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サーミスタの選び方、使い方、不良モード、用途、応用製品

サーミスタ応用製品の故障と不良モード

サーミスタを使用するとき,いろいろの原因によって不都合なことが起こることがある。この章では初めにサーミスタを温度センサとして使ったときに見られる故障モードにふれ,その場合に現れる不具合,温度センサを設計あるいは組み立てるときに注意しなければならない点について述べる。

抵抗値不良  サーミスタ

規定された温度で,サーミスタの抵抗値とその許容差が示されているとき,抵抗値が許容差の範囲から外れている。

不良現象

サーミスタを使った品物が大量生産されている現在,多くの場合,回路側では規定された範囲の特性をもつサーミスタが入荷するものとして前もって生産・調整され,サーミスタの個々の特性に合わせて調整するということはない。

したがって抵抗が規定より高ければ温度が低いことを意味することになるので,その装置が温度調節器であれば,サーミスタの抵抗値が規定の値になるまで加熱が継続されることとなり,温度が異常に高くなる。抵抗が特に大幅に高いような場合には火災の危険が生ずることになるかもわからない。

逆にサーミスタの抵抗値が低すぎる場合は,温度が高いことを意味するので,低い温度で規定の抵抗値に到達するため,加熱不足の状態となり,温度が上がらないという結果となる。

原因

サーミスタ素子生産の段階に理由がある場合は,つぎのような原因が考えられる。

1)混入,選別不良など:これらはいずれも生産工程での管理不十分が原因と考えられる。

2)エージング不良;エージング作業が不適当なために生ずる抵抗値の変動

3)アニール不足によるサーミスタのクラックや割れ;生産工程の管理不十分,抵抗値が高くなったり,不安定になったりする。

4)絶縁不良;抵抗値が低くなったり,不安定になったりする。封入温度の低すぎによる封入不良,封入時のガラスの位置ずれ,あるいは洗浄不足や作業中の不注意による汚れや異物の付着など.

センサの組み立て加工の方法や工程に誤りがある場合は,つぎのような原因が考えられる。

1)かしめ不良による断線;スプライスバンドがリード線の被覆の上にかかった状態となって導通不良に近い状態になっている。

2)高温の状態で長い時間使われているうちに,スプライスバソドとリード線の一方または両方が酸化して導通不良となり抵抗値が高くなった。

3)かしめ部分の絶縁のため使用した絶縁チューブの耐熱温度が低すぎたのに加え,その部分に力が加わって破れ,短絡状態になった(材料の選定に誤りがある)。

4)高温用はんだを使用した場合のペーストの洗浄不良;この場合には絶縁不良による漏洩を生じたり,腐食による断線のおそれがある。

5)保護管の密封不良による吸湿によって絶縁が低下したため抵抗値が低くなったり,不安定になったりする。

6)抵抗値のごくわずかな変動も許されない超精密な測定に使用するような場合には,サーミスタの引出し線や外部導線の酸化によるやせのために生じろ抵抗変化でも問題になることがある。 このような場合は酸化に強いリード線を使う必要がある。

7)低温で使用するサーミスタの場合,センサが低温と高温(たとえば室温)との間で温度の変化を繰り返すようなときには,いわゆる呼吸作用によって,長い期間の間にはサーミスタの部分が濡れて抵抗値が不安定になったり,断線や短絡を起こしたりすることがある。呼吸作用を起こさないよう保護管内部を完全に充填するほか,リード線に撚り線を使わないなどの注意が必要である。

サーミスタ定数B不良

サーミスタ定数Bの値とその許容差が規定されているとき,サーミスタのBの値が規定された範囲に入っていない。

不良現象

サーミスタ定数Bの値の増減は下図のようになる、サーミスタ定数Bの値が規定されたBより高いときには点線で示すように,また低いときには一点鎖線で示すようになる。そのため,温度の基準点以外でも使用しようとすれば,Bの変化によって抵抗値に影響が現れることは図からも明らかである。

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サーミスタ定数Bの誤差の影響

基準点より高い温度では,Bの値が高いときにはBが規定されている値上り低く,Bの値が低いときには規定された値より高くなる。

基準点より低い側の温度では,高いBの値に対しては抵抗Rか高目に,低いBの値に対しては抵抗Rは低目になる。したがって,ある程度広い温度範囲にわたって1個のサーミスタを使い,しかも,ある程度の制御(あるいは測定)精度を望んでいる場合には,Bの影響に注意する必要がある。

以上のことを温度調節器の場合を例にとって,制御温度について考えるとつぎのようになる。サーミスタの抵抗値が基準点(選別温度)では基準通りの値であったと仮定すると,Bの値が基準より高いときには,高温側では抵抗が低目だから制御温度は設定温度より低めに,低温側では抵抗が高めだから設定温度より高い温度で動作することになる。

