- PL(製造物責任) product liability 【イラスト図解】
PL(製造物責任) product liability 【イラスト図解】
英語:product liability 中国語:产品责任
PL(製造物責任)とは?
ある製品の欠陥が原因で生じた人的、物的損害に対して製造業者らが負うべき賠償責任のことをいう.
英語のproduct liabilityの略語.
我が国では,かつて「生産物責任」あるいは「製品責任」などの訳語で呼ばれたこともあったが,今日では「製造物責任」の語が定着している.
例えば,TVから出火し家屋が焼失したり,大が焼死したような場合,あるいは自動車が突然暴走して歩行者をはねたり,ドライバーが死傷したような場合,それぞれTVや自動車の製造業者は,もしそこに欠陥が認められれば,それによって生じた人的・物的損害を賠償する責任を負う.
医薬品の副作用や食品への有毒物質の混入などによって,悲惨な薬害,食品事故などが発生した場合も同様である.
このPLの法理を世界で初めて生み出しだのは,いうまでもなくアメリカであった.
PL追及の理論として,それまでに認められていた過失責任及び保証責任の理論に加えて, 1963年にはカリフォルニア州最高裁で初めて厳格責任を認める判決が下された.
Greenman v. Yuba PowerProduct事件がそれで妻からクリスマスプレゼントとして贈られた日曜大工道具を使用中,道具がはねた木片で頭に重傷を負った夫が提起した訴訟で,裁判所は「製造業者が検査されることなく使用されることを知りながら製品を市場に流通させ,それに欠陥があったために他人にヶガを負わせた場合には,不法行為法上の厳格責任を負う.」と判示した.
同理論によれば,欠陥のある製品を市場に流通させ,消費者に被害が発生した場合には,製造業者の過失の有無にかかわらず,被害者(製造業者との間口契約関係の存在は不要)は,製造業者を訴えることができるとされ,製品事故の被害者の保護はここに大きな前進を遂げることになった.
他方,ヨーロッパにおけるPL法制はもともと各国ごとにまちまちであったが1960年代初頭にサリドマイド事件が発生し全ヨーロッパを席捲した.
この事件を契機にECにおけるPL法統一の必要性が広く認識され,長年検討が続けられたが,紆余曲折の末,1985年7月にEC閣僚理事会で,「欠陥製造物に対する責任にかかわる加盟各国の法律,規則及び行政規定の近似化に関する閣僚理事会指令」(いわゆる「PLに関するEC指令」が採択された.
同指令の最大の特徴は,無過失責任の原則の採用にあり,その理由を同指令前文は,「製造業者の無過失責任は,特に専門的技術が向上している現代にあって最新技術による生産に内在する危険の公
平な分配という問題を適切に解決する唯一の方法である.」と説明している.
ただ,EC指令は,それ自体で各国の国民に対して直接的な拘束力を有するものではなく,指令通告の日から3年以内,すなわち1988年7月30日までに,加盟各国がそのための具体的な国内法を定めて施行することを要求していた.
その後,ヨーロッパでは,後から遅れてEUに加盟した北欧の国々を含めて,ほとんどすべての国で,無過失責任に基づくPL法が制定,施行されて今日に至っている.
最後に,日本の状況であるが,長年我が国には, 1896(明治29)年に制定された民法以外,製品事故の被害者を救済する特別の法律は存在しなかった.
このため事故の被害者は,問題の製品の欠陥以外に,その製品を製造,販売した企業の過失をも証明することを余儀なくされ,極めて苛酷な状況の下に置かれていた.
そうした長年の状況に変化をもたらす契機となったのは,主として,上述のようなアメリカやヨーロッパの動きであったが,ほかに,近年の歴代内閣の重要課題である規制緩和の方向や生活者重視の
姿勢も大きな力となって,ようやく1994年7月1日,製造業者の無過失責任を定めた製造物責任法が公布され,翌1995年7月1日から施行されて,今日に至っている.
