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食品工場の品質管理の基本

食品工場の品質管理 食品工場の品質管理
食品工場の品質管理

ペスト管理計画   食品工場

地域のペストの状況を毎月確認することが大切

ペスト管理計画表 食品工場

ペスト管理計画表 食品工場

 

 

 

 

 

 

 

 

工場敷地内では、ペスト(有害生物全般)を繁殖させないことが大切です。地域にゴミの集積場、養豚場、牛の牧場、ため池等、虫の発生源がないかを確認してください。工場の周りにこのような施設がある場合は、工場の対策レベルをかなり上げないとペストの侵入を防ぐことは困難です(養豚場などの協力が必要な場合もある)
 次は、工場の敷地の確認になります。下図のように確認します。雨水の排水溝に貯まり水(流れていない水)はないか。貯まり水は虫の発生源になります。雑草が生えていないか。駐車場を含めて水たまりがないか。落ちている空き缶に水が貯まっていても蚊は発生してしまいます。

 

同様に、マテハン機材 :物流に使う機材。パレット等)が外に放置されていれば、蚊の発生源になります。そして工場の建物の周囲を確認します。雑草が生えていないか。工場の建物から最低50cmは草が生えない環境が必要です。

 

コンクリート、アスファルトで舗装することがベストですが、地域の条例により舗装できない場合があります。その場合は、石を15cm以上の厚さで敷き詰めると雑草の繁殖を防げます。

ペストの気持ちで侵入ができないかを確認する

 さらに、工場の建物を細かくチェックします。ネズミは5mm以上の隙間があれば建物に侵人します。ドアの隙間、ドックシェルターの隙間、窓、機械室のパイプなどに破損がないか確認します。
 次に夜間、工場内のすべての明かりをつけます。そして、外から光が漏れていないかを確認します。ドアのパッキン等が磨耗してくると、光が隙間から漏れます。その光を見て虫は飛んできます。また、人荷場のシヤッターの下のパッキンが磨耗しても虫は侵入します。このような場合は虫が好む波長を出さない蛍光管に交換するだけでペストの侵入は防げます。
 ペストコントロールが完全にできている新築工場でも、機械室から出人りする従業員がいて、夜はドアを開け放していたために虫が混入したという事例もあります。

食品工場 ペスト管理 ポイント

食品工場 ペスト管理 ポイント

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

侵入してくる虫の管理 食品工場

外部から工場内に持ち込まないようにする

這って侵入してくる虫とは、ゴキブリやアリなどです。
 虫が行列をつくって玄関から従業員と一緒に工場に入ってくることはたいへん稀です。では、どのようにしてアリやゴキブリが工場に入ってくるのでしょうか。
 最も多いのは、資材などと一緒にというパターンです。
包装資材は段ボールに入っていて、資材は工場に入る前は倉庫に保管されています。その倉庫のゴキブリが資材の段ボールに卵を産んだり巣をつくるなどして、巣ごと工場に納入されてきます。

アリなども何気なく倉庫で地面に直接置いたときに段ボールの中に入ってしまったものがそのまま入ってきます。工場内に入るときには靴を必ず履き替えます(資材搬人業者が、どこで靴を履き替えているか、確認も必要)。
 ゴキブリなどは絨毯があればどこにでもいると考えていいでしょう。通勤鞄などをそのまま喫茶店などの床に置き、ゴキブリの卵を付けたまま工場の作業場まで鞄を持ち込んでしまうと、ゴキブリを作業場に連れ込むことになります。工場内で使用するファイルを家に持ち帰り、鞄ごと作業場に持ち込むことは厳禁するべきです。

虫の侵入方法 食品工場

虫の侵入方法 食品工場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

発生箇所を突きとめて徹底的に清掃

 ペスト駆除業者に依頼すると、従来の業者であれば発生しそうな箇所にベイト剤(毒餌剤)を注入します。確かに、ベイト剤を注入すればゴキブリの発生は少なくなりますが、根本的に解決したことにはなりません。

 

