TQCとTQMの違い

TQC TQM

TQCとは | 全社的品質管理

日本において,1960年代前後になると統計的品質管理を導入して成功した企業では,同じ手法を社内の他の部門に活用できないか,模索する動きがでてきました。これは,製造現場でいくら努力しても,設計に問題があれば不良はなくなりません。不良の原因を追究の過程で,設計を少し変更することでたちまち不良がなくなるというケースは非常に多かったのです。つまり,品質管理では,設計は絶対切り離せない部門といえるのです。

購買についても同様で,最初から出来の悪いものが入ってきたら,製造現場ではどうしようもありません。

さらに,設備やそれを使う作業者の採用や配置といった問題も品質問題に直接関わってきます。
これらに加え,マーケティング,販売,サービスといった一見品質管理とは縁のなさそうな部門についても,実は品質管埋と密接に関係があります。

このような経緯により(全社的品質管理(TQC〕Total QualityControl)という概念が浸透してきました。

このTQCは,当初アメリカのファイゲンバウム(A.V.Feigenbaum)により提唱された言葉で,ファイゲンバウムによれば,「TQCとは顧客に十分満足してもらえるかぎりにおいて,最も経済的に品質水準の製品を生産し販売していくために,組織内のいろいろなグループが払う品質開発,品質維持,品質改良の努カな組織である」と提唱したのです。

ファイゲンバウムTQC提唱者

ファイゲンバウムTQC提唱者

ここでの組織とは,品質管理専門の部門の設置を行うのではなく,品質確保の業務をそれぞれの部門に割り振ることで,品質機能を全社的に行うことです。すなわち,従来個々別々の活動として実施されてきた購入品の管理,工程解析,工程管理,検査,保守,販売などの活動を総合的な活動として行うことです。

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日本的品質管理の特徴 | QCサークル活動の展開

既述のように,日本のTQCは,当初アメリカから導入されたが,その後,日本的経営に順応したものに変容していきました。その特徴については,1969年に日本で開催された第一回品質管理国際会議(lnternational Conference on Quaity Contorol〕1969年において,当時の日本のQC関係者らにより次の6項目が示されています。

①全社的品質管理の実施

②QCサークル活動の展開

③QC診断

④統計的手法の活用

⑤品質管理教育及び訓練

⑥全国的品質管理推進運動

また同時に,それまでアメリカで用いられてきたTQCとは異なるという意味で,全社的品質管理(Company-Wide Quality Contorol:CWQC)という呼び名を与えました。ところで,このCWQCという言葉は,現在においてはあまり一般的に使われておらず,日本的TQCもしくはただ単にTQCという言葉が用いられています。その後,1987年に開催された第44回日科技連品質管理シンポジウムにおいて討議の結果,上記の6項目に対して,さらに4項目を追加し,これをもって次表に示すように日本的TQC(以下TQC)の特徴としました。

●日本的TQCの特徴

①経営者主導における全部門,全員参加のQC活動

②経営における品質優先の徹底

③方針の展開とその管理

④QCの診断とその活用

⑤企画・開発から販売・サービスに至る品質保証活動

⑥QCサークル活動

⑦QCの教育・訓練

⑧QC手法の開発・活用

⑨製造業から他の業種への拡大

⑩QCの全国的推進

方針管理 | 企業経営の理念

日本的TQCの特徴としてあげられた,品質管埋における経営者・管理者の役割の重要性があります。この役割の中で最も重要なものの1つが,方針管理です。

方針管理とは,企業経営の方向性,目標,方策,理念等をトップから末端の現場作業者に至るまで,伝達・展開を行い各職位が計画に基づいて活動を行います。その実施結果を.評価,検討をして,検討結果の次期方針へのフイードバックを行うことで管理のサイクルを継続的に回し,持続的な改善を目指すことなのです。

日常管理 | デミングサイクル

日常管理とは,各部門がその目的を果たすために定められた業務についてPDCA(Plan,Do,Check,Action)の管理のサイクル(=デミングサイクル)を回して行くことです。このことから日常管理は部門別管理ともいうことができます。
日常管理の基本は,日常業務の維持と現状での改善を確実に行うことにあります。個人個人が自分の行うべき業務とその管理を確実に行っている状態が理想的といえます。日常管理を確実に行うことで,方針管理のより有効な実効が期待できます。

