる分子構造で,洗浄液/被洗物,洗浄液/汚れの界面に吸着して汚れを離脱させ,乳化作用,分散作用などで汚れを洗液中に保持し,被洗物への汚れの再付着を防いで系外へ排出する。洗浄剤の成分としては一般にはアニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤が用いられる。
また,アルカリ洗浄剤とは、pHが8を超えた洗浄剤のことを言います。主成分は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、あるいは炭酸ナトリウムなどのアルカリ塩類です。
アルカリの主な特徴として、油やタンパク質に作用し、これらを溶かす効果があります。そのため中性洗剤では対応できないほどのひどい油汚れや焦げついた汚れ、とくにひどいタンパク汚れなどを落とすことを目的として、アルカリ洗浄剤が用いられます。
具体的な分離型洗浄ですが家庭では食物シミ等を漂白剤で脱色するなどの操作が行われますが、漂白剤は分解型洗浄剤の代表的なものです。ただし、家庭用漂白剤には被洗物を傷めないよう力が弱いものが使われます。有機物を二酸化炭素と水にまで分解するといった作用はなく、色素等の官能基の一番弱い部分等を壊して脱色します。
医療系や食品工業系、また家庭洗浄の一部では衛生環境を保つために分解型洗浄が行われます。カビや細菌類の細胞膜等を破壊して死滅させ、清潔な環境を保ちます。精密実験のための器具類等には非常に強力な酸化剤を作用させて汚れを除去しますが、プラズマ利用の非液体系洗浄なども普及しつつあります。
汚れの分類
汚れは性状別に水溶性汚れ(基本的に水に溶解する汚れ)、油性汚れ(水には溶けにくいが有機溶剤には溶解する汚れ)、そして水にも有機溶剤にも溶解しない固体汚れの3種に分けることができます。
①水溶性汚れ
水溶性汚れはさらに易溶性汚れと難溶性汚れに分けられます。易養成汚れは砂糖や食塩など、単なる水でも溶解する汚れです。難溶性汚れは染色性のある色素系の汚れや変性タンパク質などです。食物系のシミ成分などに多く含まれています。比較的弱いアルカリや酸化剤を利用すると水への溶解性が高まります。
②油性汚れ
油性汚れはさらに強極性汚れ、中極性汚れ、無極性汚れに分けられます。強極性汚れの代表的なものは脂肪酸です。脂肪酸は中性脂肪が分解してできる油性成分ですが、私たちの皮膚表面を覆っている皮脂成分の1/3程度を占めている成分です。
③固体汚れ
固体汚れは水にも有機溶剤にも溶けない汚れを意味しますが、性状分類ではさらに表面が水に濡れやすい親水性汚れと表面が水にぬれにくい疎水性汚れに分けられます。有機溶剤では固体汚れは除去が難しいのですが、とくに親水性汚れは有機溶剤での非水系洗浄では効果が低くなります。
もう一つ重要なことは固体汚れの付着状態です。固体汚れが粒子状である場合は固体粒子汚れとも表現されます。これは洗浄液中の界面活性剤やアルカリによって除去作用が促進されます。粒子状以外のもう一つの付着形態は堆積型で、主として水中の溶解成分が析出してできるスケール(垢)などです。被洗物表面が完全に堆積物で覆われて、界面活性剤やアルカリ剤が内側まで浸透できないため、外側から溶解していくか、強力な機械力で削り取っていくといった方法で除去することになります。
汚れの分類
項目 | 洗浄性 | 汚れ種類 | 解説 |
水溶性汚れ | ○ | 食塩、砂糖 | 水系洗浄では除去自体は問題なし。すすぎの効果を上げることが求められる。非水系洗浄では除去が非常に困難。 |
△ | 色素、タンパク質 | 加温、弱アルカリ・弱酸・弱い酸化剤等の処理で水に可溶になる汚れ。 | |