包装室でゴキブリを見かけたときは、粘着シート(ネズミ駆除で使用するものと同じ)を敷き詰めて発生箇所を突き止めます。被害が続くようなら、毎月図面に落として比較できるようにします。ゴキブリが多く捕まるところがあれば、その付近を注意深く点検します(包装機のモーター部分、エアーコンプレッサーのモーター部分など暖かいところが巣になりやすい)


水分と餌がなければゴキブリなどは生息できないため、徹底した清掃が必要になるのです。巣になっている箇所を突き止めたら、その部分は点検表に追加して定期的(最低毎月)に清掃することが大切です。

生息数の調査

生息数の調査

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食品工場の害獣類の管理

カラス、鳩、犬、猫が対象

 害獣類が食品工場内に入り込むと、獣毛の混入、菌、ノミなどによる汚染が考えられます。家庭では可愛い猫でも、工場の資材庫に侵入して子供を産むと害獣になって駆除の対象となります。また、鳩などが資材倉庫に入り込むことも考えられます。

鳩、カラス、ツバメなどのは、巣を工場の敷地内につくらせないことが肝心です。
ツバメなどは玄関に巣をつくるため、見つけたらすぐに撤去することが大切です。軒下に鳩などが止まるような場所があると、糞を資材等に落とすことになるため、軒下に鳥が止まれないようにする対処も必要です。

生きたネズミ等を見かけたら緊急事態

 食品工場の工場内で、生きたネズミ、イタチ、犬、猫などを見かけたら緊急事態です。厚生労働省では最低2ヶ月に1回の調査を定めていますが、通常は専門業者による害獣類の生息環境調査を1ヶ月に1回以上行います。一番の目的は害獣類の侵人口の調査です。ネズミ等は5mm以上の隙間があると侵入できるため、扉の隙間、天井の穴、排水溝などに侵入できる隙間がないか点検します。

ネズミ侵入防止1

ネズミ侵入防止1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この生息環境結果については、レベルを3段階に分けます。レベルⅠは生きた害獣を確認できず、糞、喫食の跡も確認できない状態。

喫食状況とは製品、原材料を食べた跡の他、段ボール資材などが噛まれて細かいクズが落ちている場合もあります。このクズを見かけたら報告するよう、普段から教育しておくことが重要です。
 工場の品質管理では日常点検の中で、生息調査と同じ点検を行い、糞、喫食の跡が確認できれば定期点検を待つことなく、レベルⅡ(糞、喫食の跡を確認した場合)で業者に対応をしてもらいます。

 

食品工場では毒餌を使用することは原則できません。糞、喫食の跡が見られた場所に、粘着シートを敷き詰めて捕獲を行います。この粘着シートを資材棚等の一番下に敷き詰めておくこと
で、生息調査と捕獲を兼ねることができます。レベルⅢ(実際に見かけた場合)では、工場の製造を止めてでも専門業者による対応が必要になります(猫、イタチの捕獲には役場の許可が必要な場合も)

ネズミ侵入防止2

ネズミ侵入防止2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛んで入ってくる虫の管理 食品工場

毎月、モニタリング(調査)を行う

 飛翔ペスト類の代表はハエ、蚊などです。工場内はたとえ事務所、食堂でもペストが飛んでいてはいけません。
 工場内には侵入したペストを捕まえるために捕虫機を設置します。電撃殺虫機を設置している工場もありますが、電撃殺虫機は虫の死骸がバラバラに飛び散ってしまうため、工場内は粘着テープで捕まえるタイプが適しています。

工場内に設置した捕虫機の捕虫テープを、毎月細かくモニタリングします。調査内容は虫の数、種類、工場内発生か工場の外から侵入したか、そして前月より多かったか、前年よりどうだったかを比較します。内部発生とは、工場内に飛翔してきたペストが工場内で卵を産んで繁殖していることを言います。

 

毎月のモニタリング結果で対策を打つ

外部侵入の代表的な例は、光に寄ってくるペストになります。蚊は光の紫外線に反応し、特に350nmの光を好みます。蛍光灯や捕虫機の光が外に漏れると、工場に誘因してしまいます。

