『静電気基礎知識』
「静電気って、何?」| 静電気除去?
子供の頃に下敷きをこすって、前に座っている友だちの髪の毛を逆立てたことがあるでしょう。 そのとき下敷きはどんな材料でできていたか…
そう、たしかプラスチックでした。
セーターの脇に下敷きを挟んで、 何度も何度もこすったものです。
プラスチックという素材は、その ほとんどが電気を通さない、ほぼ完全な絶縁体です。
一度発生した電気は絶縁体の表面で行き場がないので、そこに長く 溜まっています。
これが帯電、静電気の正体です。
帯電とは? | 除電とは?
静電気をなかなか逃がすことができないプラスチックは、帯電しやすい物質です。 世の中には、電気をよく通す物質と通しにくい物質があります。 一般に金属は導体、プラスチックは絶縁体と呼ばれます。その中間が半導体です。
導体、半導体、絶縁体の定義を下記に記載します。導体:電圧を印圧したときに電流が流れやすい物質。金属はすべて導体、抵抗率は10-8Ω程度。
絶縁体:電圧を印圧したときに電流が流れにくい物質。抵抗率は10MΩ程度以上
半導体:導体と絶縁体の中間の抵抗率を有する物質。抵抗率の範囲は~10KΩ程度。
静電気の大きさを表す単位は、V(ボルト)やkV(キロボルト)、電圧の単位と同じです。 ところが、金属にも静電気が発生するのです。金属の一部がアースにつながっている場合は、自由に電荷が移動できるので、帯電は起こりません。つまり、導体の電位は常に同電位(0V)に保たれています。しかし、絶縁物の上に置いた状態であれば、話は変わってきます。 プラスチックと同様に静電気を溜め込んでいきます。
電気抵抗が高い場合に、電気が自由に移動できないから、静電気は発生します。 静電気を考えるうえでは、この抵抗の大小が問題になってくるのです。
静電気、こうやって生まれる | 静電気 原理
このように、導体、半導体、絶縁体いずれにも静電気は発生します。 空気も帯電することが知られています。物質が強く帯電すると、 パシッという音や青白い光を伴う静電気放電が起こります。
この現象が、電子機器の誤作動や爆発災害など、重大な事故を 引き起こすこともあります。 帯電の仕方は、物質によって違います。 そして、その原因もまちまちです。
静電気の発生と帯電は深いつながりがあるのがわかっています。もう一度、下敷きのイタズラを思い出してみましょう。
下敷きを何度も一生懸命こすりましたね。こすったから静電気が発生 したような気がしました。だけど、実際は下敷きがセーターに接触した 瞬間に、静電気は発生します(接触帯電)。ただ、 触れただけで発生 する静電気は、とてもわずかです。
そこで、下敷きとセーターをこすり合わせます(摩擦帯電)。 そうすると、単に接触している場合と比べて、その面積が大きくなります。下敷きをこすれば こするだけ、静電気を溜め込んでいきます。
買ったばかりの携帯電話の液晶画面 に付いているフィルムをはがすときだって、静電気は 発生します(はく離帯電)。また、配管の中を圧送される粉体などにも、静電気が発生(衝突帯電) することが知られています。
原子の世界の電子の移動
静電気が発生する原因をまとめると次のようになります。
・接触帯電…2つの物質が接触したとき
・摩擦帯電…物質同士をすり合わせたとき
・はく離帯電…接触したモノをはがしたとき
・衝突帯電…物質と物質がぶつかったとき
たとえば、空気も静電気を発生させます。パイプやホースの中を、気体や液体が勢いよく流れた 場合などです。この他に、イオンが物体表面に付着しても帯電します。 複写機は、このイオンの帯電付着の作用を利用しています。
静電気発生のメカニズムを詳しく理解するためには、ミクロの単位よりもっと微少な目が必要です。 すべての物質は、原子と原子の組合せです。その原子には、-極の電子と+極の陽子で構成された 原子核が含まれます。
通常は、-極の電子と+極の陽子の数が同じで、電気的に中性の安定状態になっています。 物質同士が接触すると、それぞれの原子核にある電子が移動を始めます。2つの物質が触れ合うと、片方の物質に飛び込み、-極に帯電します。これが静電気の発生です。
ミクロの目で見ると、原子核が原子を放り出したり、受け取ったりしています。 この+-は、発生条件や環境によって左右されるので、絶対的な定義はありません。
物質が+-どちらの静電気を発生するかについては図表-1のような 目安があります。2つの物質が接触したときは、上位にある物質が+ 極になります(表では左側が上位)。帯電量は、帯電列表の位置関係が 遠い物質ほど、大きくなる傾向があります。