油性汚れ | ○ | 脂肪酸 | 弱アルカリ液や界面活性剤水溶液で除去可能。無極性の溶剤には溶けにくい。 |
△ | 動植物油脂 | 非水系の有機溶剤洗浄で除去が容易。界面活性剤水溶液での分離型洗浄も可能だが完全除去は難しい。
強アルカリ液での処理で洗浄効果が大に。液体状汚れでもエイジングで固体状に変化。 |
|
▲ | 鉱油 | 粘度の低いものは水スプレー洗浄でもかなり落ちる。
粘度が高いものは水系洗浄では除去困難。非水系洗浄か高濃度の界面活性剤処理が有効。 |
|
固体汚れ | ○ | 泥 | 弱アルカリ・界面活性剤液での洗浄で分敵性大。
酸・還元剤・キレート剤等の処理も有効。機械力が必要 |
△ | 焦げ | 界面活性剤水溶液が必要。機械力が必要。活性剤濃度の影響が大。アルカリ効果はそれほどない。 |
洗浄 汚れの特性要因図
被洗物と汚れの被洗物側の要素と、洗浄剤、洗浄機器、洗浄条件などの洗浄操作側の要素によって汚れの除去率、被洗物損傷度、環境影響や経済性などの洗浄性が決定されます。
洗浄剤の種類
食品衛生の確保を目的に使用される洗浄剤には、下記の表に示したように、手洗いに使用する石けん、食器類や野菜・果物に使用する中性洗剤、重度の油汚れに使用するアルカリ性洗浄剤、洗浄と同時に殺菌効果が得られる洗浄除菌剤など多くの種類があります。
分類 | 原料 | 種類 |
中性洗剤 | 陰イオン(非イオン)界面活性剤
研磨剤 食品添加物系界面活性剤 |
台所用合成洗剤・油脂汚れ用洗
浄剤(液体)クレンザー 食器洗浄機用リンス剤 |
アルカリ性洗剤 | 水酸化ナトリウム(カリウム)
水溶性有機溶剤 |
自動食器洗浄機用洗浄剤
レンジ用洗浄剤 |
酸性洗浄剤 | 無機酸、有機酸 | スケール(膠着物)除去剤 |
酵素系洗浄剤 | 無機酸、有機酸 | 予備浸漬用洗浄剤
血液(タンパク質)汚れ用洗浄剤 |
石鹸 | ヤシ油脂肪酸カリウム | 手洗い石けん(医薬部外品) |
界面活性剤
多くの洗浄剤には界面活性剤が配合されており、その他の成分として使用目的に応じ、アルカリ性物質、酸性物質、溶剤、研磨剤、金属イオン封鎖剤などを組み合わせて製剤化されています。
界面活性剤とは水と油(普通は混ざらない)を混ざりやすくするためのものです。
水になじみやすい親水基と油になじみやすい親油基という相反する2つの性質をもつ物質です。
界面活性剤を入れると界面張力が下がり、繊維の表面と水がなじみやすくなるこれを浸透作用と呼びます。
次に界面活性剤の親油基が油の粒子を取り囲み、親水基が外側に並ぶため、水と油が均一に混ざり合い白濁します、これを乳化作用といいます。
最期に油汚れは界面活性剤の分子に取り囲まれて、水中に分散されます、これを分散作用と呼びます。
中性洗剤とは
中性洗剤はpH6以上~8以下の洗剤で、アルカリ性や酸性の洗剤と比較すると、安全性の高い洗剤です。
中性洗剤は基本的には界面活性剤の力で洗浄を行ないます。 中性洗剤がもっとも一般的に使われているのが、食品由来の油、デンプン、タンパク質の汚れのついた調理器具(食器、包丁、まな板など)の洗浄です。
台所用洗剤として用いられており、洗浄効果が高く、泡立ちがよいものが好まれます。そのため主成分としては洗浄力が強く、泡立ちがよいという特徴を持つ陰イオン界面活性剤である場合が多いのです。さらに、陰イオン界面活性剤の効果を増強させたり、皮膚に対する影響を考慮して、非イオン界面活性剤や両性界面活性剤を配合したものもあります。
果物、野菜用中性洗剤
調理器具の洗浄によく使われている中性洗剤ですが、土などの汚れがついた食品の洗浄にも使われています。
