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稲盛和夫     

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 稲盛和夫      DDI(第二電電)創始者、京セラ名誉会長

日本の実業家。京セラ・第二電電(現・KDDI)創業者。公益財団法人 稲盛財団理事長。日本航空名誉会長。

1.リスクの伴う通信事業に乗りだす

一昔前、移動体通信といえば自動車備えつけの高価 な電話で、庶民には高嶺の花。
NTTの独壇場だった通信事業の電話の料金 は、上がることはあっても、
下がることは考えられない時代でした。
ところが、民営化による企業の新規参入としのぎを削る競争で、電話料金
は下がり、手の中にすっぽりおさまるほどコンパクトになった携帯電話
も、女子高生が持てるまで格安になりました。その目を見張る普及には、
実は「仕掛け人」がいたのです。

年商4兆円をゆうに超えていたNTT-誰も挑もうとはしなかった巨大な
風車に、果敢に立ち向かっていった現代のドン・キホーテ。それが、
ご存知DDI(第二電電)創始者、京セラ社長・稲盛和夫だったのです。

裸一貫、セラミックで叩き上げ、頭角を現した稲盛は、日本の通信コ
ストが、アメリカなど諸外国に比べて格段に高いことを、案じていまし
た。せっかく民営化されることになっても、通信事業には莫大な投資と
リスクが伴うため、名乗りを上げる企業はなかなか現れません。稲盛は
考えました。たとえ大企業が参入しても、国民のために骨身を削る厳し
い戦いをしてまで、電話料金を安くしてくれるだろうか、と。利権を得
るだけで終わるかもしれない。これは、世のため人のために役立とうと
いう経営哲学を持つうちのような企業が、乗り出すべきではないか。

もちろん、稲盛にとって、まるっきりの異業種でした。通信技術も、
通信事業の経験もなく、通信網や代理店網も、ゼロからの構築、初期投
資だけで少なくとも1000億円はかかると、読んでいました。稲盛の
苦悶と、眠れぬ夜が続きました。

「失敗すればそのすべてを失う。しかし、誰かがやらねばならない。
だが何よりもまず、お前に私心はないのか?世間に自分を大きく見せた
いという、単なるスタンドプレーではないか?」

稲盛がそこまで突き詰めていったのは、経営資源の中でもっとも重要
なのは人、さらにいうなら、人の心のあり方が仕事や人生を決定すると
いう、揺るぎ無い信念を持っていたからでした。

2.心のあり方で人生は変わる

彼は、結核を患ったことがありました。食糧難で、誰もが飢えていた
第2次世界大戦の戦時下。13歳の少年は、不治の病の上に栄養失調で、
死に脅えて過ごす毎日を送っていました。そんなある日、近所の奥さん
が、「ためになるから」と、某宗教の本を貸してくれたのです。そこに
は、こう書かれていました。

「誰でも災難にあったというような時には、外から災難というとんで
もない乱暴なやつがやってきて、自分にはなんの罪もないのにぶつかっ
たと思うが、その災難と自分の心の状態が相似性をもっていて、互いに
類をもって集まるようになる。自分の心が呼ばないものは、なにひとつ
この世で自分に近づいてくることはできない。」

「確信は、゛念の世界゛における運命のひな形で、この世の出来事は
すべて、このひな形のとおりにでてくる。」

読み進めるうちに、結核になったのは、自分に結核を引き寄せる心の
傾きがあったからではないかと、思うようになりました。ではいたずら
に恐れず、明るい心持ちでいようと努めて終戦を迎え、気づいてみると、
いつのまにか治っていたのです。目に見えない心のあり方が、目に見え
る現象となって現れてくる。つまり、「心のあり方で人生は変わる。」
この経験が、人間の心について真剣に考えるきっかけを、稲盛に与えた
のでした。

3.私利私欲を超え 誇りに思うものにする

その後、故あって職場の上司と衝突し、7人の仲間とゼロから京セラ
を創立、「我々は私利私欲で結束するのではない。世のため、人のため
になることを成し遂げるのだ。」と高い志を掲げて、一流企業として発
展させていきました。

稲盛は、自分の、そして社員の心のあり方を高める努力を続け、日々
の仕事に一丸となって打ち込んだことが、成功をもたらしたといいます。
また、事業の目的は私欲を超え、全員が心から受け入れ誇りに思うもの
にすることで、初めて会社は経営者を中心として一つにまとまり、燃え
る集団になることができる、とも。

DDI創業時、自身に私心がないことを確信した上で、稲盛は全社員に、
「我々は、日本国民のため、100年に一度あるかないかという大きなチ
ャンスを与えられている。たった一回しかない人生を、意義あるものに
しようじゃないか。」と熱く訴え続けました。

意気に燃える社員の努力の結果、圧倒的に不利といわれた条件をはね
返し、電話料金値下げという時代の流れを作りあげたのです。

「世の中が不況のときや、悪い実績が続いたりすると、このままでは
倒産してしまうのではないかという否定的なことを思い、それを気の病
む人がいる。しかし、そのようなことが心を占めていると、その心が本
当にその否定的なものを招き寄せてしまう。すべて人生は心に描いたと
うりになる。どのような厳しい状況に置かれようと、否定的なことを心
に浮かべるべきではない。まじめに前向きに努力していけば決して悪い
ことがあろうはずがないと確信して、常に堂々と明るく進まなければな
らない。」

 

『私評』

稲盛和夫氏は現代版『松下幸之助』である。
企業活動の理念を精神的価値から、哲学的面から考え企業活動に反映させ実践している。

現在の日本、世界の状況に適用した企業造りを目指している、やはり創業者が生存して現場の意見を取入れることのできる企業は強い。

生き方―人間として一番大切なこと
稲盛和夫 (著)

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