たとえば、紙とガラス板をくっつけるとガラス板は図表-1の上位にあるので+極に、紙は下位なので -極に帯電します。 また,紙とテフロン板をくっつけると,今度は紙が上位になるので+極に,テフロン板が-極に帯電 します。このように、静電気の極性は2つの物質の関係で決まります
見過ごせない静電気のイタズラ
図表-2を見ると「チクリとした痛みを感じる」レベルで帯電電位は 3kVです。 暗闇で青白い光が見える状態だと、10kV以上になります。
静電気は、ふだんもさまざまな場面で発生していますが、1kV以下 だとほとんど感じません。この1kVに満たないような静電気が、製造 現場では問題になります。 作業者がまったく感じることがなくても、 不良品や工程トラブルの誘因となっているから見逃せません。
静電気が影響して起こる不具合は、パーツフィーダーの詰まり、 検査機や測定器の誤作動、印字ミス、塗装ムラ、シートやガラス面・ 樹脂面へのホコリや切粉の付着、液晶基盤や電子部品の静電破壊… など、ここにあげきれないほど多種多様なカタチで現れます。
また、高精度・高品質の製品をつくり出すために、次のような厳しい 静電気量の基準を設けている製品もあるようです。
・MOS型IC:80V以下
・CMOS型IC:200V以下
・サイリスタ:600V以下
電撃の強さ
静電気のクーロン力
静電気のために実際の製造現場で発生しているトラブルについて、原因など をより深く説明しましょう。原因を理解することで、静電気に対する見方も きっと変わってくるはずです。
その理解を進める第一歩として、トラブルの大きな要因となっている「クーロン力」を説明します。静電気の極性に+極と-極の2種類がある ことは、すでに説明しました。
クーロン力というのは、静電気を帯びているもの同士が、磁石のS極とN極 のように、同一の極性同士なら反発し合い、異なる極性なら引き合う力の ことです。このクーロン力は、静電気を帯びているものには必ず働く力で、 そのためにトラブルの要因になることが多いのです。
お湯を注ぐ前のカップラーメンを見ると、粉末スープが容器の内側に付着していたりします。 同じように、クーロン力によって異なる極性が引き合う現象が製造現場で起こると、さまざまな 問題が発生します。 また、帯電物同士が同じ極性に帯電していると、今度は反発し合う力が働きます。 N極の磁石の上にN極の磁石を重ねようとしたときのように、決まった位 置にうまくモノを持って いけなかったり、横のモノを跳ね飛ばしたりします。それが欠品につながったり、 搬送ミスになったりします。
ビンなどに髪の毛などが付着 板ガラスやフィルムなどがくっ付く場合も静電気が原因ですクーロン力のせいです
ゴミの付着もトラブルのもと
空中に漂っているゴミも、実はトラブルの大きな原因になっています。ゴミやホコリはほとんどが+か-いずれかの静電気を帯びています。
そのため、+に帯電しているゴミやホコリは、-に帯電しているモノに引き付けられます。
大気中には、+や-に帯電しているゴミやホコリが無数にあるため、帯電したあらゆる物質にくっ付いてしまいます。
塗装、蒸着、ノリの塗布などを必要とするモノの場合、表面に付着したゴミの部分が盛り上がり、ムラになったりして現れます。また、ホコリやゴミ付着が外観不良につながったり、髪の毛などの異物混入がユーザーのクレームとなるケースもあります。
ホコリやゴミが製品に付着したままローラーにホコリなどが付着すると、さまざまな 塗装すると、その個所がムラになったり 、不良を引き起こします はがれたりします
金属と静電気
金属のような導体でもクーロン力は発します。 ちょうどノコギリの刃に切り粉が付くような現象です。これは、金属をアースに落として0Vを保ち続けたとしても起こるのです。金属に絶縁体が付着するために発生するトラブルについて説明します。
その典型的な例は、パーツフィーダーの詰まり、プレスの型残り、ノコギリの切粉付着があります。
これらのトラブルも、実はクーロン力によって発生するのです。
ここでは、パーツフィーダの詰まりというトラブルを例にとってみましょう。まず、パーツとボウルの間でクーロン力が働きます。そして、パーツがボウルに引っ付き、出されているパーツの流れを止めてしまうために起こります。
高速道路の真ん中に故障車が止まり、大渋滞を引き起こすようなものです。この原因を理解するためには、静電誘導という現象も合わせて説明する必要があります。
パーツフィーダーの詰まり、成形品の排出ミスや型残り、又切削加工の際、ノコギリの歯に切粉が付着するのも、実は静電気が深く関係しております。
静電誘導がクーロン力を後押し!?