食品を取り扱う施設(調理場など)ではごく当たり前に、食品の洗浄は行なわれています。食品の洗浄に用いることのできる中性洗剤はラベルに「果物・野菜の洗浄」との表記があり、洗浄方法が記載されています。この洗浄方法については、「食品衛生法」で規定されています。
中性洗剤は他の分野でも幅広く使われています。たとえば、お風呂の洗剤やおしゃれ着洗いの洗濯用洗剤などです。これらの用途では、泡切れのよいものや泡立たないものが好まれるため、非イオン界面活性剤を主成分としたものが多くなっています。
このように中性洗剤は、用途や対象物に適した界面活性剤を組み合わせて作られています。逆に言うと、用途外で用いた場合には十分な効果を発揮しない可能性があるので、ラペルの記載にしたがって使用してください。
中性洗剤の特徴
使用目的 | 種類と主成分 | 対象物 | 特徴、注意点 |
食品由来の汚れ(油、デンプン、タンパク質)全般、土などの食品についた汚れ | 中性洗剤
〈主成分〉 陰イオン界面活性剤 |
調理器具
野菜(必要に応じて) |
特徴〉
・界面活性剤の力で洗浄する ・中性なので安全性は高い 〈注意点〉 ・殺菌を目的としたものではない ・中性洗剤と同じ用法で食器洗い用石鹸を用いることがある。使い方は中性洗剤と同じ。ただし、石鹸は中性ではなく、弱アルカリ性 |
アルカリ性洗剤とは
アルカリ洗浄剤とはpHが8を超えた洗浄剤のことを言います。
主成分は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、あるいは炭酸ナトリウムなどのアルカリ塩類です。
さらに、効果を増強するために界面活性剤と組み合わせたり、有機溶剤と組み合わせたりします。
アルカリの主な特徴として、油やタンパク質に作用しこれらを溶かす効果があります。そのため中性洗剤では対応できないほどのひどい油汚れや焦げついた汚れ、とくにひどいタンパク汚れなどを落とすことを目的として、アルカリ洗浄剤が用いられます。
重曹(クエン酸)はふくらし粉や胃薬として昔からよく使われており弱アルカリ性です。研磨作用、消臭作用があり、油汚れもよく落としてくれるため、万能洗剤としても注目されています。重曹はもともと人間の体内にも存在している物質なので、安全に安心して使用できます。
アルカリは、油脂の成分である脂肪酸と反応して一種の石鹸(脂肪酸)を作ります。そして、石鹸になった脂肪酸は、今度はほかの汚れを洗い流すのに力を貸してくれます。アルカリ剤が汚れを石鹸に変える。
その石鹸がアルカリ剤と協力してほかの汚れを落とす。このふたつの仕組みでアルカリ剤は油や皮脂汚れを落とすのです。
●アルカリ洗浄剤十界面活性剤 使用
食品を取り扱う施設(調理場や食品工場など)で、油やタンパク質汚れがこびりついた床や壁の洗浄に用いられます。
この際には界面活性剤が配合されたタイプのアルカリ洗浄剤が使用され
、発泡洗浄機などを用いて発泡洗浄するのが一般的です。
●アルカリ洗浄剤十有機溶剤配合 使用
次に、レンジや加熱調理機器(フライヤー、スチームコンペクションオーブンなど)に用います。これらについた汚れは非常に強固であるため、有機溶剤が配合されたタイプのアルカリ洗浄剤が主流です。
レンジであればスプレーしてしばらく放置してから拭き取ります。
また、スチームコンペクションオーブンには、50~60℃位に温度を
上げた状態で用いたりもします。
●アルカリ洗浄剤 食器洗浄機用
アルカリ洗浄剤がよく使われる用途として、業務用の食器洗浄機用が
あります。
食器洗浄機で使用する場合、泡立ってしまうと、洗浄効果が十分に得られないばかりか、洗浄機の故障にもつながります。
そのため界面活性剤を含まない、あるいはあまり泡立だない界面活性剤