機能別管理 | 品質,コスト,納期

機能別管理とは,全社的な立場に立って品質,コスト,納期といった各経営要素について機能別に計画を立案します。
そして,各実施部門の日常管理・方針管理を通して実施するとともに,実施結果を全社的立場から評価を行って必要な対策を行うことです。言い換えると,全社的な立場に立って,維常目的達成のための部門間の連携に対応した管理活動ということができます。

デミング賞 | 事業所表彰

日本において,全員参加型の日本的品質管理を推進するうえで重要な役割を果たしたものに,デミング賞があります。
デミング賞は,1950年に日科技連の招聘により来日し,日本の品質管理の発展に寄与したアメリカの統計学者(デミング博士(w.E.Deming)の業績と友情を記念すると供に品質管理活動に顕著な効果を上げたと、認められた企業、事業所に与えられる賞です。デミング賞の種類は次のとうりです。

①デミング賞本賞

②デミング賞実施賞
③デミング賞事業所表彰

本賞は,品質管理,統計方法に関して大きな貢献をした個人に与えられるものです。これは,自薦他薦を問わずに応募することができ,デミング賞委員会において審査の上,受賞を決めます。

実施賞は,統計的品質管理を実施し顕著な効果を上げたと認められた企業または事業所へ与えられます。この実施賞には,実施賞,実施賞中小企業賞,実施賞事業部賞の3つがあります。実施賞と実施賞中小企業賞に関しては,どちらに応募するかは応募者の判断により選択できます。実施賞事業部賞は,企業の事業本部または事業所を対象とします。デミング賞委員会は,事前に提出した実情説明を参考に実地調査を行い,審査を行うことになります。

事業所表彰は,統計的品質符理を実施して顕著な効果を上げたと認められる企業の事業所に対して行われ方法に関しては実施賞に準じて行われます。

QCサークル活動とは | 品質管理の小集団活動

TQC活動を進める上で,欠かすことができないのがQCサークル活動です。これは,現場の管理者や監督者と作業者の品質意識の高揚と,品質管理活動の推進を目指すための小集団活動のことです。

TQCの特徴の1つがみんなでやる品質管理ということができます。このため従業員一人一人の資質を向上させることで,より良い品質管理が可能となるのです。そこで,作業現場で小さな集団を作り,どうすればより良い製品を作ることができるかという意識のもとに,そのメンバーがお互いに意見を出し合ってQCの手法を活用して改善していくことにより,従業員が意欲を持って働く楽しみを味わいながら作業を行う小集団活動,すなわちQCサークル活動が盛んに行われています。

関連記事:小集団活動|QCサークル

QCサークル活動の誕生 | 現場とQC

QCサークル活動は,全社的な品質管理活動を進めていくうちに,第一線の現場における品質管理の重要性の認識が高まる中で生まれました。

従来は,品質管理のスタッフ向けに発行されていた『品質管理』の姉妹誌として,現場の監督者向けに品質管理の雑誌を発行することでした。これが『現場とQC』誌で,1962年に創刊されました。

QCサークル雑誌

QCサークル雑誌

この雑誌のねらいは,第一線の現場の入が自費で購入して勉強できるように,低い価格で,平易にかかれているものです。そして,この雑誌は次の3つの方針のもとに編集されていました。
1)現場監督者の管理改善能力向上のための手法の教育・訓練,普及に役立つ内容とする。

2)なるべく多くの職組長,作業者の読んでもらうために,個人で買えるように低い価格で設定する。

3)現場の職組長を長とし,部下の作業員までを含めたグループを作り,これをQCサークルと呼ぴ,雑誌を中心に勉強していくとともに,これを第一線の現場での品質管理活動の核として働くものとする。

