- 計測誤差 measurement error 【イラスト図解】
計測誤差 measurement error 【イラスト図解】
英語:measurement error 中国語:测量误差
計測誤差は測定誤差と同じ意味です。
計測誤差とは
誤差,測定誤差などということもあるが,計測の意味のほうが測定より広いことから,計測全体の目的,処置を考えて,広い観点から求められた誤差を,計測誤差と呼ぶことがある.
引用先:クォリティーマネジメント用語辞典 日本規格協会
JIS Z 8103:2019 計測用語では下記のように定義しています。
「(測定)誤差」:測定値から真値を引いた値。
つまり、測定誤差 = 測定値 ー 真値
です。この場合、真値というのは図面の値ではなく、測定している製品の寸法のことです。ということは、もし測定誤差を知りたければ、その製品の真の寸法を知らなければならないということです。そのためには、今の測定器より精度の高い測定器や測定方法で真値に近い値を測定して、その値との差(=測定誤差)を求める必要があります。
計測誤差(測定誤差)の種類
測定誤差(計測誤差)には、過誤、系統誤差、偶然誤差の3種類があります。
過失誤差(過誤)とは error
過誤とは、記録のミスがあった場合や測定方法を誤ってしまった場合など、基本的に測定者のミスによって生まれる誤差の事。
例えばリフティングに夢中で途中で数えるのを忘れてしまったり、数えるのを頼んだ友達がよそ見をしていたりすることによって生じます。
正しい測定方法の教育やダブルチェックの実施、経験者によるレビューなどで防げます。
系統誤差とは systematic error
「測定結果にかたよりを与える原因によって生じる誤差」 Z 8103
引用先:クォリティーマネジメント用語辞典 日本規格協会
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系統誤差とは、ある特定の原因によって測定値が偏る誤差のことです。例として、測定機器が持つ精度である器差によるもの、温度や湿度、気圧などが影響して発生するもの、測定方法の癖で値が偏るものなどが挙げられます。
系統誤差は誤差の要因が明らかであり、測定するたびに毎回同じだけの誤差が生じます。そのため誤差の要因が分かれば、測定機器を校正したり、温度や湿度の影響を補正したり、測定方法を見直すことで除去が可能です。
下記の誤差は系統誤差です。
①測定器の固有誤差:器械の特性や目盛りなどから生じる機械的な誤差
②測定者の個人誤差:目盛りの読み間違いや、測定値の記録ミス、計算の誤りなど、測定者の不注意によって生する誤りです。
③外部条件による誤差:温度、気圧、湿度などから生じる物理的な誤差です。
偶然誤差とは random error
「突き止められない原因によって起こり、測定値のばらつきとなって現れる誤差」Z 8103
ばらつきの値が,ある確率分布からランダムに抽出された確率変量の実現値とみなせるような場合に,特に偶然誤差あるいはランダム(確率)誤差と呼ばれる.
引用先:クォリティーマネジメント用語辞典 日本規格協会
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偶然誤差とは、測定時に毎回ランダムに含まれる誤差のことです。同じ測定環境で、同じ手順で測定しても測定値が完全に一致することはなく、わずかなずれが発生します。
偶然誤差の大きさをグラフの横軸に、誤差の大きさごとの発生頻度をグラフの縦軸にとってヒストグラムを作成すると、平均値が0の正規分布となることが知られています。これは、測定値の平均から大きくずれるような偶然誤差は発生しにくいことを示しています。
「計測誤差(測定誤差)」を原因別に分類すると、下表のようになります。
No. | 誤差の種類 | JISの定義 JIS Z 8103:2019 計測用語 – 基本用語 |
原因 | 例 |
---|---|---|---|---|
1 | 測定器の 固有誤差(系統誤差) |
指定された標準状態における測定器又は測定システムの誤差 | 測定器の構成上または取り扱いにより起こる | 目盛りの不同、摩擦、測定圧の変化、ねじピッチの不同 |
2 | 測定者の 個人誤差(系統誤差) |
測定者固有のくせによって,測定上又は調整上に生じる誤差 | 測定者のクセ、熟練程度により起こる | 目盛の読取りのクセ、取り扱い方法のクセ |
3 | 外部条件 による誤差(系統誤差) |
- | 測定を行う環境、特に、室温、採光による影響 | 温度変化、照明方法 |
4 | 偶然誤差 | 反復測定において,予測が不可能な変化をする測定誤差の成分 | 種々の条件が重なり合って起こり、原因が判らぬ場合が多い | 外囲状況の微変動、測定者の心理的影響 |