静電誘導とは帯電物が金属体に近づいた場合、金属体の表面にその帯電物を導く作用のことです。
帯電している物体の近くに導体を近づけると、帯電物と向かい合った面に帯電物と反対極性の電荷が集まります。
この静電誘導により、帯電物とOVであるはずの金属体との間に、引き合う力が生まれて付着することになるのです。導体の周囲が+に帯電していれば、導体の帯電物側の面に-の電荷が集まって引き合う力を生じさせます。帯電物の帯電量が大きければ大きいほど、また帯電物と導体の間が短ければ短いほど、より強い力が働きます。
静電誘導とは、ある帯電物が金属に近づくことで、金属表面に反対極性の電荷を集めることです
知らないうちに部品を破壊
「静電破壊」は静電気放電が引き起こすトラブルの一種です。
ICは絶縁性の高い酸化シリコンなどの薄い膜に覆われていています。ところが、静電気の放電によって、一時的に高い電圧の電気が流れると、酸化シリコンの絶縁層が破られ、回路に傷がこれが静電破壊という現象です。
破壊というと、見た目で壊れてしまった気がしますが、実際は0.1mmにも満たない小さな回路が動かなくなったり、機能が低下したりする現象です。外見ではまったくわかりません。
MOS型半導体は、約80~100Vの電圧がかかるだけで、半導体としての機能を失ってしまいます。人がチクリと痛みを感じる程度でおよそ3kVの電圧なので、約80~100Vという数値が、いかに小さなものであるかが想像できるでしょう。
いろんなモノが帯電している!
静電破壊を引き起こす静電気放電を防ぐには、モノを帯電させなければ よいのです。しかし、コトはそれほど簡単ではありません。静電気は モノとモノが触れただけでも起こります。たとえば、私たちがイスから 立ち上がったり、歩き回ったりというように、普通の動作をするだけ でも静電気は発生します。
実は、静電破壊の原因となる帯電体で、真っ先に疑われるのは、私たち 自身です。人は動き回って作業をするので帯電しやすく、その電位は簡単に 数千~10000V以上になります。そして、帯電した作業者が基板を組み立てる とき、静電気に敏感なICに手を近づけると、放電が起きてしまいます。
しかも、悪いことに、作業者はそのことにまったく気づかず、外見からも 壊れたことがわからないため、後になって原因不明の不良で悩むことになる のです。その他、金属でできている装置類もアースされていない場合は帯電 します。半導体自体も製造過程で帯電すれば、作業の際に使用するピンセット などの導体が近づくことで放電し、内部回路が破壊される危険があります。
電気抵抗が1MΩ以下なら大丈夫
アースは漏電による感電を防ぐため、家庭の電化製品でも行われている ポピュラーな方法です。地球が大きな導体で、しかも大地の表面がゼロ 電位であることを利用して、たまった電気を文字どおり地球(earth)へ 逃がします。電気を地面(=地球)に逃がすことから、接地または グランドとも呼ばれています。
製造現場で利用されているアースは、漏電による感電防止だけでなく、 静電気放電による火災・爆発事故などを防止する役割も果たしています。
アースの使用方法は、電化製品の場合と同じです。特別な工夫は必要なく、 アースの電気抵抗値が1MΩ以下であればよいとされています。
ちなみに電化製品の場合は、静電気に比べて極端に大きな電気エネルギーが 流れるので、アースの電気抵抗値は100Ω以下という非常に抵抗の少ないもの が使われ、電気を逃がしやすいようにしています。
「アースは万能!」は大まちがい
ガラスやプラスチックなどの絶縁体は、アースをしても除電されることはありません。 アースをした導体に絶縁体が接していると、絶縁体の静電気が消えたように見えることがあります。 実際、この状態で絶縁体の電位を測ると、電位は低くなっています。 アースをすれば絶縁体でも除電できるとよく誤解されるのはこのためです。