これらの方針に基づき,初代編集委員長であった石川馨が『現場とQC』誌面によりQCサークルの結成を呼びかけことがはじまりです。

QCサークルの発展 | QCサークル活動の普及

1962年に誕生したQCサークル沽動はその後、活動の普及と推進のための組織化が進められました、,その中心的な役割を果たしたのが,QCサークル本部です。QCサークル本部は,日科技連内に設立され,QCサークル本部世話人(1993年よりQCサークル本部指導員へ改名)を派遣して,QCサークル本部大会やシンポジウムの開催を通じ,全国的なQCサークル活動の普及・推進活動を行ってきました。また,結成したQCサークルの登録も行っています。

QCサークル活動が全国各地で活発化してくると,QCサークル本部だけでは,十分な対応ができなくなってきました、、そこで,各地域で核となる組織が必要となり,まず1964年に関東,東海,北陸,近畿にQCサークル支部が設置されました。その1年後の1965年に中国・四国,1968年に九州,1971年に北海道,1974年に東北,そして1984年に沖縄にそれぞれ支部が開設され,全国的にカバーする組織網が完成しました。

全国各地でのQCサークル活動の活発化とともに,各地でQCサークル活動の発表の要望がでてきました。それを受けて,1963年に第1回QCサークル大会が仙台で開催されました、、その後,1964年には大阪で,第3回大会は金沢,第4回大会は名古屋で開催され,年を追う毎に急速に拡大していきました。

QCサークル大会は,国内だけではなく国際的な大会も開かれるようになりました。それは,日本主催で1978年に29カ国,419人の参加による第1回国際QCサークル大会が東京で開催されました。
また,日本製品の優秀性が評価されるにつれて,海外でも日本製品の優秀さを生み出す根幹のひとつとして日本的品質管理,中でもQCサークル活動に注目して,各国から多くの調査団の派遣が行われました。その対応として,日科技連を中心にQCサークル活動のノウハウを積極的に公開した結果,現在では62カ国/地域の国でQCサークル活動が行われています。

更に,QCサークル活動の活動領域も拡入してきました。もともと,QCサークル活動が発足した当時は製造業が中心であったため,品質向上というと「製品の質」が対象でした。しかし,QCサークル活動がさまざまな産業で行われるようになり,1990年の『QCサークル綱領』第一次改訂にて製品やサービスを供給することを意識して,「製品及び仕事の品質」の意味合いが強調され,更に今日では「製品・サービス・仕事の質」へと活動領域が拡大しています。これは,「QCサークル活動とは職場を良くする活動」であるという認識からであり,QCサークルによる職場の様々な問題の解決にまで用いられるようになるまでに発展してきました。

QCサークル活動と小集団活動 | QCサークルと小集団の違い

QCサークル活動は,品質管理における小集団活動です。この小集団活動とは,企業内で小さな集団を編成して何らかの職務改善運動をすることを指します。

日本においてQCサークル以外の小集団活動も,QCサークル活動が活動を開始した頃から大企業の生産現場の一部で始められました。そして,その成果が上がるにつれて急速に広まっていきました。

しかも,その名称や目標も多様化していました。具体的に例をあげると,NHサークル(本田技研),JUMP運動(味の素),チャレンジ〈CT(帝人)などがあります。このいずれも生産・品質向上,職場の活性化,新製品開発といったように多種多様です。
これらの小集団活動は活動内容の進化の度合いによって次の4つの段階に分類することができます。

①自己啓発型:職場第一線の従業員がQC,IEといった手法を勉強し,研修会に重点を置いた小集団活動で,サークルの目標設定は行うことが少ない。

②改善活動型:小集団活動によって職務上の改善提案を行い,目標達成感が中心となる段階であり,小集団の目標と企業目標とは必ずしも一致せず,改善提案活動が中心となる。

③問題解決型:企業目標に合致した小集団目標を設定し,問題解決に挑戦している状態を指す。QCサークル活動や後に説明するZD運動は,このタイプが多い。

④自主管理型:企業目標に合致する高い水準の小集団目標を選択し,自分の仕事は自分で計画すると同時に結果の評価も自主的に管理すること。これも後に説明するTPMの自主保金は,このタイプに属する。