を配合したアルカリ洗浄剤が用いられます。
このようにアルカリ洗浄剤も幅広い用途で用いられていますが洗浄力の強力さゆえに、手についたり、目に入ったりすると非常に危険です。
使用する際には手袋や保護メガネを着用するようにしましょう。
アルカリ性洗剤の特徴
使用目的 | 種類と主成分 | 対象物 | 特徴、注意点 |
とくにひどい油汚れ、焦げついた汚れ
とくにひどいタンパク質汚れ |
アルカリ洗浄剤
〈主成分〉水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ塩類 |
床、壁
加熱調理機器 食器洗浄機で洗う食器 |
特徴
中性洗剤で対応できない ひどい汚れ、とくに油や タンパク質の汚れをアルカリの力で溶かすことが できる 注意点 ・手袋を必ず使用し、また 目の保護などの注意が必要・食器洗浄機に使う場合は必ず専用の洗浄剤を使うこと |
酸性洗浄剤とは
●食洗機・トイレ用洗浄剤
酸性洗浄剤とは、pHが6未満の洗浄剤のことを言います。酸性洗浄剤の主成分は、塩酸や硝酸などの無機酸、あるいはクエン酸やリンゴ酸などの有機酸です。
酸性洗浄剤は、水分中のミネラル由来のカルシウム塩やマグネシウム塩など(スケールと呼ばれる)、アルカリ洗浄剤では落とすことのできない無機系の汚れに対して非常に有効です。
酸性洗浄剤の用途は業務用の食器洗浄機に付着したスケール除去に酸性洗浄剤が用いられています。食器洗浄機は高温で使用するため、水道水に含まれるミネラル由来成分がスケールとなって内部に蓄積します。これが食器洗浄機の洗浄効果を低下させる原因になります。そこで酸性洗浄剤を使用し、スケールを除去します。
飲料(牛乳など)を取り扱う大きな工場では、製造ラインを分解しないで内部を洗浄するCIP洗浄(定置洗浄)の洗浄剤として使用されています。製造ラインに付着した乳石のような無機汚れの除去を目的としており、主に硝酸やリン酸などの無機酸が用いられています。
同じく無機系汚れである尿石(人の尿に含まれるカルシウム塩が原因でできる)を除去するトイレクリーナーとしても酸性洗浄剤が用いられており、この用途においては多くは塩酸が主成分となっています。
●酸性洗浄剤は「混ぜるな!危険」
このように酸性洗浄剤は、無機系汚れの除去に幅広く用いられています。しかし、これらとはまったく異なる用途で酸性洗浄剤が用いられている場面があります。それは野菜の殺菌です。フマル酸や酢酸、乳酸といった酸は野菜の殺菌に有効であり、とくに大腸菌群に対して高い殺菌効果を有しています。
しかし酸性洗浄剤を用いる際には、とくに注意すべきことがあります。酸性洗浄剤には、「混ぜるな!危険」という表示がされているように、塩素系の殺菌剤とまぜると塩素ガスが発生し、大変危険です。絶対に他の洗剤とまぜて使わないように注意してください。
酸性洗浄剤の特徴
使用目的 | 種類と主成分 | 対象物 | 特徴、注意点 |
水分中のミネラル由来の汚れ(スケールとも呼ばれる)除去 | 酸性洗浄剤
〈主成分〉 リンゴ酸やクエン酸などの有機酸、あるいは塩酸や硝酸などの無機酸 |
食器洗浄機の内部の洗浄 | 〈特徴〉
無機系の汚れに非常に有効 〈注意点〉 次亜塩素酸ナトリウム溶 液とまぜると塩素ガスを 発生するので危険 |
酵素系洗浄剤とは
- デンプン・脂質・タンパク質を分解する
酵素とは生物が生きていくために必要な、体内で働くタンパク質です。多くの動物はだ液に含まれるデンプン分解酵素(アミラーゼなど)、胃液に含まれる脂質分解酵素、タンパク質分解酵素(リパーゼ、プロテアーゼなど)によって、食べたものが体に吸収されやすい形に分解されます。