なぜ静電気がなくなったように見えるのでしょう? アースをした金属は、自由に電荷の移動ができる状態にあります。そこに帯電した絶縁体が接する と、導体の表面には絶縁体が帯電している電荷と反対極性の電荷が引き寄せられます。
つまり、アースした導体と接している面では、プラスとマイナスが中和した状態になり、見かけ上 は静電気がなくなったように見えるのです。しかし、当然ながら、絶縁体の電荷は移動してい ません。 導体から引き離すと、消えたように見えた静電気はそのまま残っていることがわかります。
このようにアースが有効かどうかは、帯電しているモノが導体か絶縁体かでまったく違います。 導体に対しては有効なアースも、絶縁体にはまったく効果がないということを頭に入れて、静電気 対策を行いましょう。
絶縁体の静電気が消えたように見えるメカニズム
参考サイト:キーエンス(株)静電気ドクター
上記サイトではさらに詳しい資料が掲載されています。
材料の導電化
帯電する材料を導電化できれば,その材料の一端を接地することによって容易に電荷を除去することができるから,導電化は重要な帯電防止手法である。静電気の帯電を防止する目的では,金属のような伝導性は必要ない。導電化の方法としては,材料の表面を導電化する方法と,体積内部を導電化する方法に分かれる。
表面導電化
材料の表面のみの導電化は,その材料の機械的性質などを変えずに帯電防止できるから,最も広く利用されている方法である。
金属皮膜の形成
高分子材料表面に金属の薄膜を形成すれば,表面のみ導電化できる。この方法には,化学めっき,真空蒸着,スパッタリングなど,種々の方法がある。どの方法でも金属層の電気伝導性は極めて良いから,静電気を漏洩させるには十分すぎる特性を持つ。
導電性塗料
塗料に導電性材料の微粉を混入した導電性塗料がある。導電性材料としては,カーボンブラックや銀の粒子が用いられている。導電性塗料の塗装面は金属皮膜に比べると電気伝導性は劣るが,電荷を漏洩させる目的としては十分な特性を持っている。しかし,色とコスト,作業性などの問題点から静電気障害除去の目的にはあまり利用されてはいない。
表面の親水化
高分子材料の表面を何らかの処理によって,親水化する方法もある。たとえば,ポリェチレンを酸で処理する方法が試されたこともある。プラズマによる表面処理も有効であるといわれている。高分子材料のプラズマ処理は印刷適性の向上などを目的に以前から行われているが,処理によって親水性が増し,その結果水分の表面吸着が促進され,電荷漏洩が早くなる。しかし,プラズマ処理の結果は多くの場合永続性が悪く,処理後の時間経過に伴って処理前の状態
に戻ってくる傾向を持っている。
体積的導電化
高分子材料の体積的な導電性を増すための最も一般的な方法は,導電性材料を高分子材料中へ混入することである。導電性材料としては,金属粉,カーボンブラック,カーボン繊維などが用いられる。粒子状の物体より繊維状の物体の方が比較的少ない混入量で導電性を増すことができるが,それでもかなりの量を混入しないとなかなか導電性が向上しない。これは,導電体どうしの接触が必要なためである。この方法では,帯電防止に必要な程度の導電性(多くの
場合,10-8[S/m](S:ジーメンス,導電性の単位で1/Ω)程度の導電率と言われている)を得ることはむしろ難しく,必要以上の導電性になってしまうことが普通である。
導電性と強度の両方を増すためにウイスカ(髭のような単結晶)を混入した例もある。力-ボン繊維が得られるようになってから,ウイスカのメリットはほとんど無くなったものと思われる。
導電性材料の必要な混入量を減らすためには,一定の大きさのペレット状の高分子材料を作り,その表面に導電性材料を付着させた後これを用いてホットプレスで成形する方法がある。この方法では,成形された高分子材料が導電性の殼で構成されたセルに分かれ,各セルが接触し合っている構造になる。セル内の体積を導電化しなくとも全体としては導電性となり,良好な帯電防止性を得ることができる。導電性材料の必要量は,体積全体を導電化するよりもかな