これら①から③のタイプまでは,従来の伝統的な組織に第一線の小集団活動を加えた型なのに対し,④のタイプは企業目標達成意識の高い,自己統制による小集団活動をべ一スにした小集団参画型経営を具体化した段階で,TPMの自主保全はこのタイプを目指すものです。

ここで,ZD運動とTPM,それに加えてJK活動について説明しておきましょう。
ZD運動とは,ZeroDefectsの略で無欠点運動のことを指します。つまり,作業者一人一人の注意と工夫によって仕事の欠陥をゼロにして,高度な製品,信頼性、低コスト、納期厳守によって顧客の満足を高めるために,従業員を継続的に動機づけを行うことです。

TPMとは,Total Productive Maintenancenoの略で全員参加のPMのことで設備効率を最高にすることを目標にしてて設備の一生涯を対象としたPMのトータルシステムを確立し,設備の計画部門,使用部門,保全部門”といったあらゆる部門にわたりトップから末端の作業者に至るるまで全員が参加し,小集団自主活動によりPMを推進することです。
近年は生産の自動化やFA化の進展により,設備の故障や不良が生産に与える影響が重大になります。そのため,全員による問題解決にあたるTPMが盛んに行われるようになっています。

JK活動は969年に日本の鉄鋼各社の自主管理活動の普及・発展を目的として生まれました。特徴としては,QC
サークル活動とZD運動との統合を目指したもので,特にJK(JishuKanri)の名の通り自主性に重点を置いた運動になっています。

関連記事:小集団活動|QCサークル

QCサークル綱領の改訂について

QCサークル活動を進めていく上で,基本的な指針となるのがQCサークル綱領です。
これは,1962年に始まったQCサークル活動が次第に活性化するとともに全国的に広がっていくにつれ,QCサークル活動の基本精神や基本的運営方法のばらつきがみられるようになってきました。そこで,QCサークル活動の基本になるものが必要になり,QCサークル本部世話人(後の本部指導員)らによる検討会が行われ,まとめられたのが『QCサークル綱領』として1970年11月に発行されました。

『QCサークル綱領』の発刊により,QCサークル活動の基本理念や基本的な運営方法が明確化され,その後のQCサークル活動の発展に大きな役割を果たしました。この『QCサークル綱領』の中でQCサークル活動の基本埋念としてまとめられたのが,次表のQCサークルの基本です。

●QCサークルの基本(旧)

QCサークルとは
同じ職場内で品質管理活動を自主的に行う小グループである。

この小グループは
全社的品質管理活動の一環として自己啓発,相互啓発を行いQC手法を活用して職場の管理,改善を継続的に全員参加で行う。

『QCサークル綱領』は,もともと製造現場を念頭にまとめめられたものでした。そのため,QCサークルの活動範囲が製造業オンリーから間接部門,サービス産業にまで広がっている現状を踏まえて,内容の変更を行う必要が生じ,1990年に第1次改訂版として発行されました。

第1次改訂では,QCサークル活動の適用範囲の拡大が主な会・経済情勢の変化や顧客二一ズの多様化,OA化の進展といった幟場を取り巻く環境の変化に伴い,QCサークルのありかたについての見直しの気運が高まってきました。これを受けて,1992年に開催された第24回QCサークルシンポジウムにてさまざまな議論の結果,QCサークル活動の将来像を考える研究会設置の動きが出てきました。

その後,1993年にQCサークル本部内にQCサークル活動の活性化と魅力ある活動を目指す「魅力あるQCサークル検討小委員会」が設置され,検討に入りました。そこで,約2年にわたって検討された結果,QCサークル活動を今日の職場環境に適合させて,より活性化させていくために、よりフレキシブルな活動を取り入れていく必要があり,そのためには,『QCサークル綱領』に定められている「QCサークルの基本」を改訂することが必要という結論に達しました。

そして,QCサークル委員会等での審議を重ね,1995年6月の『QCサークル』誌面にて「QCサークルの基本」の改訂版が公表されました。この改訂の主旨は,次の3点です。