酵素はデンプン、タンパク質、脂質を非常に少ないエネルギーで効率よく分解できるという特徴があります、 この酵素を洗浄剤に使用して、強い洗浄力を持たせているのが「酵素系洗浄剤」であり、洗濯用洗浄剤以外としては、医療機器の洗浄剤などで利用されています。
酵素系洗浄剤と界面活性剤との違い
酵素は界面活性剤と異なる様々な特徴を持っています。
まず酵素は、基本的に分解する対象物が決まっており。
たとえば、プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)であればタンパク質を、アミラーゼ(デンプン分解酵素)であればデンプンのみを分解します。
また、酵素は生物が作るため、一般的に体温に近い温度付近でもっとも効果を発揮し、長時間汚れと接触させる必要があります。ただし、温度や液性に関しては、技術の進展により洗濯用洗剤でもっとも多い弱アルカリ性で効果を発揮する酵素、冬場の冷たい水でも効果を発揮する酵素などが開発されており、より効果的に酵素が使用できるようになりました。
食品衛生関連の洗浄剤の場合は、「長時間汚れと接触させる必要がある」のが欠点となってしまうこと、「価格が高くなる」という問題もあり、界面活性剤を主とした洗浄剤のほうが多く使用されています。しかし、界面活性剤では汚れが取り除きにくいタンパク質汚れ、デンプン汚れに対して、一定の時間を置いて洗浄する方法(浸漬、発泡洗浄)を利用して、酵素の利点を活かすことができる、特定の汚れに特化した洗浄剤も販売されています。
石鹸とは
古代ローマ時代、サポー(Sapo)という丘の神殿で羊を焼いて神に供える際に偶然に発見された。したたり落ちた羊の脂肪が木の灰(アルカリ性)に混ざって石鹸ができた、英語で石鹸を意味するソープ(soap)は、この丘の名前から取ったといわれています。
石鹸の「鹸」は灰汁を麦粉で固めたモノを意味し鹸性があり(鹸性=アルカリ性)デンプン・脂質・タンパク質を分解する作用があります。
石鹸にはほかの界面活性剤と大きく違う特性がいくつかあります。それらに共通するのは「ある条件を与えると界面活性作用(油脂と水を混ぜ合わせる力)が簡単に失われる」ということ。
石鹸の特性
①濃度が薄いと界面活性作用を失くす!
石鹸が洗浄力を発揮するためには、ある程度以上の濃度が必要(臨界ミセル濃度)。そしてその濃度を下回ると、汚れを捕まえる力を失ってしまいます。これを「界面活性作用を失う」「失活する」と表現します。
②酸に弱い
石鹸はアルカリ性ですから、酸性の物質に出会うと中和されて洗浄力がなくなります。食器についた汚れは大抵が酸性ですが特にポン酢や酢の物の残り汁、ケチャップ、ソース、マヨネーズ、果汁などの酸味のあるものは石鹸の大敵。
食器を洗う前に必ず落としておきましょう。
③ミネラルに弱い
石鹸は、このミネラル分と出会うと水に溶けない金属石鹸、俗に言う「石鹸カス」に変化してしまいます。金属石鹸は肌にひきしまるような爽快感を与えたり、髪の毛にツヤを与えたりと良い点もありますが、髪にたくさん残るとゴワついたり、きしみの原因になったりします。洗濯だと、色の濃い衣類を白く汚すこともあります。
④冷水では溶けにくい
石鹸の原料であり、洗浄力の元となっている脂肪酸という物質は20度以下の冷水には溶けにくい性質があります。40~50度くらいないと溶けない脂肪酸もあります。石鹸が溶けなければ洗浄力も十分に出ません。ですから、特に洗濯や皿洗いでは水温20度以上を保つよう気をつけます。
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クエン酸が弱アルカリ性とありましたが、弱酸性ではないでしょうか?