次にペストの誘因を防止するには臭いの管理があります。ゴミ置き場などから臭いが漏れないように、確実にゴミを袋に詰め、ドアを閉めておく必要があります。生ゴミ置き場は臭気防止のためにも冷蔵庫化が必要です。
 ペストの侵入を防ぐためには、窓をはめ殺しにするか、32メッシュ以上の防虫網が必要になります。工場の入荷場、出荷場、ゴミ置き場など、ペストが進入する可能性のある場所は、ペストを誘因しない設備を取りつける必要があります。

食品工場 捕集機事例

食品工場 捕集機事例

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さらに工場の空気の流れの調査が必要です。入荷場の空気の流れが外気を工場の中に吸い込むような場合には、工場の中にペストを吸い込んでしまうため、吸排気のバランスをとる必要があります。
 内部発生のペスト対策には徹底した清掃しかありません。壁の隙間に巣をつくってしまう場合もありますが、そのような場合は隙間をふさぐ対応をします。コンクリートブロックで壁が仕切られている場合は、ブロック内に巣をつくってしまうことがあり、コンクリートで完全にふさぐなどの対応が必要になります。

虫侵入防止管理 食品工場.png

虫侵入防止管理 食品工場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

街路樹の虫の管理 食品工場

街路樹の種類を検討

工場を建てるときには市町村等の規定で、ある程度緑化が必要になります。しかし、ペストコントロールを考えると、敷地をすべてアスファルトで塗り固めるのが理想です。

 

また、地域によっては緑化ではなく、雨が浸透する一定面積が必要な場合があります。その場合は、石や採石などを15cm以上の深さで敷き詰め、地面に太陽の光線が届かないようにすれば草が生えなくなるため検討する価値はあります。従業員の駐車場もアスファルトで舗装したほうが、異物混入防止の視点ではいいのですが、雨の問題を考えると雨水が染み込む煉瓦を敷き詰める等の工夫が必要です。
 地域で緑化が必要な条例がある場合は樹木を植える必要が出てきます。従業員の福利厚生のこともあり、工場敷地内に桜を植え、春に花見ができるよう配慮している工場もあります。しかし、工場内に植える樹本は害虫が付かない種類で、葉が落ちず、実がならないものが適切です(実がなると鳥が寄ってきて糞害問題が出てくる)

 

毛虫や鳥などの被害がある場合は、樹木の剪定をやり直し、植え替えたほうがベターです。

食品工場の街路樹の防虫管理

食品工場の街路樹の防虫管理

 

 

 

 

 

 

 

 

 

虫防除 年間計画

 春になると花が咲き、咲いた花は散って、秋になると葉は落ちてしまいます。これは毎年繰り返されることで、街路樹に毛虫が付く場合も同じ時期に付くことになるため、年間計画を立てて事前に対応することが大切です。
 たとえば、桜やミズキなどに付くアメリカシロヒトリなどは、葉をすべて食べてしまうため特に注意が必要です(毛虫が付く前に殺虫剤を撒く対策が有効)。

 

毛虫の付かない樹木でも剪定が必要になります。剪定した本は
すぐに廃棄しないと、蚊などの巣になってしまいます。
芝生、落ち葉などは、毎月定期的に管理を行います。落ち葉が排水升などに貯まり水が流れなくなってしまうと蚊の発生源になるため、梅雨の前に排水升、雨水升の清掃が必要になります。毎月、工場の外周で何を行うかを事前に決めて、計画通りに実行されているかどうかの点検を行う必要があります。

防虫年間計画表

防虫年間計画表

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食品工場 日付表示ミス

日付表示ミスは仕組みで防げる

 工場のリコール(製品回収)のほとんどは、賞味期限等の日付表示ミスによるもので、大半は包装機の印字を入れ間違えたような単純な日付ミスです。インクジェットプリンタを使用していれば、設定ミス以外にミスは考えられませんが、経費の関係から日付の活字を集めて手作業でプリントする方式の工場もまだ多いと思います。
そうすると、暦上あり得ない「2月30日」や、数字が上下逆になるなど、いろいろなミスが発生します。
 正しい組み合わせは一通りしかありませんから、数字のミスが起きる可能性は相当高いと言えます。ただし、「2016.01.28」というように、日付全体をひとつの固まりとして作成する仕組みにすれば、毎日それを規則的に更新することでミスは防げます。