引用先:クォリティーマネジメント用語辞典 日本規格協会
わかりやすく PL法(製造物責任法)
製造物責任法の目的
製造物責任法(以下、PL法)とは、製造物の欠陥によって生命、身体または他の財産に損害を被った場合に、被害者は製造業者等に対して損害賠償を求めることができる法律のこと。
対象となる製造物
PL法では、製造物を「製造または加工された動産」と定義、 一般的には工業的に大量生産され平成7年7月1日以降に流通している製品が該当。
- 工業的に大量生産された製品
- 不動産の一部となっている動産
窓ガラス、ドアなど - 加工された農林畜水産物
缶詰、菓子、冷凍食品、小麦粉、食用油、
ジュース、マーガリンなど
欠陥と拡大損害
「製造物が通常有すべき安全性を欠いていること」と定義しています。
欠陥の有無については事故を起こした製品ごとに製造物の特性・通常予見される使用形態、製造業者などが製品を引き渡した時期、その他の事情を考慮して、個別的・具体的に判断されます。
拡大損害
拡大損害となる例
- 加工された食品を食べたら異物により歯が折れた
- テレビが火を噴いてカーテンが燃えた
- 走行中に自転車が突然壊れて転倒しケガをした
拡大損害とならない例
- 食品にカビが生えていた
- ラジオの音が出なくなった
- テレビから煙が出たが延焼しなかった
(この場合も欠陥として損害賠償は請求できます)
損害賠償責任を負う製造業者等
- 製造物を業として製造・加工または輸入した者
- 製造物に氏名等の表示をした者または製造業者と誤認させるような氏名等の表示をした者
- その他の事情からみて製造物にその実質的な製造業者と認めることができる氏名等の表示をした者
損害賠償請求
PL法に基づいて損害賠償請求するには
- 製造物に欠陥があったこと
- 拡大損害が発生したこと
- 製造物の欠陥により損害が生じたこと
この三つの事実を証明する必要があります。
事故が起きたときの対応
- 事故現場の状況を保存する。または、事故品や周囲の状況を写真やビデオに撮るなどして、現場の状況を保存すること
- 病院でケガを治療した場合は、領収書や診断書をとっておくこと
- 証拠となる書類は念のためコピーしておくこと
- 事故品などを製造業者や警察・消防署などに渡すときは、必ず預かり証を受け取ること
くわしくは、消費者庁ホームページ「製造物責任(PL)法の逐条解説」のページを参照の事。
PL法の責任者は誰?
PL法の義務者 PL法の義務者とは、PL法により製造物に対する責任を負う者のことで、製造業者および輸入業者、表示製造業者、実質的製造業者の3種類です。
製造業者および輸入業者
製造業者とは、製品そのものを製造したり加工したりする業者
輸入業者とは、製造物を輸入している業者
PL法では、製造物を製造、加工する業者だけに製造物責任を負わせるのではなく、輸入した業者に対しても製造物責任が問われる点に注意が必要です。
表示製造業者
表示製造業者とは、
製造物を製造、加工した製造業者として氏名などを表示した者
利用者に対し、氏名などを表示して製造業者であると認識させた者
製造や加工を行っていなくても、表示上製造業者にあたる者として、製造元、輸入者、輸入元があります。
実質的製造業者
実質的製造業者とは、販売元のように、製造物に「実質的な製造業者」だと認識できるような氏名などを表示した者のこと。
仮に、表示製造業者である製造元、販売元に異なる業者名が記載されていたとしても、実質的な製造業者として販売元も製造物責任を負うことになるのです。
PL法の事例
裁判に発展しPL法の事例を解説。
森永ヒ素ミルク事件
森永ヒ素ミルク事件は、幼児用粉ミルクの乳化安定剤として使用されていた工業用第ニリン酸ソーダにヒ素が含有していた事件です。粉ミルクを飲んだ幼児約1万人がヒ素中毒に罹患、幼児100人以上が死亡という最悪の事態になりました。
最終的に、被害者、厚生労働省、森永乳業により確認書が交わされ、被害者の恒久的な救済のための財団法人が設立されることになりました。現在も、確認書に基づいた被害者救済が続けられています。
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