り減らすことができる。
混入量の問題があるとしても,導電性材料を混入すれば確実に高分子材料を導電性にすることができる。この方法の欠点は,材料の不透明性と色の変化である。
『制電対策の実例』
制電対策の基本
①静電気を発生させない。→発生しても静電気の量を極力、低く抑える。
②静電気を帯電させない。→発生してしまった静電気をできるだけ速く漏洩させ、滞留させない。
③静電気を放電させない。→特定の場所で火花放電させない。
④シールドする。→帯電体が接近したり、ESDが発生してもデバイスが影響を受けないようにシールドする。
静電気対策の基本ルール
①作業環境の整備→静電気に敏感な部品は、静電気対策区域で取り扱う。
②人体の除電→静電気に敏感な部品は人体の帯電を除去して行う。
③運搬、保管時の→静電気に敏感な部品の保管、輸送は電荷の容器類の整備たまらない状況下で行う。
④作業マニュアル等→作業者の教育とメンテナンスのルール化をソフト面の整備行う。
静電気対策の手順
①静電気に敏感な部品のリストの作成
②部品の静電気敏感度のチェツクとランク付け
③静電気対策区域の指定
④静電気対策区域内の静電気対策方法の決定
⑤作業マニュアルの作成
⑥作業者の教育、訓練
⑦静電気対策品の定期点検
作業環境の静電対策
湿度管理 (不導体の帯電防止策)
相対湿度が低いと電荷の拡散が減少し、静電気の発生が多くなる。冬場は乾燥するので加湿器 などにより相対湿度を55±25%に管理している。
(湿度管理により帯電電圧は約1/10に減少する)
おすすめ:ナノイー搭載加湿器
品番:Panasonic FE-KXMシリーズ FE-KXM05シリーズ
2006年9月15日販売されたナノイー搭載加湿器は除電効果は勿論、抗カビ、抗ウイルス効果あり、また脱臭効果もあり、価格も除電器から比較すると安い。
特に食品工場での除電に向いている。
ナノイーについては下記のサイトを参考にしてください。
関連記事:除電用加湿器の使い方、選び方
イオンブロアー(除電器)
静電気の発生を抑えるのが困難な工程は局所的な除電対策としてイオンブロアーを使用。 イオンブロアーはエリアに存在する静電気を中和する為に能動的にイオンを発生させる装置です。
おすすめ イオンブロアー
直流送風式除電器 KD-740B-1AS ONE(アズワン)
関連記事:イオナイザーの正しい選び方、使い方
静電防止床
作業工程全てに帯電防止床材を設置し、静電気によりトラブルを防止。
表面電気抵抗値は1×107MΩ以下と低く、定期的に静電防止床材の測定を実施している。
関連記事:静電気防止床材の選び方、使い方
静電特別エリアの指定
レーザーダイオードの破壊を防止する為、調整工程は静電特別エリアとして指定し 関係者以外の立ち入りを拒否し、徹底した静電対策を実施。
アース端子の取り付け
計測器、治具等のアース線が確実に接続され、一目で接続状態がわかるように図のようなステン レス板の接続板を作成してアース線を固定。
作業椅子対策
作業椅子の一部に、静電床に常に接触するような長さのチェーンを取り付けて静電気の発生を防止
モニター対策
ブラウン管から発生する高電圧(1~2kV)の静電気を透明導電シートにて遮断。
糸半田のアース対策
半田ロールが回転することによる静電気を図のような治具を取り付けることにより、静電気を アースに落とし、帯電気を防止。
作業指導書・透明ケース
帯電防止用スプレーを定期的に塗布して、作業指導書の透明プラッチック板等の静電発生を阻止。
半田ゴテリーク対策
半田ゴテのリーク電流による半導体デバイスの破壊を防止する為に図のように半田コテ部に アース線を接続してリーク電流による破壊を防止。
半田煙・吸煙器
半田煙・吸煙器のノズル先端で発生する静電気を導電シートを取り付けることのより静電気を遮断。