Bの値が基準より低いときには,温度が基準温度より高い側では動作温度は設定温度より高めに,基準温度より低いときにぱ動作温度は設定温度より低めとなる。

原 因

金属酸化物の焼結半導体であるサーミスタは抵抗値やBの値にある程度のばらつきがあるが,規定したばらつきの程度には十分管理できるはずのものだから,限度を越えてばらつきが大きい場合には生産工程での管理が不十分である。特にセンサの組み立て前のデータの測定不良,選別不良や混入を原因として挙げられる。

何らかの原因によってサーミスタに若干の絶縁不良がある場合には,抵抗が高くなる温度の低いところでその影響が大きくなるので,結果的には見せかけ上Bの値が低くなったように判断されることになる。

絶縁不良  サーミスタ

サーミスタ温度センサの事故の原因の中で最も重要な課題となっているのが絶縁不良で,絶縁不良が生じるとさまざまな現象となって現れる。絶縁不良は発生する場所によって2つに大別される。

その1つはサーミスタの2本のリード線の間に見られるもの,もう1つはサーミスタと保護管の間に生じた絶縁不良である。このいずれもがそれぞれ重大な事故につながるおそれがあるので,それぞれの場合について現れる現象とそのようにならないようにするために注意すべき点や対策について説明する。

不良現象    リード線間に生ずる絶縁不良

2本のリード線間にある値を持った抵抗が並列に接続されたことと等しい。
あるいは,初期にはイオンが移動したときに断続的に電流が流れるので,抵抗が低くなったり,不安定になったりする。それに伴ってBの値も変化したように観察されるし,温度調節器などでは温度の不安定あるいは動作温度の変化が観察される。

 原 因

吸湿,吸水によってサーミスタのリード線の引き出し部分が濡れたときに起こる可能性が大きい。サーミスタぱ直流電圧がかかった状態で使用される場合がほとんどである。そのために,組み立て加工のときに汗をかくなどした素手で仕事をして塩(えん)類がサーミスタのリード線の付け根付近に付着したとき,吸湿,吸水によって水が存在すると,マイグレーショソによってリード線間の短絡が生じ,さらに腐食が進行して断線となることがある。

『マイグレーション(electromigration):イオンが電界によって移動する現象。  半導体素子や電子回路では塩素などの不純物元素と湿気によって金属導線の表面から溶出したイオンが,電位の異なる他の導線に向かって移動し,外囲器や基板の表面に絶縁不良部分を形成する原因となることがある』

科学大辞典(丸善)より

このように塩(えん)と水の存在が絶対的要件となるから,作業中にサーミスタに塩類が付着しないよう最大の注意を払い,製品には吸湿,吸水によって水が入らないようにすることが肝要である。また,充填物については水が入り込まないように完全に充填するよう心掛けすると同時に,充填に使用する充填材の材質に注意し,無機塩類を含まないものを選ぶ。

樹脂を充填する場合,樹脂を選定してアミン系硬化剤を使用するものは避けるべきである。 2液性のエポキシ樹脂を使用する場合,混合の比率を正しく守り,よく攪拌するよう注意する。これを守らないとよくは固まらず,事故の原因となることがある。

不良現象 保護管とサーミスタの間の絶縁不良

特に水の存在と無関係な場合は,サーミスタのリード線と保護管との聞は短絡状態に近い。事故の原原因が片線にある場合にはサーミスタの抵抗変化としては現れないときもあるが,サーミスタの片側のリード線が保護管と短絡状態にあるので,接続される回路の構成によっては,商用電源に対して保護管が絶縁されていないという事態もあり危険を伴う。

また,たとえば制御する槽のヒータにも絶縁不良が同時にあったりすると,回路の破損にもつながる事故ともなり得る。 ME(Medical Engineering)機器に使用するサーミスタの場合にはこのような不良は命にかかわることなので絶対に許されない。

水が存在して起こるマイグレーションではその進行速度ぱ使用時間とサーミスタに流れる電流の積に比例する。回路の設計に当たってば,自己加熱による誤差を少なくするための目的以外に,万一の場合にマイグレーションによる事故の進行を妨げるという観点からもサーミスタに流れる電流をできるだけ小さく抑えるよう努力するべきである。

原 因

水の存在が関係する場合と水の存在と無関係な場合とに大別できる。

水の存在と無関係な場合;工事不良,設計不良によるものである。

材料選定の誤りによって,材料の耐熱温度が低すぎたために使用中にリード線の保護(絶縁チューブ)が破れて,リード線が露出し保護管と接触するとか,かしめに使用したスプライスバソドの鋭い角で彼覆を破り,スプライスバソドが保護管に接触するということのために生じた絶縁不良である。

