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食品工場 洗浄マニュアル~洗浄技術~

 

洗浄方法

 食器の洗浄:

食品を盛り付け提供した各種の食器類には、使用後、食品残さが付着しています。そのまま放置しておくと細菌が増殖します。また、汚れがこびりついてしまうと洗浄しにくくなります。

消毒効果を高めるためには、まず食器・器具は十分に洗浄し、食品残渣を残さないようにします。そのために、水槽は3槽に分けることが望まれます。

第1槽一下洗い(食品残さの除去)

第2槽一洗剤洗い

(洗浄効果を高めるために40℃位の微温水がよい)

第3槽一仕上げ洗い(流水で十分に洗い落とす)

食器の具体的洗浄方法

①洗い場に下げられた食器類は、まず残っている固形物の生ごみを落とす。

②流水(給湯器がある場合は40℃位の微温水がよい)で洗い流す。

③洗浄剤を用いて油成分を除去

④流水または微温水ですすぎ洗いする。

食器類の洗浄方法

食器類の洗浄方法

 調理器具の洗浄:

鮮魚介類、生肉、生野菜などは細菌等に汚染されている確率が高いので、これらの食材を処理した後の調理器具類(まな板、包丁、ザル等)は必ず洗浄・消毒して使用します。

【基本の洗浄方法】

①食品残渣を洗い流す:
水道の水(40℃程度の微温水が望ましい)で3回水洗いする。
 
②脂肪分を除去:
スポンジタワシに中性洗剤または弱アルカリ性洗剤をつけ十分洗浄する。
 
③仕上げ:水道の水(40℃程度の微温水が望ましい)でよく洗剤を洗い流す。

まな板の洗浄方法

①食品残渣を取り除く。  
②シンクにはった温水に洗剤を入れ、スポンジで傷目にそって円をかくようにまんべんなく洗浄する。  
 ※裏面、側面も洗浄すること。  
③流水で十分すすぐ。  
④ペーパータオルで水気を拭き取る。  
⑤まな板消毒保管庫で保管する。

まな板の洗浄方法

まな板の洗浄方法 参考サイト:学校給食での洗浄マニュアル(文部科学省サイト)

包丁の洗浄方法

①食品残渣を取り除く。
 ②洗剤などを含ませたスポンジで、まんべんなく洗浄する。
  ※柄の部分、柄と刃のつなぎ目は、特に念入りに洗浄する。
 ③流水で十分すすぐ。
 ④ペーパータオルで水気を拭き取る。
 ⑤包丁消毒保管庫で保管する。

包丁の洗浄方法

包丁の洗浄方法  参考サイト:学校給食での洗浄マニュアル(文部科学省サイト)

ザル、カゴ、その他の容器の洗浄方法

①食品残渣を取り除き、流水で流す。
②シンクに温水をはり、洗剤を入れて、スポンジでまんべんなくこすり洗う。
 ※網目の部分、縁の裏側の洗い残しがないよう、念入りに洗浄する。  
③流水で十分すすぐ。  
④水気を十分に切った後、作業区分ごとの熱風消毒保管庫で乾燥保管する。

ザル、カゴ、その他の容器の洗浄方法

ザル、カゴ、その他の容器の洗浄方法  参考サイト:学校給食での洗浄マニュアル(文部科学省サイト)

調理機器の洗浄方法

フードスライサー、フードカッター、ミキサー等の調理機器の洗浄方法は下記の手順で行う。

①機械本体・部品を分解する。 なお、分解した部品は床にじか置きしない。
②水道の水(40℃程度の微温水が望ましい)で3回水洗いする。
③スポンジタワシに中性洗剤または弱アルカリ性洗剤をつけて十分洗浄する。
④水道の水(40℃程度の微温水が望ましい)でよく洗剤を洗い流す

注意事項:
・機器メーカーごとに清掃、洗浄方法、メンテナンスが異なるので、取扱い説明書をよく確認。
・電気基盤などに水をかけると、故障の原因となるので注意。
・洗浄剤・消毒剤は適切な濃度、使用量、使用方法を守って、機械、機器の材質や形状によって使い分ける。
・刃がある機械の取扱いは怪我をしないように十分注意。 

 *参考サイト:学校給食での洗浄マニュアル(文部科学省サイト)

調理機器の洗浄方法

調理機器の洗浄方法

 

フードカッター、野菜切り機の洗浄

フードカッター(フードプロセッサー)、野菜切り機といった調理機械は、中に食材のかすが残り汚染の原因となる場合があります。最低1日1回以上、機械を取り外し、パーツに解体できるものは分解して、中まで洗浄し消毒を行います。機械の内部を十分に乾燥させることも大切です。
大切なのは「使ったらすぐに洗う」ということのようです。使用後にそのままの状態で放置してしまうと、容器に残っていた素材のかけらなどが乾燥してこびりつきます。