設備用アース線とアースバンドアース線の分離
①アースバンド用接地線 ②設備用接地線(検査器、治具用、半田ゴテ等)
人体の静電対策
制電服 静電気帯電防止作業服
電子部品、製品を生産する工場として適合する制電服を購入時に検討し 全現場作業者に貸与し着用を義務つける。
作業服を着用した人間が種々の作業をした場合、作業服-下着-肌着-人体の系で摩擦が起こりそれぞれに静電気が発生します。半導体を扱う職種においては、取り扱う半導体製品を静電気による静電破壊から守るためにも静電気帯電防止作業服を着用する必要があります。
静電気帯電防止作業服の規格について
JIST8118 日本規格
この規格は、作業服の静電気帯電に起因して発生する災害・障害を防止するため、
生地に帯電防止織物を使用して縫製した静電気帯電防止作業服について規定する。
(災害・障害とは、爆発・火災・電撃のような事故及び災害と、電子素子の破損、
製品の汚れ等の生産障害を指す。)
性能 作業服1着あたり 帯電電荷量 0.6μc以下
*抵抗値 10¹³Ω〜
IEC61340-5-1 準国際基準
静電気現象からの電子デバイスの保護を目的として、IEC(国際電気標準化会議)が
静電気管理技術の準国際規格制作を行っている。
(静電気放電による製品破壊や潜在的欠陥発生による、信頼性低下や歩留まり率に影響)
性能 衣類の表面抵抗値 1.0×10⁵~1.0×10¹²Ω以下
*帯電電荷量 0.11μc程度
*帯電(静電)防止作業服(帯電防止JIS規格適合品)の注意書の中に
「腕時計及、ベルトの金属バックルは、はずして着用してください」と記載している理由は
金属類を身に着けていると、これが何かに触れた瞬間にスパークを伴い激しく放電する為にです。
関連記事:静電気帯電防止作業服の正しい選び方、使い方
静電靴
電子部品、製品を生産する工場として適合する静電靴を購入時に 検討し全現場作業者に貸与し着用を義務つける。
静電靴のJIS T 8103規格では、人体の静電気帯電が原因となって発生する災害・障害を防止する目的で使用する静電気帯電防止安全靴・作業靴(以下、静電靴)について規定をしています。 静電靴は、精密機器工場、各種溶剤を扱う事業所など、静電気によって爆発・火災・電撃のような事故・災害、ならびに電子素子の破損、製品の汚れなどのような生産障害が起こりうる 作業環境で使用されています。
本規格では帯電防止性能及びその性能を満たすために使用される諸材料の使用について規定され、防護する性能を備えた靴を「静電気帯電防止靴」と呼んでます。
静電靴の種類[靴の電気抵抗について]
靴の種類ごとに電気抵抗も区分され、静電気帯電防止性能を基準とした一般静電靴、特種静電靴、導電靴とに分類されています。また、種類ごとに電気抵抗も区分され、使用環境基準が定められています。 屋外作業も想定し、0℃条件下の規格値も設定されています。
関連記事:静電靴の選び方
静電気除去リストバンド| アースバンド |リストストラップ
電子部品、製品を生産する工場として適合するアースバンドを購入時に検討し 必要とされる現場作業者に貸与し着用を義務つける。
人が衣服を着て静止状態の場合、体と衣服が+と−に帯電し、電気二重層を形成しますが、見かけ上の電位は0です。
しかし、人が動いて衣服と人体がはなれた時に分極し、人体は電位を持ち、指先などから放電します。
電子機器組立工程において、ICなどの電子部品が、その放電により静電気障害を起こします。
この静電気をアースして、人体を常に0電位に保つことがリストストラップの役目です。
リストストラップの種類
一般的に市販されているリストストラップにはコード付きタイプとコードレスタイプがあります。
両方の製品とも導電性材料で構成されており、人体に帯電した静電気を逃がしますが、その効果には大きな違いがあります。
