官能検査 sensory test 【イラスト図解】
英語:sensory test 中国語:感官检验
官能検査とは
人の感覚を用いて品質特性を判定する検査のこと、官能評価、官能試験と同意味。
関連用語:官能評価
「官能評価分析に基づく評価.」(Z 8144)
官能試験( sensory inspection)は,工場における品質の良否の判定,製品規格の検査における合否の判定に相当するもので,人間の感覚を測定器のセンサーとして製品の品質を測定する行為であり,従来から使われている“官能検査”という用語に最も適切な英語である。
日本では,大蔵省醸造試験所において古くからある利き酒審査を官能検査と称していたことに由来する。
また,sensory evaluation は製品を改良したり,多くの試料から最良のものを選択するというように評価する対象領域が拡大している。単に出荷検査や規格の合否という品質検査の現場だけでなく,企画部門や商品開発部門などの,より広い評価分野でも用いられる用語であり,嗜好の問題もしばしば扱われる。
さらに, sensory analysisは評価業務だけではなく,システム全体を示す用語であり,研究的な場面でも用いられる。
organoleptic testは現代の英語において古めかしい語感をもつとされているが,人間の感覚を利用した試験の意味である。これらを総称してsenory test として用いる。
官能検査の利点
人間の五感を活用した官能検査にはさまざまな利点があります。
1つ目は低コストで実施できることです。特別な設備が不要であるため、設備費用や開発費用のイニシャルコストがかかりません。検査員を確保できれば実施できる点が官能検査の大きな利点といえます。
2つ目は、検査対象の製品やサンプルについて顧客目線の判断が下せる点です。人の感覚や主観などを判断材料となり、よりユーザーに寄り添った製品を作ることにつながります。
3つ目は検査の際は検査対象が3次元形状であっても全面検査ができる点です。機械を使った検査では導入する設備によって全面検査ができないことがあるため、官能検査が適している場合があります。
特に目視検査では製品のキズの検知が的確に行えます。検査対象に付着したホコリなどが欠陥や異常として誤検知される可能性が低く、また、検査機の導入などのコストがかからない点も利点として挙げられます。
以上のことを踏まえると、官能検査が適するケースは以下の3点が挙げられます。
検査機では数値化が難しい場合
検査機での測定は可能でも、コストや工数がかかりすぎる場合
検査機よりも人間の五感の方が高い検査精度を期待できる場合
ただし、目視検査などの官能検査には利点ばかりがあるわけではありません。官能検査は人間の五感を活用することから、検査員のスキルや体調などによって判断にばらつきがあったり、検査対象によってはダブルチェックやトリプルチェックが必要だったりします。また、熟練の検査員になるには経験や知識が求められ、育成に時間がかかる点も認識しておく必要があります。
官能検査の種類
官能検査は試験方法、調査する人、評価方法、解析方法別に下記のように分類される。
官能検査の試験方法
官能検査を行う際には、調査する製品の性質などを考慮したうえで、検査方法の種類を選択しなければなりません。代表的な試験方法は、二点識別法、三点識別法、一対比較試験法です。
それぞれの方法について解説します。
二点識別法
二点識別法は、客観的に差のある2種の試料を用意し、「甘さ」「硬さ」など、指定する特性について該当する試料を判断させる検査方法です。試料間の差異の確認、パネリストが試料間の差異を識別できるか判断するために用いられています。
事例:試料Aと試料Bの2種類の甘み成分の異なる砂糖水を用意します
(試料Bの方が甘い)。20人のパネルがそれぞれ1回ずつ両者を比較し、どちらが試料B(どちらが甘い)かを選択してもらいます。
三点識別法
三点識別法も2種の試料を比較する検査方法です。ただし、三点識別法の場合は、比較させる試料が3種となり、2種は同じ試料、1つは性質の異なる試料を用意し、どの試料が他の2種と異なる試料であるかを選択します。試料間の差異の確認、パネリストの識別能力を測るために使用されるのは二点識別法と同様です。
二点識別法よりも比較対象となる試料が増えることで、より集中して異なる試料を選択させることが可能となり、精度の高い調査を行うことができます。
事例:試料A,B,の2種類の甘み成分の異なる砂糖水を用意します、試料Aは二個、試料Bは一個を用意します、20人のパネルがそれぞれ1回ずつ両者を比較し、どちらが試料B(どちらが甘い)かを選択してもらいます。
1対2点試験法
パネリストにまず標準試料を与え、次に、標準試料と同じものと異なるものの1組を試科としてパネリストに示します。パネリストは、示された1組の試料対の中から、標準試料と同じ試科を選び出します
事例:新しく開発したスキンクリームBは従来品Aの香りにわずかな変更を加えたもの
です。この新製品は従来品と違いが感じられるかどうかを調べました。まずパネルに従来品Aを提示し、次に従来品Aと新製品Bを提示し、どちら新製品か選んでもらいます。
一対比較試験法
複数の試料を比較する際に、それらの試料を対にして取り上げ、一対一比較を繰り返すことにより、それぞれの試料の順位付けを行う検査方法です。
回答者は試料について、一対一で比較すればよいため、1回ごとの評価の負担がかからず、評価の矛盾が起きにくいという特徴があります。例えば、類似度の高い試料同士でも、その違いを詳細に評価、分析できるため、製品開発時のコンセプト案などの選定にも利用することが可能です。
事例:5つの銘柄のビールを、一対で飲んで分析を行い、一番美味しいビールを調査。
官能検査の注意点
検査見本を準備
官能検査では製品の合否の判断基準となる検査見本が必要です。合否の判定に迷ったときには製品と見本を見比べて判断することになります。また、前述のとおり、検査員による判断のばらつきを防ぐ目的としても検査見本が必須です。
また、合格限度見本と不合格限度見本の両方を揃えることで検査精度が高まります。検査品質を維持・向上するためにも検査見本を揃えることは大切なポイントです。
検査環境の整備
官能検査は検査員の感覚に頼って行うため、検査環境によって精度が左右されます。検査する製品によっても適切とされる環境が異なるため、必要な環境の整備には注意が必要です。
例えば、食品の官能検査ならば検査スペースで匂いがしたり気温が高かったりすると、正確な判断が下せません。食品の官能検査は無臭・恒温・恒湿・無騒音といった検査環境が必要です。
複数人で検査する際は、ほかの検査員の評価の影響を受けないように、衝立や間仕切りで区切られたスペースが望ましいです。検査員の体調が判断に支障をきたさないよう、体調管理も徹底して行うことが重要です。
検査作業の標準化
検査精度を維持するには、検査員のスキルやコンディションなど、検査精度が左右される要因をできるだけ取り除く必要があります。そこでポイントとなるのが検査の手順や方法など一連の検査作業の標準化です。
さらに検査の質を向上させるためには、製品が不合格となった理由を記録しておくことも重要です。蓄積されたデータが検査員の教育に活用できます。そして検査員の教育を継続的に実施することも検査品質の向上には必要です。
官能検査の詳細は下記の記事を参照、願います。
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引用先:クォリティーマネジメント用語辞典 日本規格協会
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