「計測誤差(測定誤差)」の対策
偶然誤差は原因がわからず、予測不可能な誤差なので対策を取りようがありません。
しかし、それ以外の、①測定器の固有誤差 、②測定者の個人誤差、③外部条件による誤差は対策によっては、誤差をより小さくできるということです。
下表にそのための対策を示します。
表.計測誤差(測定誤差)を小さくする対策
No. | 誤差の種類 | JISの定義 JIS Z 8103:2019 計測用語 – 基本用語 |
原因 | 対策 |
---|---|---|---|---|
1 | 測定器の 固有誤差 |
指定された標準状態における測定器又は測定システムの誤差 | 測定器の構成上または取り扱いにより起こる | 公差に対し測定精度が1ランク上の測定器を選択する 測定器の固有誤差を取り除く(測定器の定期的な校正・メンテナンスの実施と適切な取扱いなど) |
2 | 測定者の 個人誤差 |
測定者固有のくせによって,測定上又は調整上に生じる誤差 | 測定者のクセ、熟練程度により起こる | 作業者教育による熟練度向上と作業標準化によるバラツキ抑制 手動測定の自動化 |
3 | 外部条件 による誤差 |
- | 測定を行う環境、特に、室温、採光による影響 | 恒温室、暗室、クリーンルームの使用など、外部環境を一定に保つ |
計測誤差(測定誤差)と公差の違い
誤差と公差は意味が異なる言葉です。
公差とは誤差を許容できる範囲のことです。 工業製品では、設計を行うときに製作時の誤差を考慮して「余裕」や「バッファー」を設け、誤差を吸収できるようにしています。
設計者は常に許容可能な誤差範囲を設計に織り込んでおり、この誤差範囲を公差といいます。
つまり、「公差」が設計者の定める仕様(入力)であるのに対し、誤差はその公差情報を元にものづくりを行った結果(output)であり、全く正反対の性質をもったものになります。
計測誤差(測定誤差)とばらつきの違い
ばらつきとは測定値の大きさが散らばっていること、また、散らばりの程度(ばらつきの大
きさを表すには、例えば標準偏差を用いる)
散らばっている範囲が大きいと“ばらつきが大きい”
散らばっている範囲が狭い(集中している)と“ばらつきが小さい”と言います。
偶然誤差はJISでは
「突き止められない原因によって起こり、測定値のばらつきとなって現れる誤差」Z 8103
ばらつきの値が,ある確率分布からランダムに抽出された確率変量の実現値とみなせるような場合に,特に偶然誤差あるいはランダム(確率)誤差と呼ばれる.
測定誤差と統計誤差の違い
統計誤差とは観測や測定において、不可避的に混入するランダムな誤差(真の値とのずれ)。偶然誤差ともいう。測定回数を増やしたり、サンプルの数を増やしたりすることで小さくできる。
しかし、測定誤差と統計誤差ははっきり区別ができないことも多い。
その時には,偶然誤差という言葉と統計誤差という言葉に差はない。
例えば「誤差には系統誤差と統計誤差がある」という表現がしてあっても間違いだと考えるべきではない。
誤差、精度の定義が変更
1993年に国際度量衡委員会の主導により,「誤差」や「精度」という表現の使い方について新しい統一指針が発表された。
関連BOOK:測定における不確かさの表現のガイド:ISO/IEC Guide 98-3:2008(GUM:1995)
ポイントは系統誤差と呼んでいるものこそが「誤差」であり,偶然誤差と呼んでいたものについては「測定の不確かさ」と呼ばれるべきだと決まった。
備考:
誤差とは、測定しようとするものについての、測定された値と「真の値」との差。
測定の不確かさとは、測定結果の疑わしさを数値で表わしたものをいいます。
新しい基準による誤差評価の方法は「不確かさ解析」「不確かさ評価」などと呼ばれるようになっている.
1993年以前に教育を受けていた人は知識を更新しなければならない。
例えば「約1km」を「1km±50m」のように数値化すると同時に、±50mのばらつきについて、誰もがその内容をより厳密に理解できるようにする必要がある。
測定結果にばらつきの内容即ち不確かさを併記することにより、その測定結果が初めて完全なものとなる。
ISOの国際文書「GUM」はこの不確かさについて、求め方、表示のしかたについてのガイドラインを示したものである。
下記は計測器のQC関連用語です。
引用先:クォリティーマネジメント用語辞典 日本規格協会
計測精度
精度の意味が,計測用語と品質管理用語では異なるため,特に,計測用語の意味として使う.また,測定精度という言葉もあるが,計測精度は測定精度よりも広い意味で,全般的なものと考えてもよい.
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