①これまで以上に多様で柔軟な活動とする。

②これまでのQCサークル活動を包含している。

③QCサークル活動の基本理念は変更しない。

この「QCサークルの基本」の改訂にともなって,その内容を具体的に解説し,基本的な運営方法を示す『QCサークル綱領』の内容も全面的に改訂することが必要となったわけです。そのため,QCサークル委員会の下に「QCサークル網領改訂検討小委員会」を設置し,約1年の検討期間を経て1996年5月に第2次改訂版が発刊されました。今回の改訂版で,名称も『QCサークル綱領』から『QCサークルの基本』(QCサークル綱領)へ変更され,名実ともにフルモデルチェンジとなりました。

新しい「QCサークルの基本」は,次の表のとおりです。

●QCサークルの基本

QCサークルとは,
第1線の職場で働く人々が,継続的に製品・サービス・仕事などの質の管理・改善を行う小グループである。

この小グループは,
運営を自主的に行いQCの考え方・手法を活用し創造性を発揮し自己啓発・相互啓発をはかり活動を進める。

この活動は,
QCサークルメンバーの能力向上、自己実現、明るく活力に満ちた生きがいのある職場お客様満足の向上および杜会への貢献をめざす。

経営者・管理者は,
この活動を企業の体質改善・発展に寄与させる為に人材育成・職場活性化の重要な沽動として位置づけ自らTQMなどの全社的活動を実践すると供に人間性を尊重し全員参加をめざした指導、支援を行う。

TQCからTQMへ |  TQCとTQMの違い

1996年4月をもって,日科技連は,TQC(Total Quality control:全社的品質管理)をTQM(Total Quality Management:総合的品質管理)へ名称の変更を行いました。このことは,単に名称の変更だけでなく,TQC活動がバブル経済の終焉とともに下火になってきたり,形骸化してきたことに加え,企業を取り巻くさまざまな環境の変化に対応するために,TQCの再構築を目指したものです。

1990年代から顕著になったTQCの地盤沈下は,変化の激しい経営環境にTQCが対応できていないことが原因と考えられます。特に,1S09000シリーズの存在は重要です。このIS09000シリーズとは,「lS09000シリーズに基づく第三者機関による品質システム認証制度」のことで,この制度は品質保証に関する国際的な品質モデルを示し,取引における品質保証の標準化を目指したものです。

IS09000シリーズは,欧州主導でアメリカや日本でも急速に広がっており,同シリーズを無視して品質管理を行うことができなくなってきたのが現状です。そのため,IS09000シリーズをTQCへ取り込むことを考える必要が生じました。
lS09000シリーズは,日本では既に1993年末に本格的に始動しており,大企業を中心に認証取得が行われています。

しかし,1994年頃から品質管理活動に対して熱心な企業の中で,現在のTQCに関する問題点を解決し,従来のTQCの良い点を生かしつつ,TQCの再構築を行っていこうとする動きがみられるようになりました。具体的な事例として,アイシン精機株式会社の例をみることができます。アイシン精機では,1994年6月に他社に先駆けて自社のTQCの名称をTQMへ変更し,系列グループであるオールアイシンや関連の深いトヨタ自動車を含むトヨタ自動車グループへも変更を呼びかけました。これを受けて,トヨタ自動車グループでは,1995年に社内のTQC本部をTQM推進部へ変更しTQCと名の付いた部署の切り替えを進めました。

このように,大企業を中心にTQCからTQMへ移行させる動きがみられ,1996年4月に日科技連によるTQMへの名称変更により,本格的なTQM時代へ突人しました。

TQCからTQMへ

TQCからTQMへ

TQMの基本的な考え方 | 品質マネジメントの変貌

それでは,なぜTQCからTQMへ名称の変更をする必要があったのでしょうか。その理由として次の3があげられます。
まず第1は,TQCの国際化の問題です。現在では,全社的な品質管理活動が欧米をはじめ世界各国に広く啓蒙、普及され推進・実施されており,この活動をTQMと呼んでいるのが一般的です。また,円高対策や企業活動のグローバル化の進展により,日本企業の海外法人が増加しており,その結果,TQCを世界に通用する言葉にする必要が生じてきたことです。