食品工場 日付表示ミス改善事例1

食品工場 日付表示ミス改善事例1

 

 

 

 

 

 

 

 

活字をセットしたときにフィルムなどに印字を行い、間違いがないか現場の作業者が点検します。その点検作業を行っているかどうかを、帳票上で現場作業者が自分自身で点検します。
 日付表示ミスは、日付点検を行わなかったときにかぎって起きてしまいます。ミスを防ぐには、日付点検を包装工程だけで行うのではなく、包装工程が終わり、工場から出荷するときにも出荷判定の中で日付点検を実施するようにします。
 通常は、工場から出荷するときに規格、数量の点検は行いますが、日付の点検はしていないと思います。その理由としては、外装から中の日付が見えないことによります。外装段ボールの一部を切り取って中の日付が見えるようにすることで、日付の確認ができるようになります。このときにデジカメで写真を撮っておけば、問題が起きたときの証拠になります。

食品工場 日付表示ミス改善事例2

食品工場 日付表示ミス改善事例2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミスの責任に対する発想の転換が必要

 日付表示ミスが起きた場合は、日付をセットした作業者ではなく出荷判定チームの責任にします。この出荷判定の責任にするという「発想の転換」が、日付表示ミスを防ぎます。出荷判定チームが判定をきちんと行っているか、その確認は監査チームが行います。

食品工場 日付表示ミス改善事例3

食品工場 日付表示ミス改善事例3

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アレルギー表示ミス

アレルゲンの表示ミスは影響大

 日本では、食品衛生法の改正(2001年4月)により、容器包装された加工食品や添加物に「卵、乳、小麦、そば、落花生」の5品目を原材料として使用した場合のアレルギー表示が義務づけられました。これらについては、製造工程で使用する添加物などの加工助剤、通常はキャリアオーバーで原材料表示の要らない食品についても表示が義務づけられています。

 

*キャリアオーバー:食品業界において、原料中には含まれるが使用した食品には微量で効果が出ない為、法律によって表示を免除される添加物を指すのに用いられる。

 

他の20種は、化学的知見が少ないとして「表示奨励」に止めています。また、アレルギー患者が安心して食べられるように特定アレルギー食品を使っていません」と使用の否定表示を奨励(表示奨励)しています。
 特定原材料を使用している製品と同一製造ラインを使用することで、特定原材料等が混入する可能性が考えられる場合、「本品製造工場では○○(特定原材料等の名称)を含む製品を生産しています」、「○○(特定原材料等の名称)を使用した設備で製造しています」等と表記することにより、注意喚起を図る必要があります。

アレルギー表示1

アレルギー表示

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故、食品工場で表示ミスが起きるのか 

アレルギー表示ミスの特性要因図を図示しました。ミス要因としては、①原材料、②配合工程、③包装工程、④包装材料、⑤検査工程、の5つになります。

 

アレルギー表示ミスを犯すとお客様の命に関わるということを、毎日のように従業員に対して教育する必要があります。特定原材料の交差汚染が起きないように充分洗浄などを行う必要があることを、繰り返し教育します。
また、ミスを発生しないシステムを監視する、監視部署が必要であり、工場の商品のアレルギー表示に問題がないかを常に監視する必要があります。

特に原料のロット変更、工程変更、包装材料のロット変更があった場合は、監視チームが現場作業と表示が合っているかを監視します。

アレルギー表示ミス 特性要因図

アレルギー表示ミス 特性要因図

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*食品工場の品質管理については下記の文献に更に詳細の内容が記載されています。

 

参考文献:

ビジュアル図解 食品工場の品質管理  河岸 宏和 (著)

生産性向上と顧客満足を実現する 食品工場の品質管理

  弘中 泰雅 (著)

実践!!食品工場の品質管理   矢野 俊博 (編集)

 

 

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