①分解・・取り外せる部分は外す
②残渣除去・・スポンジやブラシで部品を洗い、
残渣を除去。
③洗浄・・洗剤を使用して洗浄
④仕上げ、乾燥・・水道水ですすぐ、キッチンペーパー
で余分な水分を吸収。

フードカッター、野菜切り機の洗浄

フードカッター、野菜切り機の洗浄

 

電子レンジの洗浄

使用頻度の高い電子レンジ内部も汚れてきます。
レンジ内の壁面に付着した食品残さが調理中の食品に混入する事例があります。

電子レンジのにおいや水垢汚れには、クエン酸お酢を使って落とします。クエン酸・お酢は酸性のため、アルカリ性の汚れである水垢やアンモニアの汚れに効き、除菌・消臭効果があるため臭いに効きます。頑固な焦げ付き汚れには重曹が良いです。重曹はアルカリ性のため、酸性の汚れである油汚れや焦げ付きの汚れを中和して落とすことができます。

お酢・クエン酸を使った掃除方法
「耐熱容器」の中に「酢」を入れ、水(150ml)で4〜5倍に薄めます。
レンジで2〜3分温めます。十分に蒸気が出てきたら電子レンジでの温め完了。
そのまま扉をあけずに30〜60分ほど放置」すると、酢を含んだ蒸気が電子レンジ全体に広がり汚れのこびりつきがはがれやすくなる、重曹での掃除も同じように方法で洗浄ができます、最後に清潔な布で拭き取ります。

電子レンジの洗浄

電子レンジの洗浄

 

調理場の洗浄

食品を調理場内から搬出した後に、洗浄を始めます。

施設内の調理場の洗浄に使用する洗浄剤は、使用する用途や使用する部分の材質に応じて「中性洗剤」、「アルカリ洗浄剤」、「洗浄除菌剤」などを使い分けます。
・固定式の調理台、タンク、調理機器などの下、壁との境界面は、洗浄が不十分になりやすいので注意しましよう。

・施設の内壁のうち床面から1mまでの部分と手指が触れる場所は1日に1回以上、施設の天井および内壁のうち1m以上の高い部分についてはみずから頻度を定め洗浄し、必要に応じて消毒を行います。

調理場の洗浄

調理場の洗浄

 

注意事項:
・洗浄に使用する用具(モップーブラシなど)は、汚染・非汚染作業区域ごとにそれぞれ専用のものを揃えます。

・「アルカリ洗浄剤」、「次亜塩素酸ナトリウム溶液」等を使用する際は、手荒れ防止用の手袋を使用します。

・モップーブラシなどは、作業後に洗浄・消毒して乾燥させ、常に清潔な状態にします。

モップ,ブラシ

モップ,ブラシ

 

 

洗浄用具、装置

 モップ:

木綿や化学繊維の糸で作られたモップであり、水や洗浄液で濡らして使う。

モップの種類:

1)フラットモップ

平型のモップで先端にシートを取り付けて使用します。

床に付着したホコリや毛髪など細かい除じん清掃に効果的です。

フラットモップ

フラットモップ

 

2)水拭きモップ

床の汚れを落としたりスポット吸水をするのに最適です。

使用後はスクイーザーで絞り、繰り返し使用できます。

水拭きモップ

水拭きモップ

 

 

 

3化学モップ

化学モップ専用の再生液やスプレーがあります。

モップ糸をバケツなどでもみ洗い後、乾いたモップに吹き

つければ吸着力が再生します。

化学モップ

化学モップ

 

 掃除用ブラシ:

多数の繊維や針金などを生やした、棒状の清掃道具。

掃除用ブラシの種類:

1)デッキブラシ
床面をこすって清掃する場合に使う、水を使いながら洗い流せる
場合に有効に使える。 毛はナイロンの他にシダ・ワイヤーなど
があり場所によって使い分ける。

デッキブラシ

デッキブラシ

 

2)ワイヤーブラシ(金属ブラシ)
ガスレンジのこびり付いた油汚れや固着した汚れに対して使用。
金属のブラシなので特殊な汚れを落とすときのみに使用される。

ワイヤーブラシ

ワイヤーブラシ

 

3)洗車ブラシ
洗剤と水を使った広範囲な洗浄を行うときに使い勝手がよい。
壁などに洗剤を塗布するために使用することもある。
浴室のカビ取りを行う際に、カビ取り剤を塗布するのに使うと効率
がよい。 

洗車ブラシ

洗車ブラシ

 

 束子(たわし):

たわし(束子)は、洗浄のために用いる繊維を固めたブラシに似た道具のことである。繊維の部分を対象物にこすり付けることで汚れを落とす。

束子の種類:

1)亀の子たわし
ヤシの繊維を、ねじった針金に挟んで固定し、毛先が揃うように卵円形に成型したもの。ヤシの繊維は硬く、対象物を傷つけやすいため、主に金属製品や陶器などに用いられる。

カメの子束子

カメの子束子

 

2)スポンジたわし
発泡ポリウレタンをそのまま用いたもの。吸水性に富み、洗剤を含ませることで洗浄が容易にできる。食器などの油汚れの洗浄に効果を発揮する。スポンジ部分に洗浄剤あるいは砥粒(研磨剤)を含ませた製品もある。

スポンジ束子

スポンジ束子

3)金属たわし
金属(鉄、ステンレス、真鍮)の細い線を丸めたもの。
対象物の表面を削り落とすため、非常に洗浄力が高い。金属製品のコゲつきや錆落としに用いられる。鉄の非常に細い線を綿状に固めた物はスチールウールと呼ばれる。

金属ウール束子

金属ウール束子

 

高圧洗浄機:

高圧洗浄機(こうあつせんじょうき)は、電気式ガソリンエンジン式で高圧の水を噴射する洗浄機。冷水のものと温水のものがある。

被洗物に対して水を噴射して洗浄を行うもので、0.2MPa(≒2kgf/cm2)程度がシャワー洗浄機、2MPa以下がスプレー洗浄機、それ以上をジェット洗浄機として区別します。その洗浄作用には水圧による機械的な剥離作用と水による溶解作用が働きますが、水圧が高くなるほど機械的な剥離作用の割合が大きくなります。

シャワー洗浄機は一般にすすぎ操作に用いられます。空気を混入して水圧を高め、節水するとともに汚れの除去力を高めるシャワーノズルなどもあります。ただし、溶解型汚れに対しては水量が汚れ除去性に直結するので、空気混入は効き目がありません。

スプレー洗浄機は業務用食器洗浄機に用いられる程度の水圧で、付着力が弱くなった汚れを取り除く力があります。

 スプレー洗浄機より水圧の高いものはジェット洗浄機とよばれますが、非常に範囲が広いので多様な用途があります。5MPa程度の水圧は家庭用の汎用ジェット洗浄機に採用されており、洗車や建物の壁面洗浄、エアコンのフィルター洗浄などに用いられます。
 それ以上の水圧になると、ペンキを剥離する作用、塗装道路等の表面を薄く削り取る作用などがあります。ペンキ塗装面上の落書きの処理では落書き素材に有効な薬剤で前処理を行った後、ペンキが剥離しないレベルの高圧水で処理する方法があります。もっと高圧になれば金属等の切断にも用いられますが、これは洗浄の範囲を超えています。

食品加工・食品製造業様向けの食品工場用の高圧洗浄機ケルヒャー等のメーカーから販売されています。

食品工場用高圧洗浄機

食品工場用高圧洗浄機

蒸気洗浄機:

蒸気洗浄には有機溶剤を用いるタイプと水蒸気を用いるタイプがあります。有機溶剤型は工業洗浄で利用され,蒸発させた後に温度低下で凝集する液体溶剤を用いる洗浄です。

水蒸気を利用する洗浄はスチーム洗浄ともよばれ,産業分野一家庭分野の両方で利用されています。 

溶剤型の蒸気洗浄の特徴

溶剤型の蒸気洗浄は、揮発性の高い有機溶剤を用います。引火性のある溶剤の場合、防爆設備が必要になります。蒸留した溶剤で洗浄するのと同じ原理になるので、高精度の処理が可能になります。ただし、蒸気を凝集させるだけの熱容量があるワークに対してのみ用いることができます。

これは洗浄対象が少し大きめの金属類などに限られるということを意味します。熱容量の小さな高分子類や小型の部品類などは蒸気を凝集させることができないので、蒸気洗浄には向いていません。

溶剤型蒸気洗浄機

溶剤型蒸気洗浄機

 

スチーム洗浄の特徴
水蒸気を利用する蒸気洗浄は100℃以上の比較的高温で処理するという点が特徴です。この温度では多くの物質が溶解、または軟化し、付着力が小さくなります。また大量の水蒸気を発生させるため、その勢いが激しく、汚れをはぎ取る機械力も備わっています。ただし、加熱により水蒸気を発生させる機構なので、洗剤等を使用しない代わりにエネルギー消費が非常に激しい点に注意しなければなりません。

蒸気(スチーム)洗浄機

蒸気(スチーム)洗浄機

超音波洗浄機:

超音波洗浄は用いる周波数によって性質が大きく異なってきます。

低周波ではキャビテーションによる強力な洗浄力が得られます、低い音波が「密→疎」に移行する領域で真空気泡(キャビテーション:cavitation)が生成し、それが固体基質に接触して大気圧に戻る、消滅する際に大きな衝撃力が生じます。
低周波超音波洗浄はこのキャビテーションを利用する強力な洗浄です。

1MHz程度の超音波では液体分子の加速度運動で、均一で穏やかな洗浄作用が得られ、超精密洗浄などに利用されます。

 低周波洗浄では洗浄槽内での音波のムラに注意が必要です。アルミ箔を洗浄槽に浸し、その損傷の様子から超音波のムラ(音圧分布)が確認できます。

真空気泡(キャビテーション:cavitation)

真空気泡(キャビテーション:cavitation)

 

洗浄の評価、測定

細菌など微生物は肉眼で見ることができません。たとえ見た目がきれいであったとしても多数の細菌が残っていることがあります。繰り返し使う食器類に洗い残した食品残さがあると、そこに細菌などが付着し増殖します。洗浄と消毒が正しく実施され、清浄度が確保されているか否かについては科学的手法により検証できます。

食器類の清浄度を見るための簡易検査キットは色々ありますが、高度な技術を必要としないため、基礎的な知識を習得した人であれば誰でも同じように検査することができます。目的により適した方法を選びましよう。

 検査箇所:

特に衛生状態を管理する必要のあるものを検査する。たとえば

 ・まな板、包丁など高い清浄度が必要なところ。

 ・ミキサー、スライサーの刃など洗いにくいところ。

 ・手指など衛生教育において重要になるところ。

洗浄検査方法の種類:

清浄度の簡易検査には、細菌を見るスタンプ法とスタンプスプレッド法、汚れを見るATPふき取り法、目視判定などがあります。いずれも清潔を見るものです。

スタンプ法

 スタンプそのものが培地で作られており、検査対象物の表面に軽く押しつけた後、培養する方法です。

スタンプ法

スタンプ法

スタンプスプレッド法

 検査対象物の表面を合成樹脂製のスポンジ状のスプレッドでスタンプし、培地に塗りつけた後、培養する方法です。

スタンプスプレッド法

スタンプスプレッド法

 

ATPふき取り法

ふき取り棒で検体をふき取り、試薬と反応させた後、ATP測定機器で調べます。培養によらない、簡易で迅速性のある検査方法です。

*ATPとは:

生物の細胞内にあるATP(アデノシン三リン酸)を酵素などを用いて発光させ、その発光量(Relative Light Unit;RLU)を測定し、清浄度する方法のことである。

つまり、蛍の光のように細菌等を発光させてその光量を検知して電気量に変換した計測器がATP測定機器である。

ATP測定器

ATP測定器

 

目視検査法

試薬を使って食器などの洗い残しを目で見る方法です。

 次の3つの検査は、食器に残ったデンプン、タンパク質、脂肪の汚れを、呈色反応試薬を使って目視判定して検査する

方法です。

①デンプンの残留検査

 残留デンプン検出用試薬を食器の内側全面にいきわたるように塗布し、その後軽く水洗いすると、洗い残しのデンプンは青紫色になります。

②タンパク質の残留検査

 残留タンパク検出試薬スプレーを約20㎝離したところから食器にスプレーした後に水ですすぐと、洗い残したタンパク質に赤色素が沈着し赤く残ります。

③脂肪の残留検査

 残留脂肪検出試薬スプレーを約20㎝離したところから食器にスプレーした後に水ですすぐと、洗い残した脂肪は残留量が多いほど濃く赤色素が残ります。

呈色反応試薬

呈色反応試薬

清浄度検査試薬セット

清浄度検査試薬セット

清浄度検査試薬セット

※デンプン、タンパク質の残留検査用として綿棒などのふき取り器具と試薬がセットされた簡易検査キットが開発されています。ふき取って、10秒ほどで呈色の有無や色調の度合いを目視判定できる ので、操作や判定に専門的な知識や技術が不要です。

検査後の処理

①検査後は器具・器材の表面に培地が付着することがあるため、洗浄・消毒などの後処理が必要です。

②検査に使用した培地には、器具や容器などについていた以上に、細菌やカビが大量に増えていますので生ごみ等と一緒に捨ててしまうと、微生物をばらまいてしまうことになりとても危険です。

検査が終わった培地などは医療廃棄物を取り扱う業者に引取りを依頼するか、高圧滅菌するなどの処理を行いましよう。

 

関連記事:食品工場 洗浄マニュアル|ルール

 

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参考文献:
1.図解入門よくわかる最新洗浄・洗剤の基本と仕組み
2.トコトンやさしい洗浄の本
3.洗浄と殺菌のはなし (ビジュアル図解)

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