第2に,基本的には1970年代から変わっていない従来からのTQCを,最近の企業を取り巻く環境の激しい変化に対して,対応させるために活動内容や推進方法の再構築が必要となったためです。

そして,第3は,TQCの“C”が活動の実体に即していないということです。これは,TQCの“C”が“Control”の略で,「統制」や「制御」という意味合いが強いのです。

しかし,現在においてTQCは,品質を第一の経営理念とした時の経営そのものをTQCとして捉えようとするのが主流です。つまり,今日のTQC活動は,計画段階(Planning)の比重が大きくなっており,TQCの中核を成す方針管理の重要性を示しています。これらのことからも,“Control”の“C”より“Management”の“M”の方がふさわしいと考えられたからです。

それでは,TQCはどのようにTQMへ変化するのでしょうか。まず,TQMの基本的な考え方からみていくと,TQMの基盤となるのは人問性の尊重,品質第一,顧客満足,トップのリーダーシップ,全員参加,QCサークル活動等の小集団活動といった,今まで推進・実施されてきたTQCを基盤とします。そして,TQCと経営戦略の立案と方策を中心とした経営方針とを更に深い連携を保つことで,経営の有効な手段としての確立を目指します。そのために,次の6つがあげられます。

①経営戦略の立案と方策及びその達成の重視

②新商品開発のためのマーケティングとその融合

③急速に進歩・発展している情報技術の積極的な活用と方法の質の向上

④人間性尊重を基本とし,創造性の発揮を重視した人材育成

⑤製造物責任予防(PLP:Product Liability Prevention)への対応強化

⑥国際規格(lS09000シリーズ,1S014000シリーズ等)との融合

まず,①についてだが,これは企業トップの経営戦略,長期ビジョン達成のための手法の確立をするのがねらいです。
この手法は,戦略的方針管理のことで,TQCで行われていた方針管理を事業戦略と統合することで,戦略、立案のプロセスに,戦略を効果的かつ効率的に実行する方針管理を加えることで,戦略の立案から実行まで一貫した経営管理を可能にすることです。

②は,市場の潜在的なニューズの発掘や技術予測による新商品開発方法の確立を目指したものです。

③は,現在急速に進歩・発展しているITの積極的な活用や情報の質の向上を目指したものです。また更にCALS(Continuous Acquisition and Lifecycle Support(継続的な調達と全ライフサイクル支援)といった新しいIT技術等の連携も考えられます。

*CALS(キャルス)とは、企業・機関の生産・調達・運用などにおける支援統合システムのこと。
「部門間、企業間等において、建設から製造、流通、保守に至る製品等のライフサイクル全般にわたる各種情報を電子化し、 技術情報や取引情報をネットワークを介して交換および共有し、製品等の開発期間の短縮、コスト縮減、生産性の向上等を図ろうとする 活動のこと。

④は,創造性豊かな人材を創造することを目的としたものです。

⑤の「製造物責任予防」に関しては,1995年にようやく日本においても製造物責任法が施行されたことから,品質保証の観点からみても軽視することはできません。

そして,⑥の国際規格に関してだがここでは特にIS09000シリーズを中心に考えます。従来からのTQCにIS09000シリーズの要素を取り込むことで,今までTQCの弱点と考えられてきた箇所の対策となり得ます。IS09000シリーズの視点から捉えた弱点は次のようにまとめられます。

●lS09000シリーズの視点から捉えたTQCの弱点

1.生産側の論理が中心→顧客第一主義でない

2.明確な基準文書が  →人により方法が異なる、体系化されていない

3.日本的な曖昧さがある。→合理的科学的でない

4.マンネリ化       →官僚化している

5.目先の効果を焦点にいる。→マクロな目で見てない

また,日科技連によれば,TQMを構成する狭義の意味での品質管理(QC),統計的品質管理(SQC),QCサークル等は,固有名詞として従来通りの考え方で,変更は行いません。次の図は日科技連が示したTQMの基本的な考え方です。