コードレスリストストラップは直接アースをとる必要がなく、行動を制限されることが無いため、非常に便利なように見えますが、帯電電位を無くすことができません。
一般的なESD対策の基準値として作業領域の帯電電荷を100V以下に保つことが求められます。
さらに近年、電子部品を扱う現場においては管理上の閾値が30Vというところもあり、より厳しい管理が必要になってきています。
コードレスリストストラップでは200V前後の電荷を人体に残してしまうことがあるため、電子部品を扱う現場でのESD対策として適切ではありません。
一方、コード付きリストストラップは人体から直接アースをとっているため、人体の電荷を即座に0Vへ減衰させます。
関連記事:静電気防止リストバンド選び方、使い方
静電タッチパネルの設置
外部から入室する際に静電気を作業現場に持ち込まない ように、タッチパネルを設置。
外来者用制電気服、制電靴
静電対策してない靴、服で現場内に立ち入る際は 左記の静電服及び静電靴の着用を義務づけ、徹底した 静電対策を実施。
保管の静電対策
導電性コンテナ
特別静電管理区内は全て、導電性ボックス及びゴミ箱を使用。
粉粒体などの充填、排出の際に発生する静電気を速やかに減少させ、災害につながるエネルギーを蓄積させない静電気対策コンテナを使用。
導電性シートの設置
静電気をきらうエレクトロニクス産業で広く活用されています。体積固有抵抗は1.0×102Ω・cmです。
解析台及び保管棚には導電シートを設置して静電対策 を実施。
部品台
工程に設置してある部品台にも静電対策用のチェーンを取り付け。
台車
台車の移動時の帯電を防止するためにチェーンを取り付け。
静電関係測定器
静電靴・アースバンド抵抗測定器
●静電靴は左右個別に確認可能。
●静電靴とリストストラップはモード設定により同時、または個々に確認可能。
静電靴、アースバンド抵抗測定器にての日常点検を日々、実施。
<測定手順書の作成>
表面抵抗、漏洩抵抗測定器
静電床の管理を図の測定器にて管理。
<測定手順書の作成>
帯電量&イオンバランス測定器
工程の静電気量を左図の測定器にて確認。
<測定手順書の作成>
おすすめ静電気測定器
本格派 静電気測定器:型番:A&D AD-1684
非接触式のコンパクト静電気測定器。
計量誤差となる静電気を測定可能。
帯電量をバーグラフで表示。
簡易型 静電気測定器: サンハヤト デジタル静電気探知機 EG-1
表示桁数は±0.1KV(100V)と低いですが、食品工場での静電測定器としては問題ないレベルであり中小企業の食品工場でも購入できる価格です。(約2万円前後)
関連記事:静電気測定器の正しい選び方、使い方
リーク抵抗、電流測定器
回路上、不具合または汚れでリークする電流を測定する時に使用する抵抗をリーク抵抗といます。
リーク電流そのものが持っている抵抗がリーク抵抗です。
それを測定する計測器です。
リーク抵抗、電流が異常の際にはIC等の破壊が懸念されます。
MIL-STD-2000からの抜粋
■ 加熱時のはんだこての先端と作業場の接地点との間の抵抗は、5Ωを超えないこと。
■ 作業場の接地点と加熱時のはんだこての先端との間の電位差は、2mV(RMS)を超えないこと。
■ 電源は3線コード及び先端接地方式を使用しなければならない。
■ はんだこてはゼロ電圧のスイッチ切換ができる設計でなければならない。
■ トランス式のはんだこてを使用してはならない。
静電教育
掲示板
静電気の啓蒙、意識付けの為に掲示板を作成。
講習会の実施
幹部、作業者を対象に静電気の教育 新入社員には導入教育時に静電気の教育を義務付け、ルール化を図る。
作業指導書への記載
半導体デバイスの端子やプリント配線板のコネクタ端子部には触らない様に作業指図書に記載
関連記事:静電気対策用品の選び方、使い方|静電気対策グッズ
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