イノベーションの方法論Ⅱ
歴史は螺旋状に動く
歴史は循環する。
しかし、元の位置、昔の位置に戻ったかに見えても内容の次元はより高度になっている。
起業家精神も個人の起業家の段階からマネジネントの段階を経た後、組織を使った高次の起業家精神の段階へと至った。
これからの企業は起業家としての能力を必要とする。
だがその起業家精神は日常のマネジネントが行われている既存の組織しかも複雑な大組織にて発揮されなければならない。
経済的な機会
同一の生産性を上げるのにより多くの資本を必要になった時その産業は下り坂となる。
事例1:コンテナ船
作業員が少なくしかも早く済むため、在来貨物船に比べ定時運航や速達性に優れたコンテナ船が貨物船の主流となっていった。
事例2:スェーデンの送電技術
スェーデン 原子力発電でなく送電技術に集中
HVDC送電の近代的な形式なものは、アセア社で1930年代のスウェーデンにおいて大規模に開発された技術を使用している。
知識動向の分析
技術のダイナミクスを理解するにはむしろ専門外の分野からスタートする事が必要である。
知りすぎている分野からは見えないものである。
しかも大きな変化はそれぞれの専門分野でなく外部で生まれる。
事例:
心理学の人格、形態の概念→19世紀の物理学 「場の理論」より生まれた。
遺伝子工学→物理学、電子工学
ビジョンの先行
新技術の多くは新しい知識というよりも新しい認識である。
それは平凡なものの新しい組み合わせである。
先にビジョン、夢が有りき・・
製品、アイデアよりビジョンが経済、社会、文化に影響をもたらす。
事例:
ヘンリーフォードの大量生産、大衆市場、大衆価格による利益
<創造へのプロセス>
技術戦略の必要性
これらの分野の技術がもしそれが実現されるならば重大な影響をもたらし、単なる新製品でなく新産業を生み、あるいは単なる新しい道具、プロセスでなく新技術をもたらすであろうことを明らかにする。
急激な変化の時代にあっては企業もちろんのこと、国の生存と繁栄にとっても技術戦略は不可欠である、いかなる種類の活動に力を入れるべきかを徹底的に検討しておかなければならない。
<技術戦略>
買うものと売るもの
今後伸びる貿易は商品貿易ではなく技術貿易、すなわち特許、ライセンスの貿易である。
したがって、その為の戦略を学ばなければならない。
自力で開発すべきものは何か、売るべきものはなにか、買うべきものはなにか。
どの段階で買うことに踏み切るべきか。
技術戦略でいち早く成功したのは日本であった。
しかし、その日本でさえ、今日にいたるも技術の導入しか知らず、売り方を知らない。
みずからの開発した新知識、新技術、経済的成果から最大の利益を上げるためにはいかに集中すべきかを知らない。
<事例:スウェーデンの技術戦略>
スウェーデンの技術戦略は三大銀行の調査チームの功績だった。
小国として持てる資源を科学全般の進歩でなく限られた分野のギャップを埋めることに集中すべきということを彼らは知っており、行動した。
市場のダイナミクス(力学)
起業家たる者は技術にダイナミクスのみならず市場のダイナミクスを知らなければならない。
市場がイノベーションをもたらす。
市場のダイナミクスを理解することは技術の成果を無駄にしないための不可欠である。
顧客の関心は常にこの製品あるいはこのサービスが自分に何をしてくれるかである。
電球の事業家
「電球を発明した」人物として有名。実際には電球の原理はエジソン以前にすでに知られており、エジソンの独創ではない。電球などの家電を含めて発電から送電までを含む電力の事業化に成功したことが最も大きな功績である。
エジソン
電球の発明家
スワンが電球に関する特許をイギリスで認可されたのは1878年のことであった。これはトーマス・エジソンのそれの約一年前である。しかしながらスワンのフィラメントは電気抵抗が小さいものだったため、電力の供給には太い銅線を必要とするという短所があった。
ジョセフ・スワン
イノベーションとしてのマーケティング
マーケィングのイノベーションが必要である。
新しいものには既存の市場はない。新製品は期待を産み基準を設定し満足を可能にする。
したがってマーケティグにはイノベーションが必要である。
又、新技術には新市場を必要とする。
真の経済発展とはニーズや欲求を満たすことではなく、選択肢を増やすことである。
事例:アメリカのカーペット産業
①住宅購入者のニーズ 安くて居住性を向上させる床張りカーペーット
②購入方法 住宅ローン組み込み
③購入する若い夫婦は満足し売る住宅業者はコストが安く売りやすくなるので喜ぶ。
<製品のイノベーションから顧客の創造まで>
既存の事業から切り離す
起業家たるものはイノベーションのための組織を作りマネジメントしなければならない。
新しいものを予期しビジョンを技術、製品、プロセスに転換し且つ新しいものを受け入れる人間集団をつくりマネジネントしなければならない。
イノベーションのための組織は既存の事業の為の組織と切り離せなければならない。既存の事業のマネジネントを行うための組織はすでにあるものを修正し、拡大し改善することはできてもイノベーションを行うことはできない。
さらに重要なことは人と人との関係について新しい構造をつくりあげなければならない。指揮系統命令型でなくチーム型組織が必要である。
<イノベーションのための組織>
トップの役割
イノベーションのためのTOPの役割はアイデアを具体的な仕事の提案に転換させることである。
出てきたアイデアを正面から取り上げるに値するために何が必要かを考えることである。
取り上げるにはいかないといってはいられない。
今日のサラリーマン経営者たちはアイデアを判断しようとする。
判断だけを仕事をするTOPはアイデアを拒否する。非現実であるとする。
生煮えのアイデアを体系的な行動に転換することをみずからの仕事と考えるトップだけがイノベーションを可能にする。
アイデアを育てる=苗を育てる
P.F.ドラッカー (著), 上田 惇生 (翻訳)
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