TQMの基本的概要

TQMの基本的概要

  戦略的方針管理 |  日科技連のTQC指導講師と経営者

TQMを構成する概念の1つとして,戦略的方針管理があります。これは従来の方針管理と比べどのように異なるのでしょうか。

まず,戦略的方針管理とは何かについて説明しましょう。

日科技連のTQC用語検討委貝会による方針管理の定義によると,「方針管理とは,経営基本方針に基づき,長期経営計画や短期経営方針を定め,それらを効率的に達成するために,企業組織全体の協力のもとに行われる活動」のことです。

つまり,TQCにおける方針管理とは,経営方針の策定から始まり,目標の達成をQC的に行う管理手法であるということができます。しかし,方針の策定や方法論に関する研究は,ほとんど行われなかったのが現実です。これは,方針策定が経営戦略に依存していたため,「経営戦略=経営学の対象」との図式ができあがっており,TQCは対象外とされていたからです。

ところが,バブル崩壊とともに,右肩上がりの経済成長が期待できない状況が生まれ,企業を取り巻く環境変化への迅速な対応が求められてきました。そこで生まれた新しい概念が,方針管理と事業戦略との統合により,戦略の立案から実行まで一貫した経営管理コンセプトである戦略的方針管理(Strategic Management By Policy)です。

この戦略的方針管理は,TRG(TQC Research Group)のより提唱された概念です。戦略的方針管理により,経営戦略が示す“What to do”(何をすべきか)にTQCが得意とする“How to do”(どうすべきか)を統合することで,次のような方針管理の問題点の解決につながることが期待されます。

①トップの方針がどのように策定されているのかわりにくい。つまり,方針展開に比べ方針策定のプロセスが不透明②トップの方針が本当に適切であるのか,また十分戦略的か,についての判断が困難

③長期計画策定において,現状のポジションの客観性の欠如,そして環境の変化や不確実性の見通しが困難

このように,TQCがより経営に密着したTQMへ移行するにあたり,戦略的方針管理がTQMにおいて重要な位置を占めるということが理解できるでしょう。次のように,戦略的方針管理のコンセプトをフローチャートで示します。

戦略的方針管理

戦略的方針管理

今まで,行われてきたTQCを更に発展させてTQMへ移行させるということは,新たな生じることになりました。

従来のTQCが,1つの管理手法だったのに対してTQMは今までみてきたように経営そのものまで踏み込むことになります。ここで生じる問題点として,管理部門と経営側を分けていた垣根が壊されることとなり,これにより新たな問題が生じる恐れが起こりました。

従来のTQCが下火になった要因として挙げられるのが日科技連のTQC指導講師と経営者との閑係かあります。今までは,指導講師には主に大学の教授や肋教授といった学者たちがあたっていました。ところが経営者の間に『大学教授に経営がわかるのか』という根強い批判があり,このような土壌で,講師が経営まで口を挟むと感情的な摩擦が生じる危険性があります。このような問題がおきないためにも,TQCの推進役である日科技連の対応が重要となることしょう。

また,TQCからTQMへ移行することで,経営管理への比重が大きくなります。これにより,TQM推進部門内での品質管理(QC)担当者の地位低下が懸念されます。TQMの基盤は,既述のようにQCサークル活動などのTQCが主となります。そのため,QC部門の地盤沈下は,TQMを進める上で根幹を揺るがす恐れがあり,TQCからTQMへ移行を目指すとき,十分考慮する必要があるでしょう。

現在,経営者はバブル崩壊の後処理の精算のため,リストラや体制の再構築といった緊急課題への対応で精一杯の状況です。このような環境のもとでは,品質管理といった管理技術は後回しにされやすいのではないでしょうか。TQC関係者の危機感の高まりによる,日科技連主導のTQMへの移行であるが,TQMは戦略的方針管理に代表されるように,経営トップ層のリーダーシップと明確な方針そして到達目標が必要不可欠です。そのため,品質管理において経営者の役割は重要さを増すことから,今後は経営者への働きかけが大切になります。

■引用・参考文献■
1)伊藤清「TQMによる魅力ある企業づくり」日科技連(1996)
2)飯塚悦功監修長田洋「TQM時代の戦略的方針管理」日科技連(1996)
3)飯塚悦功「1S09000シリーズとTQC再構築」日科技連(1995)

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