水の存在が関係する場合;リード線間に生ずる絶縁不良の場合と類似する。
サーミスタの抵抗値の変動を伴っている。

断線  サーミスタ

断線は最も危険度の高い事故である、何の対策も回路側でとっていない場合,加熱状態を制御する温度調節器であれば,いくらピークで加熱してもサーミスタからの信号は抵抗が高い低温との判断のままであるから,いつまでも加熱を継続することになり,火災や沸騰の原因となる。このような危険を避けるために回路側では断線保護回路を付加するとか,異常昇温防止のために別のサーミスタなどを使った保護回路を併用する必要がある。逆にクーラーのような場合には断線すると温度が低いと判断するので,冷房の機能が働かないことになる。

 原 因

サーミスタ素子と二次加工のいずれにも原因となりうるものが存在する。共通に存在する原因としては水と塩(えん)の存在によるマイグレーションが進行し,短絡を起こして線が細くなっているところに,さらに腐食が進行しついには断線に至ることがある。

また,サーミスタに異常に高い電圧が印加され,異常電流が流れてリード線が焼き切れたり,サーミスタが破裂することもある。

サーミスタ素子に関係する断線事故としては,ペレット付け不良によるリード線の離脱,二次加工部分で起こる断線としてはかしめ不良,はんだ付け不良によるもの,かしめ部分のリード線とスプライスバソドの酸化による接触不良,場合によってはリード線の断線もある。特に振動が強いところに取り付けられたサーミスタセンサのケーブルでは,金属の疲労による断線が生じることがあるので,振動部分と固定部分の間には振動を吸収できる緩衝部分を設ける
必要がある。

短絡  サーミスタ

短絡(ショート)が起こると,温度が高いと判断される。したがって加熱を制御するのに使用する温度調節器の場合には,ピークがONにならず加熱動作が行われない。クーラーの場合には温度が高いというように回路側が判断するので,0N状態のままでコンプレッサが止まらない。

原 因

短絡が生じる原因は絶縁不良の原因と共通な部分が多い。高温はんだ使用時のペーストの洗浄不良,ステンレス線をはんだ付けした後のステインペーストの洗浄不良,ジメット線のよじれ,スプライスバンドの角による絶縁チューブの破れ,チューブの入れ忘れ,リード線のはんだ付けあるいはかしめ部分でのリード線のひげ,はんだ付け部分に生じたはんだの突起,サーミスタのペレットにリード線を付けるときに使用したペーストのたれによる上下電極間のショート,水と塩(えん)の存在で生じるマイグレーションによって生じた短絡とさまざまな原因が挙げられる。

やっかいなことに,マイグレーションは電圧がかかった状態でのみ起こるので,サーミスタ素子を保管しているだけでは起きないから,組み立て加工でサーミスタを使う段階では,そのまま組み立てに使用してよいかどうかを判断しにくい。

保護管からのサーミスタの浮き

原則的にはサーミスタは保護管の先端に,管の底に密着するように組み込まれるべきものである。そのように正しく組み込まれた場合でも,金属の保護管を使用している場合には,保護管を通っての熱電導の影響を受けずに,サーミスタが正しい温度を示すためには,保護管を測定したい物の中に,保護管の直径の20~25倍の深さに挿入しなければならないといわれている。

そのように熱の伝達がサーミスタが検出する温度に大きい影響を与えるから,保護管にサーミスタを組み込む場合にはサーミスタで正しい温度の検知ができるように,サーミスタが保護管の先端(保護管の底)に密着していなければならない。密着性を高めるために,熱の伝導がよい充填材を使う。

サーミスタが保護管に密着しないで浮いている場合,正しい温度を検知できないので,温度調節器の場合であれば制御温度に狂いを生ずる。すなわち室温で高い温度の油槽の温度を制御している場合を考えるとき,保護管の底からサーミスタが浮いていると,保護管を通して熱が逃げるので若干低目の温度を検知することになり,サーミスタの挿入長によっては,油の温度が設定より高くなることが起こりうる。そのため完全に正しく保護管の底に密着するように
サーミスタを組み込まなければならない。

また,サーミスタが正しく組み込まれていない場合,保護管からサーミスタヘの熱の伝達に遅れが生じるので,制御結果のリップルが大きくなり,よい制御ができなくなることもある。サーミスタが保護管の底から相当に浮いているときには,抵抗測定では抵抗値不良と判断されやすい。

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